第8回は、世界的ブランドのフラッグシップショップや話題のショールームといった商業施設を中心に、ハイエンドな商空間を提供する内外装施工管理スペシャリスト集団「ディー・ブレーン グループ」をご紹介します。小池靖専務取締役と、石原政仁執行役員に話を伺いました。
石原
株式会社ディー・ブレーンは、1990年の創業以来、一貫して商業施設の内装、施工を行っています。主には有名なハイファッションやジュエリーなどのフラッグシップショップやショップインショップ、ホテルやレストラン、また最近ではシェアオフィスや社員食堂、クリニックなどの施工など、商業空間だけにはとどまらず、対応分野を年々広め、多種多様の業種からの様々なご依頼に対応しています。
「施工」はイメージ的にはあまり表に出てくるような仕事ではありませんが、実はコストやスケジュールをコントロールするという点で非常に大きな責任を担う立場です。デザイナーが知恵を絞ってつくった一つ一つのアイデア、デザインがいいものであればあるほど、施工会社としてはそれを具現化するための強い意思、高い技術を持っていなければいけません。ですから、デザイナーさん、クライアントさんと横並びの関係で、“挑戦する気持ち”“意志力”を持ってソリューションを興す、ということを念頭に置いています。
ディー・ブレーンのディーはデザイン(Design)のDで、ブレーン(Brain)は、それを解くための脳、思考力といった意味があります。何かものをつくるときには、さまざまなネットワークのなかから正しい選択肢を導き出し、前に進めていく能力が必要です。私たちはそれができるスペシャリスト集団であるという矜持が社名に込められています。
小池
そして株式会社ジェーピーディーエイチは、同じくディー・ブレーングループで内装、施工及び施工管理を行っている会社です。クライアントはチェーン店、レストラン、アミューズメント関係などの国内企業が多くを占めます。ビルのコンバージョンやリノベーション、複合商業施設への改修など、株式会社ディー・ブレーンと比べると比較的日常使いのお店を扱うことが多いです。
そのほか同じグループ内に、インテリアデザインを専門とする株式会社ホログラムという会社があり、デザイン面でもさまざまな設計ニーズにお応えできるようになっています。ディー・ブレーンと合わせた3社でディー・ブレーングループは構成されています。
石原
ディー・ブレーンの強みは、例えばフィリップ・スタルクやマーク・ニューソン、パトリック・ジュアン、など海外の著名なデザイナーや、若手デザイナーのローテックやハイメ、シグーなど、これまでのネットワークをいかし、海外デザイナーを起用されたいクライアントに代わって紹介やコンタクトをおこないます。
そして彼らが日本でプロジェクトをおこなう際に弊社は彼らにとってなくてはならない機能を提供します。それは、海外のデザイナーやクライアントが日本で出店するにあたっての専門的なローカライズをおこなう代行者が必要だからです。ディー・ブレーンは建築専門知識を持ちつつ、海外とのコミュニケーションにも長けたスタッフがそろっていて、海外のデザイナーが複雑で長い経験と知識の必要とするローカルアーキテクトをおこないます。
また、同様に国内のデザイナーとのリレーションも多く持ち、幅広い顧客のニーズに多くのソリューションを持ってプロジェクトを実現させるための提案をしています。
弊社の手掛けた仕事をいくつかご紹介すると、たとえば先日オープン時に話題となったGINZA SIXでは10件のショップインショップを手がけました。なかでも玉川堂は人間国宝が打った銅板を床・壁・天井・棚まで現場作業にて施工された難易度の高い仕上がりは目を見張るものがあります。
ピエール・エルメ・パリ青山では、床や壁、階段にまで さまざまな種類の大理石を全て異なる大きさや形でパターン貼りしています。この作業ですが、施工難易度は勿論の事、珍しい石種の入手や、複雑なパターンを、限られた工期の中で精度良く施工する為のリサーチ力と丁寧な施工計画が仕上がりの重要なポイントになります。
全てのパターンの形材を作成し、一旦現場に設置して調整を図った後に、その型に合わせ事前に加工した石を現場で施工しています。これらの作業があってこそ全てのジョイントが均一に施工され、まるで塗り分けられたようなクオリティーを実現しています。
オフィス内装として手がけた、スタートトゥデイグループ 東京オフィスでは3字曲線に加工した19ミリのガラスでドームを作り、開口部にはスライドで開閉する扉を配しています。
