みなさま、はじめまして。私たちはキャリジョ研といって「20~30代の働く女性」を研究しているプロジェクトチームです。働く女性といえば「OL」ですが、OLという言葉も古くなってきたかと思い、私達はキャリアを持つ女性のことを「キャリジョ」と命名してみました。なぜ働く女性に着目したかというと、働く女性は消費力が高く、情報発信力も高く、マーケティングのターゲットになることも多いから。しかもここ数年ではキーワードとして「干物女」「肉食系女子」「婚活女子」「タラレバ娘」などの名前が出てきて、なにかと話題に事欠かない存在。その20~30代の働く女性の、生活意識やトレンドはどんなものなのか。そこにある本音は何なのか。たくさんの方に話を聞いたり、調査をしたり、トレンドを集めたり、時にはプロジェクトメンバーたちが自分自身のことを深掘りしながら、働く女性のことを分析しています。
今回のテーマは、キャリジョ研を始めたきっかけでもある「OLの終焉!?」というお話。2013年キャリジョ研創設前のこと。「OLって言葉はピンとこない気がする」「腰かけ的なOLって減っているんじゃない?」というメンバーの雑談からこのプロジェクトの構想は始まりました。いまの女性たちの気持ちが、昔とはだいぶ変わってきているのかも…?それって人生や消費にけっこう影響するよね…?と話は進み、キャリジョ研が発足。調べれば調べるほどに、女性たちの本音はおもしろく、ネタに溢れており、調べ続けているうちに気づけば、発足5年目に至ります。
さて、本題に戻りましょう。「OLの終焉」という仮説を立てて調査をしてみたところ予想的中。2017年時点で、働く女性の68.0%は「OLという言葉が時代に合っていない」と思っていることが判明。薄々感じていましたが「OL=腰かけ」というイメージに対する「そんなお気楽なレベルじゃないんですけど!」という反発の声が浮かびあがってきました。
さらに、「恋愛・結婚・出産」についてのデータをみると、結婚したい人は84.4%、出産したい人は77.5%で、結婚・出産というライフコースを選びたい人は多そうです。ところがこれと同時に「出産しても、今の仕事を続けたい」という人は74.8%も存在。しかもこの3年間に5.9%ほど上昇。つまり、結婚・出産をきっかけに仕事を辞めたいと考える人は減ってきているのです。何故キャリジョたちは働き続けるのでしょうか?
仕事を何かしら続けようとしている人に、何のために働くの?と質問すると、「生きていくため」が86.5%と圧倒的に高く、社会と繋がりたいという欲求(家庭に入ると社会から隔離されてしまうから42.7%)や自分の成長欲求(仕事は自分の成長につながると思うから:40.9%)よりも2倍以上高いスコアになっています。バブル時代に現れた楽しそうな「OL」とはかけ離れ、もはや世帯の大黒柱としてがっちり働く、今どきのキャリジョ。「OL」という言葉が現代に合わないのもやむなし、という感じもします。
そんな「働かざるを得ない現実」にある女性たちのデータをみていると、キャリジョ研の打ち合わせは盛り上がり、「専業主婦になりたい女性は多いに違いない」、「駐妻(海外駐在についていく妻。通称チューヅマ)とか憧れるなぁ」、「半沢直樹の奥様みたいな女性こそモテるはず」、「昼顔みたいなのもアリ?!」なんて雑談や安直な仮説を重ねていたのですが、調査を進めると、私たちの仮説とは真逆のデータに直面しました。なんと「専業主婦になりたい」人は、僅か17.2%。本当はそこまで憧れていないのです。一方「なりたくない(働きたい)」は37.4%でした。ちなみに「一時的になってもよい」という、少しは専業主婦を覗いてみたいけど最終的には仕事を持ちたい、というちゃっかりタイプが33.3%と意外にボリュームゾーン。いずれにしても、「生活のため」にイヤイヤ働いているのではなく、別のモチベーションがあるようなのです。
ということで、先ほどみた「何のために働くのか」を冷静にみてみると、「生活のため」の次に高いのが「自分の好きに使えるお金が欲しいから」。豊かな時代に生きてきた女性ならではの、「自分」も大事にする視点がランクインしています。さらに、趣味にお金をかけたい:75.4%、美容医療を試したい(試したことがある):64.3%と、まだまだ自己投資する気満々です。
その一方で驚きなのが、3番目にランクインした「子育てに必要なお金が欲しいから:52.3%」。子供がいない女性を対象にした調査なのに、子育てのお金を積み立てようとしている女性が全体の半分もいるのです。これは社会との繋がり欲求や自分の成長欲求をも上回るスコアで、思わず突っ込みたくなります。
ちなみに、この3年間で減った「働く理由」は、「再就職は大変だから・もう同じような仕事に就けないと思うから」、「仕事をするといろいろな人とのつながりを持てるから」、「仕事をして人や社会のために役立ちたいから」。政府の施策のおかげもあり、女性支援系の制度も整い始めているし…SNSで繋がりもあるし…と、インフラを巧みに活用する様子がうかがえますし、一時期の社会貢献ブームも一周して、もっと実直に、仕事に結婚に出産に自分のありたい将来を得るために今を戦略的に生きたい!という本音が見えてきます。
このようにインフラを上手に活用しながら、将来まで見据えて今を生きるキャリジョの戦略性は、恋愛にも現れています。「もう合コンはめんどくさい:75.8%」「異性と付き合う時に、結婚を意識するほうである:74.1%」「結婚するつもりがないに付き合うのはめんどくさい・意味がない:56.6%」など、恋愛・結婚も「超効率重視」の徹底っぷり。しかし「これだから女は計算高いなぁ…」って斜に見るのは勇み足。今は保証された将来がないし、そんな社会で振り回されないために、自ら足元固めをしているわけで、むしろ「しっかり生きている」と褒めるべきかもしれません。
こんな時代だからこそ、戦略的に生きるキャリジョたち。結婚できない女性たちを描いた「タラレバ娘」には、もちろん共感しつつも、一方で「私は先手を打って生きますから!」という決意表明が聞こえてきそうです。
ところで、この「人生戦略家」のキャリジョたち。彼女たちの中でもいったいどんな人たちが、その意識をけん引しているのでしょうか?答えは次回の「世代論」で明らかにします!
2003年博報堂に入社。以来ストラテジックプラニング職で、化粧品・飲料・食品などの消費財周りから、通信・自動車などの耐久財まで幅広く担当。これらの経験を生かし、2013年社内横断プロジェクト「キャリジョ研」を発足。昨年、育児休業から復職し、現在はキャリジョ研の中でも、ライフステージの異なる視点から客観的に捉える目として、引き続き在籍中。