第六回は、1963年に創業、業界屈指の老舗総合PR会社として業界を牽引するオズマピーアールをご紹介します。
まずは、営業戦略局の榑林佐和子局長に話を伺いました。
当社は1963年に創業し、以来50年以上にわたりPR事業に携わってきました。ただ一口にPRと言っても、かつてのようなメディアに対するパブリシティ活動だけでなく、コミュニケーション全般の企画立案から広告やイベント、SPなど複数のソリューションを組み合わせての実施までと、時代の移り変わりとともに業務領域は拡大してきています。
現在在籍しているのはグループ全体で177人(2017年4月現在)。当社は“総合PR会社”となりますが、数ある案件・領域の中でも長年の経験に基づき知見やネットワークが蓄積された領域があります。当社ではそれらの領域を『特化領域』と呼び、現在は「医療・ヘルスケア」、「地域ブランディング」、「商業施設」などの領域において、その業界の得意先やメディアとやりとりできる専門知識やリレーションを有するスペシャリストを配しています。また、「リスク・クライシス」や「メディアトレーニング」など特に高い専門性が求められる分野に関しては『特化機能』として専門チームを組織しています。
当社ではひとつのチームでアカウント業務からプランニング、ソリューション実施までを一貫して行っているので、スタッフ全員が、クライアントにもメディアの方にも直接相対しながらプロジェクトを進めていく必要があります。分業制に比べて効率は劣るかもしれませんが、プロジェクトに対するスタッフの責任感やゴールの共有意識は高い。このことが最終的に提供するサービスの質につながっていると思います。
社内で行われている特徴的な取り組みに「オズマボード」というアワードがあります。8年前から続く全社挙げての祭典的なイベントなのですが、その年のプロジェクトの中からもっとも優れたもの、あるいは新規性があるものを社内で選抜するスペシャル部門と、出されたお題に対してアイデアを発表するマーライオン部門で構成されています。昨年度のマーライオン部門は、社員全員の参加を前提とし、事前にくじ引きで上司部下関係なくチームが組まれました。ちなみに「マーライオン」は、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(以後、カンヌライオンズ)にちなんで名付けられています(笑)。社内の優秀な事例を知るよい機会であることはもちろん、何より、あまり接点のない社員同士がチームを組むことで、社員同士の縦横のつながりが強化されるといった効果があります。さらにスペシャル部門に関しては、優勝した事例は海外のクリエイティブアワードへも応募し、スタッフが派遣されることも。
実際、2015年に関しては、私自身も製薬会社であるファイザーさんの業務「オノマトペラボ」がオズマボードで優勝。その後カンヌライオンズにおけるライオンズヘルスに応募させていただき、入賞に当たるショートリストに選出されました。同じ案件で、同年のスパイクス・アジアにおいてはシルバー(銀賞)を受賞させていただいています。
オズマボードはあくまでも社内イベントではありますが、社員にとっては、参加へのモチベーションが自然と高まるような、自発的にチャレンジでき、かつそれを楽しめるような重要なイベントになっているのではないかと思います。
前述のカンヌライオンズで入賞した「オノマトペラボ」では、ある疾患の啓発がテーマではあったものの、「医療従事者と、自分の痛みをうまく伝えられない患者の方々のコミュニケーションの円滑化が真の課題ではないか」という気づきがブレイクスルーのきっかけとなりました。クライアント企業が伝えたいことを、社会に広く発信していくというのが業務ではありますが、それと同時に、PRが持つ“伝える力”-課題を発見し、問いかけ、多様な価値観の中で合意に導いていく力-によって、社会に少なからず変化をもたらし、さまざまな課題解決の一端となることももうひとつのゴールです。PR業務は専業会社でなくてもできますが、専門の会社だからこそ、PRの力を信じ、その可能性をもっと広げていく役目があるとも考えています。
近年は、さまざまなデータの活用もPR戦略に盛り込まれるようになりました。また、データをマーケティングやブランディング活動にどう活かしていくべきかというような相談も増えてきています。こうしたニーズに応えるべく、博報堂グループも含めた内外のデジタル専門家と協働しながら進化していく必要があります。一方で従来のようなマスメディアを介した情報提供にとどまらず、あるテーマや課題を共有する人が集まる「コミュニティ」にアプローチし、情報を提供するだけでなく実際の行動変容を促すような活動にも非常に可能性を感じています。コミュニティリレーションには、対面しての信頼構築や、心を打つ「言葉」を精査していくようなアナログな部分もあり、デジタル化がいかに進んでも、こうした部分はPRパーソンとして重要なスキルであることに変わりはありません。PRの持つ力、そして当社の高い専門性をもって、これからもクライアントにとっての最適なソリューションをご提供していければと考えています。
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第一営業局 4部 部長 伴野麻衣子
第三営業局 2部 部長 兼「雛形」事業部 地域ブランディングチーム ディレクター 濱地徹
伴野