さらに注目すべき点としては、全てのガラスの納まりがフレームレスで構成されており、ガラスが床に飲み込まれてゆくディティールなど、極めて難易度の高い施工技術によって出来上がったカンファレンスルームはインパクトのある美しいフォルムに仕上がっています。
小池
ジェーピーディーエイチの場合、一番の強みは内装監理室という専門部署でしょうか。大規模な複合商業施設などの場合、100のテナントがあれば100人のデザイナー、100人の施工担当者がいる。我々はその窓口として、ビル所有者の立場に立って、テナントの施工会社、設計者へのガイドラインをつくり、指示指導をしていきます。とにかくスケジューリングを丁寧に行い、皆さんがスムーズに仕事を進行できるように整えるというのがこの部署の大きな仕事です。また、期間限定のポップアップストアやイベントスペース等に活用できる不動産情報を持っており、その仲介業務を行う部署もあります。
具体的な事例としては主に複合商業施設、たとえば先ほど上がったGINZA SIXもそうですし、東急プラザ、スカイツリー、ルミネ……チェーン店だとたかの友梨さんのエステサロンなど、また自由が丘にある老舗時計店の内外装などを手掛けています。
また、博報堂グループと協業して、クライアント企業のポップアップストアも複数手がけました。
小池
我々の仕事では、一つとして同じ仕事はありません。毎日やることは変わるので、もちろん勉強会なども実施しますが、もっとも重きを置くのは実践教育です。経験が浅いスタッフも、デザイナーとの打ち合わせに同行させたり、現場だと工程管理、品質管理、発注などのサポートから担当してもらう。もちろん優秀な管理者の元で、です。そうした実践を繰り返していくことが一番の学習になると思っています。
石原
たとえば図面を見ただけで、デザイナーの一番の想い、いわゆるツボの部分が把握できるようになるには、社内ルーチンでやっているような業務をいくら続けても難しい。個人的なセンスももちろんあるかもしれませんが、やはり現場で積み上げる体験に勝るものはないでしょうね。
小池
それから、この仕事の肝とも言えるのが会社の立地ですよね。
石原
そうですね。ディー・ブレーングループがここ青山にオフィスを構えるようになってから20数年になりますが、それにも理由があります。青山・表参道の周辺エリアは世界に名だたるファッションブランドや有名建築家がこぞって集まってくる場です。そういった環境に身を置くことで、自然と情報が入ってくるようになるんです。通勤時に周囲を歩くだけでも、いくつもの最先端のショーウィンドー、店舗デザインなどを見ることができて、その時々の旬やトレンドを体感できる。これは何よりの生きた勉強です。このオフィスも世界的にも著名なインテリアデザイナーの片山正通さんに依頼し、ショールームのように作っています。
小池
そうですね。環境は大切ですよね。代表は「インナーブランド」と表現していますが、ジェーピーディーエイチも昨年ディー・ブレーンと同じビルに引っ越し、インテリアデザイナーの勝田隆夫さんに依頼し、ディー・ブレーンのオフィスとはまた一味違うデザインで作っています。ここで働く社員の内面から自然と意識が高められるよう、デザインが徹底されています。たまに、このオフィスを自分の仕事の参考にしようとしているのか、壁のところをメジャーではかっては「なるほどなるほど」なんて言いながら、メモをとっている社員もいます(笑)。
石原
今後については、ディー・ブレーンとしての基盤、ブランディングはそのまま、よりネットワークを広げていって会社の今後の成長につなげていきたいですね。また業界的にも、職人さんの間に少子高齢化が進んでいると言われているので、いまの高い技術をいかに維持しつつ、うまく世代交代、新陳代謝をしながら成長していけるか、というのを念頭に置いています。
小池
そうですね。ジェーピーディーエイチとしても、商業施設で培ってきたノウハウを活かしながら、今後は新たなマーケットを開拓していきたいですね。たとえば最近では学校や医療・介護施設などのお話も少しずつ増えてきているので、商業分野における内外装の技術、デザイン力をそういった分野にも活用できたらと考えています。
ディー・ブレーングループとしても、博報堂グループの一員になったことで、今後は、これまでに体験したことのない商文化の仕事を新たに手掛けることができるのではないかと期待しています。
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