待ち合わせている友人を待つ間。2、3駅だけ電車に乗っている間。そんなすきま時間ができた時、スマートフォンを見る方が多いのではないでしょうか。
自分が登録しているSNSを一通りチェックしたり、キュレーションサイトで気になるニュースを追いかけたり、ゲームをしたり…。街中の人たちを見ても、45度くらい下に首を傾けて、手元の液晶画面をのぞいている人がたくさんいます。何より、自分自身がそうです。
ここで、博報堂生活総合研究所の「生活定点」データを参照してみます。
「どのような情報関連機器・サービスを持っていますか?」という問いに対して「スマートフォン」と答えた人は、2010年の調査開始以来すべての年代(20代~60代)で急増しており、2016年調査ではパソコンの所持率に肉迫しています。もはや情報をいつでもどこでも検索できるということは、世の中のスタンダードになりつつあるといえるでしょう。
このことは、私たちの気持ちの上でのスマートフォンの重要度も高めることとなりました。「携帯電話やスマホは私の生活になくてはならないものだと思う」と答えた人は、「スマートフォンを持っている」と答えた人ほどではありませんが、右肩上がりの上昇を続けています。
また、「買う前にインターネット上の口コミを調べる方だ」という人も、20~40代の若い世代では40%前後を占めています。
スマートフォンのもたらした情報の即時性は、「何をするにも、まずはネットで調べてから」という価値判断のスタイルを生み出し、定着させたのではないでしょうか。
「予定を立てない旅をしてみたい」という人は、調査開始の1998年時点では51.6%でしたが、最新の2016年で36.9%となっており、減少傾向が続いています。
情報収集の敷居が低くなった今、リスクの低い選択をすることは以前よりも容易になりました。あえて予定を立てない、口コミなどで情報収集をしないというのは、むしろ勇気のいることなのかもしれません。
また、ネットの情報は取捨選択の権利が全面的に自分にあるということも、偶然の出会いが少なくなる要因のひとつでしょう。
検索エンジンでの検索はもちろんのこと、SNSについても、目にする投稿は自分がフォローしている人の投稿です。興味のないジャンルや、自分と意見が対立する人のアカウントはそもそもフォローしないので、目にする機会は少ないのではないでしょうか。
スマートフォンを通して見る世界はそうして、自覚のないままに、各自の好みに合わせてフィルタリングされているように感じます。
自分好みにフィルタリングされた世界はとても快適ですが、時折窮屈に感じることがあります。自分自身にとめどなく創造性があれば良いのですが、「何かマンネリ化してきたな」「世の中にはもっと新しいものが生まれているんじゃないだろうか」そんな風に感じることが増えてきたのです。
私はそんな時、あえて偶然をつくりだすため、ありふれた方法かもしれませんが次のようなことをしています。
①自分にとって未知の分野に詳しい人と話せる場に顔を出す
異なる専門性を持つ人の講演を聴いたり、公務員や保育士、ミュージシャンなど、全く違う仕事をしている友達と定期的に連絡をとるようにしています。
②人に勧められたものはとりあえず試してみる
この方法で出会ったお気に入りの本はたくさんあり、ネタとして活かされています。
③SNSで、本来の関心とは異なるジャンルのアカウントをフォローする
「そんな考え方もあるんだなあ」と驚くことが多く、意外に学びがあります。
④好きなブランドではなく、あまり知らないブランドや福袋を買ってみる
新たな流行・トレンドの変化に気がつくことも。
⑤できるだけ違う道を通り、違うお店で買い物や食事をする
場所によって集まる人の属性はかなり違うので、単純にとても面白いです。
インターネット上の無数の選択肢にいつでもアクセスできるのに、こうして意識していないと自分のテリトリーにないものと出会う機会がなかなかないというのは、なんとも不思議です。
ちなみに、人と人の偶然の出会いを演出するサービスは、いくつか出てきています。特にフランスでは、今たまたますれ違った人とチャットができるようなアプリも大ヒットした模様です。そもそも人と人の縁は偶然の要素が大きいので、受け入れられやすいのでしょう。
対してモノとの偶然の出会いを提供してくれるサービスは、まだ少ないように思いますが、こちらも増えていったら面白いなと思います。偶然に出会ったものを「買う」のはハードルが高くても、「シェアする」「借りる」という方法もあります(現に、ファッション界隈では、毎月定額で服を借りられるサービスがすでにいくつか始まっています)。
このようにして、自分とは違うフィルターを取り入れることが気軽にできるようになっていくと、創造性が広がって楽しくなるのではないでしょうか。
<終>
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