私が携わっているのは、ヘルスケアの領域で、病院で処方される薬やドラッグストアなどで手に入る医薬品、そして医療機器などを中心に、幅広く担当しています。アメリカでPR会社の存在の大きさを知り、この業界に興味を持ち、帰国後転職しました。いくつかのPR会社を受けましたが、オズマの方々に会ったとき、とても穏やかで包容力のある雰囲気を感じることができ、「この人たちと一緒に仕事がしたい」と思い、ここを選びました。
濱地
僕は出版畑出身です。もともと持っていた地域などへの興味から、「旅を通じて国内外問わず、その地の魅力を人に伝える」仕事がしたいと思い、旅雑誌の編集部などをいくつか経験してきました。その仕事でオズマの方とご一緒することがあったんです。条件的には結構厳しかったんですが、どうしてもある地域に関する記事を書いてほしいと頼み込まれてしまって。「わかりました。依頼は受けます。ただし、タイアップではないので編集側の考え方に口は出さないでほしい。純粋に自分がいいと思うようにページを作らせていただきます」と(笑)。いざできあがるとその担当の方が喜んでくれたんですね。何より嬉しかったのは、その地域の自治体の方が記事になったことを心から喜んでくれた。また僕も伝えたいことが表現できたし、それは読者にとっても伝わることであると。これは皆喜べて、人に伝えられる面白い形だと思いました。その後、その雑誌が休刊となったタイミングでオズマの方が声を掛けてくれて。「このフィールドなら、自分の伝えたいことが伝えられるんじゃないか」と思い転職を決めました。「地域の仕事がしたい」という一心で移ったので、最初、飲料品のおまけのパブリシティを扱う担当になったときは衝撃でした(笑)。でもそうやってPRの経験も積んでいきました。
伴野
私は現在、特定の病気や最新治療をより多くの方に伝えていくという「疾患啓発」の仕事に携わっています。かつてのPRはマスメディアを通じて広く情報発信するのが主流でしたが、最近は、特定の患者さんやそのご家族たちへ向けて、いかに確実に正確な情報を伝えていくかが問われるようになってきています。
そこで立ち上げたプロジェクトが「テトテトプロジェクト」(https://ozma.co.jp/tetoteto/)。具体的には「テトテト」というウェブサイト上で、さまざまなNPO団体さんや、難病の子どもたち、ヘルスケアに携わる人たちなどのコミュニケーションを活性化させ、彼らをつないでいくことで、患者会の広報支援を行うという取り組みです。「テトテト」という場を通して、患者さんが自ら発信したり、環境を改善するために必要な声を上げていってもらうためのサポートができたら。私たちは医療の専門家ではないですが、様々な立場にいる方たちをつなげることはできる。そのポジションに責任をもち、声を拾い上げていくことは、大変ですがやりがいはありますね。
濱地
僕の場合は、2011年から地域の仕事をしています。2014年には新規事業でオウンドメディアの立ち上げを任せていただき、2015年には移住のニュースタンダードがテーマのウェブマガジン「雛形」が立ち上がりました。地域の人や文化やイベントなど、地域暮らしにまつわるさまざまな形を紹介し、それを活用した新しい地域PRを展開しています。そもそも地域PRの仕事は、観光、移住、シティブランディングといった種類に大まかに分けられます。そのうち観光やシティブランディングに関してはマスメディアの活用も効果があるんですが、移住となるとそうはいかない。写真一枚では人生は決められませんから。ですから「雛形」においては、コミュニティの奥の部分までしっかりと深堀し、それが本当の意味で届いた人たち、読者に向けて、行動を促せるメディアにしていきたいと考えています。移住の先輩など、移住するにあたって会っておくべきキーマンを東京のイベントに呼んで読者と交流してもらったり、現地に行くツアーを組んだりもしています。PRにおけるコミュニケーションはいろんな形がありますが、移住に関しては、あまりマスメディアは絡みません。伴野さんのヘルスケアもそうだと思いますが、マスメディア一辺倒の生活者へのコミュニケーションから脱却していくというのが、いまの一つの流れだと思います。
伴野
やっぱりSNSの存在感は大きく、コミュニケーションの形が大きく変わってきていると思います。PRの本質は変わらないにせよ、情報の入手方法はさまざまに変わってきている。ですからいままでのやりかたで人を動かすというのはとても難しくなってきているのではないかと実感しています。
濱地
「雛形」という新規事業に関しても、当社の長い歴史の中で、初めての大型投資に位置するかもしれません。でもやりたいとお願いしたら、トライさせてくれた。そういう意味でオズマという会社は、柔軟に新しいことへ挑戦させてくれる会社だと思います。
伴野
いい会社ですよね(笑)。あと、業種的な特性もあると思いますが、最近のお客様のニーズとして「その領域の専門家にお願いしたい」というのがある。かつては一つの案件に対してチームで対応していたものが、いまは各自にプロフェッショナリズムが求められ、その領域にどれだけ詳しいかが問われるようになっている。当社で言う「特化領域」ですね。個人の力を高めておかなくてはいけないなと強く感じています。
濱地
同感です。自分を磨き続けることを怠ってはいけないし、周囲も同じように高めあっていけば、ひいては強いチーム、強い会社にしていけるのではないかと思います。
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