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“世界で最も刺激的なビジネススクール”KAOSPILOTと探る、 真にイノベーションを生み出す人材・組織とは?

2017.05.17
#イノベーション#ブランディング#博報堂ブランド・イノベーションデザイン
左から、カオスパイロットプログラムディレクターのデイビッド・ストークホルム氏、博報堂ブランドデザイン山田聰、レア共同代表の大本綾氏、博報堂ブランドデザインの原節子、カオスパイロット校長兼CEOのクリスター・ヴィンダルリッツシリウス氏
博報堂ブランドデザインと、北欧流教育デザインコンサルティング・ファーム「レア」、そして、米Ode Magazine誌が「世界で最も刺激的なビジネススクール」と評したビジネス・デザイン・ハイブリッド・スクール「KAOS PILOT(カオスパイロット)」の3社が協働した「クリエイティブ・リレーションシップ・プログラム」がいよいよ始動しました。
※ご参考 3月21日発表リリース http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/37398
真にクリエイティブでイノベーティブな人材、チームを育成するための最先端メソッドを取り入れた本プログラムはどのように誕生したのか。その背景や特徴、今後について、カオスパイロット校長兼CEOのクリスター・ヴィンダルリッツシリウス氏、プログラムディレクターのデイビッド・ストークホルム氏、レア共同代表の大本綾氏、そして博報堂ブランドデザインの原節子と山田聰が語りました。

若き起業家を世界に輩出する「KAOS PILOT(カオスパイロット)」

クリスタ―:1991年、デンマークに開校して以来、カオスパイロットからは数多くの起業家たちが誕生してきました。リーダーシップと起業家育成教育のメソッドが大変ユニークだったことから、まずはヨーロッパで注目を集め、続いてアメリカやアジアなどで認知され、いまや世界中で当校のプログラムを展開しています。1学年には36人が在籍し、プログラムは3年制です。現在、今日同席しているアヤ(大本綾氏)を始め世界中に約800人の卒業生がいて、そのうち約35%が起業、また約50%は何らかの責任ある立場についています。

デイビッド:そもそも開校の最初のきっかけとなったのが、「未来に受動的に対応するのではなく、未来を能動的につくり出せる若い人材をどうすれば育成できるか?」という一つの問いでした。当時デンマーク、スウェーデン、ノルウェーは大変な不況で、仕事をつくり出すことが大きな社会課題の一つだった。そこで、どんな状況下でも能動的にリーダーシップを発揮し、社会で活躍するための若者を育てるために、アカデミックではない、実践的なオルタナティブ教育の一つとしてカオスパイロットが生まれたんです。

クリスタ―:その教育メソッドを、生徒たちだけでなく、世界の企業や公的団体に対して提供するために開発したサービスの一つが「クリエイティブ・リーダーシップ・プログラム」です。たとえば36人の生徒がグループとして学び、何かをイノベートし、共創するためには、誰がどうやってその“場”を“リード”するかも重要です。「クリエイティブ・リーダーシップ・プログラム」では、学びの“場”をセッティングし、グループの関係性をコーディネートし、あるいは先生と生徒の間に立つような通訳的な役割を持つチームリーダーを育成します。今回新たに、博報堂、レアとの協働で生まれた「クリエイティブ・リレーションシップ・プログラム」にも、この考え方が反映されています。

大本:カオスパイロットには1学年に36人が在籍していますが、なるべく異なるバックグラウンドを持つ人で構成し、多様性が担保されています。国籍が異なるのはもちろん、芸術家だった人もいれば、スポーツ選手、起業家、教育をまったく受けてこなかった人もいる。誰かの背景や知識はほかの誰かの学びになるという考え方で、同じようなタイプの人だけが集まる中では得られない、多様な学びが可能になるわけです。こうした多様性は別に特殊なことではなく、実は日本でも世界でもあらゆる組織が内包しているもの。どんな組織でも、一人一人の多様な個人が集まっている以上、ダイバーシティをすでに内部に抱えています。だからこそ、たくさんの異なる視点や考え方をいかにクリエイティブな資産として使っていくか、そのためのスキルとマインドセットが求められていると思います。

クリエイティブ・リレーションシップ・プログラムが提供できること

原:私たち博報堂ブランドデザインとカオスパイロットとの出会いは3年前です。その頃、“複雑な時代下でも能動的に未来をつくり出せる人づくり”のために、「未来教育会議」というプログラムをスタートさせていました。デンマークは「世界一幸せな国」と称され、国連のランキング(World Happiness Report)でも上位の常連。特徴的な教育で知られていることもあり、スタディツアーなどを行っていく中で、カオスパイロット、レア両社との接点も生まれていきました。

山田:僕らも実際に彼らのワークショップを体験し、さまざまな気づきがありました。ブランディングやイノベーションにおいて、メソッドなどのhowももちろん重要なのですが、より大切なのはwhat、あるいはそもそもなぜ(why)それをやるかという志やビジョンである。こうした考え方は僕らも以前から大切にしてきてはいたのですが、彼らのワークショップでもっとも問われたのはさらに根本的なところ。僕ら自身がどういう人間なのかというwhoの部分でした。自分が一体何に情熱を持ち、人生に何を求めているのか、対話の中から自分自身を掘り下げ、そこからアイデアや企画を考えていくという作業は新鮮でしたね。

