第7回は、2014年に博報堂DYグループの社内公募型新規事業育成制度AD+VENTUREから誕生した、ハワイ専門のエージェンシー、マハロネットワークスをご紹介します。田原毅代表取締役社長と、木村俊介取締役副社長に話を聞きました。
田原
当社は一言で言うと、ハワイと日本をつなぐあらゆるコミュニケーション業務をサポートするエージェンシーです。事業としては、ハワイに関連するグッズを購入できるECサイト「マハロモール」の開設から始まり、ハワイフェアなどを行う際の百貨店さんなどでの出店プロデュース、それからフェスなどのイベントを通じ、ハワイ・ファンやサーフカルチャーのコミュニティーをターゲットにした、コミュニティーマーケティング活動を行っています。
木村
特にハワイアン航空のロゴグッズは日本にもファンが多いのですが、日本での独占販売権を弊社が取得しています。通常のグッズ販売はもちろんですが、さまざまな企業とコラボレーションし、ハワイアン航空のロゴとからめたオリジナル商品の開発なども行っています。
田原
起業のきっかけとなったのは2014年の博報堂DYグループの社内公募型新規事業育成制度AD+VENTURE(アドベンチャー)です。当時僕は40歳前後で、その後の人生、キャリアについていろいろと悩んだ末、年齢的にも本当にやりたいことをやるならチャンスは今しかないと思った。昔からハワイが好きでよく行っていましたし、趣味もサーフィンだったので、その二つに関連する事業をしたいと思ったんです。
僕は当時博報堂中部支社でウェブプロデューサーをやっていましたが、ハワイアン航空の仕事の経験もある優秀な営業の木村君に声を掛けてみたら(笑)、二つ返事で「やりましょう」と言ってくれて。
木村
僕自身ももともとハワイやサーフカルチャーが好きだったので、仕事につなげられたらなとは思っていました。それと同時に、田原さんに声を掛けていただけたのが、ちょうど僕も今後の働き方についていろいろと考えを巡らせていたタイミングでした。渡りに船というか(笑)、これはやるしかないなと思いました。
田原
好きなことに関われる仕事は文句なしに楽しいのですが、二人とももちろんですが広告会社としての知見しかなく、商品のバイイングや輸入業などは初めての経験。最初はルールもあまり把握していなくて、税関などで叱られることもしばしばありました(苦笑)。そこは一から身をもって経験し、勉強しながら、少しずつ自分たちができることとプロに任せられることを見極めていきました。ほかにも、物販というのは当然在庫を抱えなくてはならないですし、会計方法も広告の世界とは全く違っていたりする。大量の英文書類とも格闘しました。30、40歳にして初めてということだらけでしたね。
木村
初期はかなりおたおたしていましたね(笑)。
田原
現在この会社が始まって4期目に入りますが、ダイレクトに数字が業績に戻ってくるのは面白いですね。一般の生活者の方から、イベント会場なんかで「いつもマハロモールで買ってますよ」なんて言われるとすごく嬉しい。それまでの業務ではなかなか味わえなかった感覚です。
木村
確かに、BtoBとBtoCの両方をやっているからこそ見えること、感じることもありますよね。クライアントさんに話すときも、生活者の顔がきちんと見えているから、話が通りやすかったりします。
田原
それから、広告会社としてはクライアントの宣伝部やPRの方を通すわけですが、一方で、物販の方でつながったバイヤールートでセレクトショップと組んだりもできる。広告窓口だけではないつながり方も可能で、それがまたメインの広告業につなげられたりもする。その利点を生かして、代理店業はもちろん、物販を通して生活者と直接つながっていくことや、メーカーとして自分たちが開発した商品を通してマーケットを広げるといったことにもどんどん挑戦していきたいですね。
田原
これからの総合広告会社のあり方を考えてみると、従来型の“マスメディアを通じてマスに向かって訴えていく”というやり方だけでは人は動かない。ではどうすれば人は動くのか。その鍵は、サイズではなくて、どれだけ深く一つのコミュニティーを知れるかということにあると思います。そのコミュニティーを中心とした確たるネットワークが財産となっていく。今僕らが受けている仕事も、「マハロだから知っているだろう」「マハロだからできるだろう」ということで企業さんから声を掛けていただいています。
ハワイの魅力ってたくさんありますが、ハワイに行って、「もう最悪だ」なんて言う人はまずいないですよね(笑)。みんなすごく楽しんでいる。幸せなオーラに包まれているというか。この仕事を通じて知り合った方々もハワイや海が好きだという方々がほとんどですが、皆さんやはり、そのハッピーな空気感に惹かれているんだと思います。
木村
本当にそうですね。そして、そういう方々、つまり好きなものが同じ人同士の距離間の縮まり方はすごく早いんです。まったく知らない人とつながってみたら、たいてい共通の友人知人が1~2人いて、「〇〇さん知ってるんですか?じゃあ○○さんも知っていますよね!」という感じでどんどんつながっていく。やっぱりそれも、コミュニティーがそれほど大きくないからかもしれません。だからこそ情報の伝達スピード、人間関係ができていく速度がものすごく早い。それはある意味、とても効率的なことでもあります。
田原
確かにそうですね。
一方でこの先は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでサーフィンが追加競技として決定したこともあり、いやでも注目度は高まってくるだろうと思います。今既にサーフカルチャー、ビーチカルチャーに関する熱が高まりつつあるのを感じていますが、2020年に向けて、ますますファッション周りはもちろん、音楽フェスをはじめとするアウトドアイベントなどにもその熱が派生していくでしょう。僕らとしても、その大きな流れの中でどうビジネスを展開していくか、楽しみながら考えているところです。
マハロネットワークスという社名の「マハロ」は、ハワイ語で「ありがとう」を意味します。立ち上げから今までたくさんの人に助けていただいた分、社名に込めたように、これから少しずつ感謝の輪を広げていけたらなと思っています。
ZOOM Inc. ~ Group Company Profile ~ アーカイブ