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【チイキノベーション!】vol.1-広告会社だからできる。未来のための地域づくり(地域創生ビジネス推進室 山口綱士)

2017.03.17
#地域創生
博報堂は、全国の各地域で、地域が抱えるさまざまな課題解決のサポートをおこなっています。その中心となっているのが、2015年に誕生した「地域創生ビジネス推進室」です。
本連載では、地域創生ビジネス推進室を中心に地域創生に携わるメンバーがリレー形式で登場、それぞれの活動内容や地域の魅力、大切にしている想いなどについて語っていきます。

連載のトップバッターは、地域創生ビジネス推進室に所属する、テーマビジネス開発局/ブランド・イノベーションデザイン局の山口綱士。連載の初回ということで、日本の地域から今どんな動きが生まれつつあるのか、そして広告会社である博報堂が地域創生に関わる意義などについて聞きました。

地域から生まれつつある、「変わりたい」という切実な想い

私が所属する地域創生ビジネス推進室では、広告会社が持つマーケティングなどの専門性と、官公庁や業界団体などとのネットワークを活用して、地域が抱える複雑な課題を広告会社ならではの企画力と実現力で解決するプロジェクトを進めています。地域ブランドづくり、地域の人材育成、産業育成・観光振興や地域インフラを活用した事業開発まで、幅広い領域で地域創生のお手伝いをしています。

地域創生ビジネス推進室サイト「チイキノベーション!」

地域に行くと、さまざまな場面で、これまで当たり前だったことが成り立たなくなってきていることを実感します。人口が減り、経済圏が縮小していく中で、地域はいま切実に変化を求められています。各地域の自治体や企業は、自分たちが抱える課題に向き合おうとしているものの、手が足りない、経験が足りない、そしてソリューションが足りない。かつて自治体や地域企業からの相談はプロモーションなど広告領域が主でしたが、ここ数年は「今後何に取り組むべきか?」といった“本質的”な相談が増えてきています。いよいよ地域の中に「本当に変わらなくてはいけない」と強く認識する方が出てきて、未来に向けて行動をおこそうとしています。そんな想いに対して、広告会社だからこそできることは何か。それを追求しながら、博報堂グループならではの解決策を提案できれば、と考えています。

地域の特性を活かしながら、新たな価値を生み出していく

去る2月27日、新潟市内で、新潟博報堂と新潟三越伊勢丹による地域ブランドづくり支援の共同プロジェクト「NIIGATAみらいプロジェクト」に関する業務提携を発表しました。

「NIIGATAみらいプロジェクト」業務提携リリース

新潟三越伊勢丹は、2016年3月から、新潟の地域価値向上に取り組む「NIIGATA越品」プロジェクト を展開、新潟博報堂は事業設計やコミュニケーション領域でサポートしてきました。地域のなかで百貨店が担える役割、広告会社が担える役割は何か。「NIIGATAみらいプロジェクト」は、異なる業種である百貨店と広告会社の強みを掛け合わせ、自治体や地域企業のブランド戦略から商品開発、商品販売、コミュニケーションまでを包括的に支援する、これまでにない新たな活動です。この取組は、地域企業の「共創」による地域の未来づくりであり、事業活動を通じて地域社会の発展に貢献するCSV活動(Creating Shared Value:共益の創造)と言えます。今後、このプロジェクトが、地域内のステイクホルダーと連携し、新潟の地域価値づくりを推進する中心的役割を担うことを期待しています。

「NIIGATAみらいプロジェクト」商品開発第一弾 村上木彫堆朱「SHUKI朱器」の販売

ほかにも、私個人としては、自治体の観光誘客や移住定住促進の計画づくり、地域産品のリブランディング、地域企業の新規事業開発などに関わっています。特に、地域のこれからを描く計画づくりは、地域の特性を活かしながら新たに生み出す価値の方向性を定め、今後の地域の生活、産業全般に波及していくものです。地域の魅力や課題など全体像を把握しながら、いかに未来に向けた価値づくりができるか。全国のさまざまな地域で、地域のいまと未来を見据えて、地域の計画づくり・仕組みづくりに取り組んでいます。

広告会社に求められるプロデューサーとしての役割

博報堂グループの地域会社を含め、地域の広告会社も変わろうとしています。市場変化が大きい地域だからこそ、従来の広告ビジネスを越えて役割を広げていかなくてはならない。今後、広告会社は、企業や自治体の広告コミュニケーションを支援するだけではなく、「変わりたい/変わるべき」と考える企業や自治体とともに課題に向き合い、新しい仕組みをつくるビジネスプロデューサー的役割を担うべきと考えています。地域は“課題先進地”です。東京よりも先行して、各地域で、広告会社の変化の兆しが生まれています。

私自身はコンサルタントという立場で仕事をしています。以前は博報堂グループのコンサルティング会社にて、企業の海外進出支援やマーケティング計画策定、新規事業開発などの業務に携わっていました。地域創生ビジネスに関わるようになったのは、ある地域の自治体から首都圏での広報の仕組みづくりの相談が来たこと。それは広報企画を考えたいという話ではなく「自治体広報の新たな仕組みをつくりたい」という大きな相談でした。そこで1年がかりで事業設計・組織設計を進め、その自治体にマーケティング機能を持った新たな組織が生まれました。

地域の計画づくりで重要なのは、計画だけで終わらず、その後の継続的な活動、そして成果に結びつくものをつくりあげること。複雑な課題を抱える地域だからこそ、ちゃんと課題解決に結びつくものでなければダメなんです。将来、地域の課題は日本全体の課題になります。その時、地域で得られた課題解決の成果が、大都市圏を含む日本全国で応用できるようになる。地域での取組は、課題解決のプロトタイプづくりでもあると考えています。

20年後の地域のために、今動き出す

地域創生ビジネスは、当然ながら、地域のことをしっかり理解しないとできない仕事です。広告会社が突然訪れて、的外れな企画を出しても、決して実を結びません。その地域にどんな価値があり、その価値が今どのように消えつつあり、何を残すべきで何を新しくつくりだすべきか、しっかりと見定めることが重要です。企業や自治体の「自分たちはこうありたい」という想いをしっかりと聴き、その想いをしっかりサポートする。たとえば、伝統工芸でも、伝統を変えないことに重きを置く意見と、過去に縛られず新たなチャレンジすべきという両方の意見があるでしょう。地域の声を聴いて、その思いを深く広く理解することが求められます。

どの地域も同じですが、数年先までは想像できても、10年後、20年後のことまでを考えることはなかなか難しい。でも長期的なビジョンを持ち「将来のために今変わらなければ」という思いで動き始めている人がいるのも事実です。決して一人で実現できることではないので、そんな強い意志を持った人を見つけ、多くの関係者とつなげていくことも大切です。
広告会社である博報堂グループの強みは、計画づくりの後、共に動き、成果が出るところまでしっかりと寄り添えることです。自分が関わった案件で、日本の各地域に新しい価値が生まれている姿を見ることができると本当に嬉しいですね。

山口綱士
地域創生ビジネス推進室/テーマビジネス開発局/ブランド・イノベーションデザイン局
ビジネスコンサルタント

2000年、博報堂入社。2011年より博報堂グループのコンサルティングファームである(株)博報堂コンサルティングにて事業計画策定、マーケティング計画策定、新規事業開発、組織設計などを担当。現在、自治体や地域企業向けに、地域創生領域でのコンサルティングを担当。

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