「私はふだん、新しいブランドの立ち上げや、既存ブランドの活性化など、ブランドにまつわる仕事をしています。また編集長として『ブランドたまご』というWEBコラムを制作しており、“伝統を活かしながら革新を起こしている日本の老舗企業にブランディングのヒントがある”という視点から、全国各地にある老舗企業の新ブランド、これから伸びそうなブランド等を取材、ご紹介しています」と、講演は岡田の自己紹介からスタートしました。
岡田はまず「ブランドとは何か?」について説明。ブランド(brand)という言葉は、そもそも自分の飼っている牛と他人の牛を区別するために付けていた「焼き印」が由来だといわれており、かつては差別化のための印に過ぎなかったことを解説します。その印が、しだいに印以上の意味を持つようになったとし、「ブランドとは、単なるマークや見た目のカッコ良さではなくて、社会にとって価値のある、魅力的な固有の『らしさ』であると博報堂では定義しています」と説明しました。
次に、ブランドという考え方が歴史の中でどう変化してきたかを解説。かつては、よく同じ会社でも看板や商品に異なるマークを付けていたのが一つのマークにまとめるという傾向が出始め、それが自社らしさ、さらには人・組織をも表すものとして発展してきたと語りました。さらに最近の傾向として、「共創」というキーワードを挙げ、「お客さんたちが仲間となり、一緒にブランドを育てる感覚になっています」と続けました。
では、いまの時代、良いブランドを作るために必要なものは何か。岡田は、必要な要素として、『志』『形』『属』を挙げました。「志はブランドの存在意義、信念やビジョン。形はデザインなど、お客さんに伝わるアウトプットです。そして属は、それを自分事のように熱を持って応援してくれるサポーターがいるかどうかです」。
そして、前述の3つの要素のうち、「志」を持ってブランドを開発した例として「ブランドたまご」でも取り上げた、マッチ型のお香・hibiというブランドを挙げました。開発の背景、取材でのエピソードなども紹介しながら、「ブランドを生みだしたのは、『マッチを擦るという行為を後世に残したい』という社長の想い、志だったんです」と語りました。
最後に「自分や会社の使命は何かを考え抜いて、いまある商品ではその“志”を十分体現することができないと気付いた瞬間に、新しいブランドをつくるという選択肢が生まれるのではないでしょうか。それを新しい形、商品にして、仲間、チームと一緒に広めていこうというのが、ブランド戦略そのものなのではないかと考えています」と話し、講演を締めくくりました。
その後、質疑応答の時間が設けられ、参加者からはさまざまな質問が。みなさんとの対話を経て、会は終了しました。
短い時間ではありましたが、小矢部の若手経営者の皆様と意見交換ができて、私自身とても刺激を受けました。すでにインターネットを使って新たなビジネスに挑戦し始めている方もいるなど、想像以上にみなさんがブランドについて意識していることに驚きました。今回お招き頂いた五郎丸屋さんの「T五」のように、富山には世界に誇れるたくさんの資産があると思います。ぜひ新しいブランドを作って頂いて、数年後に「ブランドたまご」で取材させていただきたいと思いました。