原:日本は特にそうかもしれませんが、どんなプロジェクトでも会社や組織の目的がまずあって、そのために第三者的に冷静に考えて遂行される傾向がある。私もワークショップを体験し、自分自身がなぜそれをやるのか、やりたいのかを問い直すだけでも、とても大きな心的変化が生まれる気がしました。そうやって最初から土台をきちんと耕すことで、自分自身も、多様性のあるチームの力も最大限に発揮され、ある意味プランニングや事業にも魂が込められるのではないかと思います。

クリスタ―:それは大事なポイントです。たとえば会社Aが顧客の幸せのために、会社Bに何かの開発を依頼したとする。会社Bは会社Aに「完璧なブリーフをしてくれたら我々は完璧な答えを出します」と言うかもしれない。でも会社Aにも会社Bにも、あるいは顧客との間にも必ず異なる「思い込み」や「価値観」「体験」といったフィルターがかかってしまう。完璧なブリーフを出すのは難しいものです。
そこで必要なのが、互いが理解しあえる共通言語を共につくっていくこと。それから共にツールをつくり出す。そして共に体験をする。そうして初めて、集団としてクリエイティブな何かを生み出せるはずなんです。「何かイノベーションを生み出そう」というとき、従来の考え方では、「我々は共通言語を持っているはず」「すべてが思ったように進むとはずだ」と思い込んでしまい、この根本的な部分は無視されがちです。土台である共通言語づくりから始めることで初めて、各々のフィルターをきちんと認識し、それを越えたクリエイティブな共創ができるのだと思います。

原:そのために今回われわれが開発したのが、「クリエイティブ・リレーションシップ・プログラム」です。
企業を取り巻く課題が複雑化する中で、強いブランドづくりや、新しい製品やサービスを生み出すには、ナレッジやメソッドといったノウハウに加え、それに関わる個人が意思を持ち、クリエイティブな資質を十分に発揮することが大切です。このプログラムは大きく3つのセッションに分かれていて、最初はカオスパイロットが提供する集中ワークショップを行います。実際にカオスパイロットから講師2名を招いて、チームメンバーの一人一人が「クリエイティブ・リーダーシップ」の基礎を身につける内容です。それを経て行うのが「価値づくりセッション」と「関係性づくりセッション」。実は、この2つを同時進行で行うのが特徴的なんです。「価値づくりセッション」は、具体的なアウトプットを生みだす活動で、例えば企業ビジョン策定や新商品開発といったテーマを扱います。 ここは博報堂チームが担当し、これまで培ってきたブランディングやイノベーションの手法を用いて進めます。一方、「関係性づくりセッション」は大本さん、レアが担当します。多様なメンバーそれぞれがどういう資質や価値観を持っているかを知り、次にチームメンバーの資質を相互理解し、質の高い関係性、つまり強いチームを築き上げていくセッションです。こうした関係性づくりとビジョン策定を行き来しながら進めることで、自分を主語にした真に魂のこもったアウトプットが生まれてきます。

組織に必要なのはアイデアやイノベーションが生まれる土壌づくり

大本:「イノベーションが大事」だからということで場所だけをつくっても、アイデアが出てくるわけではありません。見えない相互作用を通し、関係性を育むときには必ず“場”が必要で、このプログラムはそこにもっともワークするのではないかと考えます。イノベーションは誰か個人に頼るものではなく、全員の仕事のはずです。そういったことを考えられる機会や関係性、チームというのは自然発生的に生まれるものではないので、ある程度デザインすることが重要でしょう。
『ひらめきはカオスから生まれる』という本がありますが、カオスからひらめきが生まれるとき、余白と異分子と、計画されたセレンディピティの3つが大切な要素だと書かれています。余白というのは時間的・思考的な余裕。異分子は異質な人材のこと。計画されたセレンディピティというのは、その二つが存在したときにちゃんとアイデアが生まれる土壌を計画的につくることだと思うんです。このプログラムはまさにそれらの要素を組織やチーム、個人からうまく引き出すことで、本質的な学びと実践の場を提供するものです。

「クリエイティブ・リレーションシップ・プログラム」で活用されるツールの一例。言葉だけではなく、非言語的な感覚を活用して、内省やビジョンの探求を行うことも多い。

原:このプログラムは、「こうしたらイノベーションが生まれる」というハウツーではなく、「自分たちが真のイノベーティブな組織になっていくための自社オリジナルの方法を創り出す」ものというべきかもしれません。ですから組織として本気でイノベーションに取り組もうとしているクライアントには、ぜひ一度試してみていただきたいですね。

山田:より具体的に言うなら、事業開発、研究開発といった、持続的にイノベーションを生み出そうとしている部門、組織をどうやってクリエイティブにしていくかを考えている人材開発や人事などの部門、あるいは、会社全体をどうやってイノベーティブにできるかを考えている経営企画や社長室直轄プログラムなどの部門。そういう方々には非常に有効なプログラムなのではないかと考えています。また企業だけでなく、是非公的団体や自治体などにもトライしていただけたらと思います。

クリスタ―:そうですね。企業の多くは、アイデアや方向性を持ってはいるかもしれませんが、本当にイノベーティブになるためには、そもそも本質的に自分たちが何を求めているのかを十分に理解する必要があると思います。このプログラムを通して、そういった潜在的なニーズを顕在化することが可能になるでしょう。
今回の共創を通し、私たちも学ぶことが多かった。これからも組織として互いに学びあえる関係性をつくっていきたいですね。

<終>

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