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コンテンツファン消費行動調査2017分析リレーコラム#1「変わるコンテンツファンの消費行動 2010→2017」

2017.10.23

博報堂研究開発局とメディア環境研究所では、「コンテンツファン消費行動調査」という全国調査を、毎年共同で実施しています。この研究が立ち上がった2010年は、コンビニエンスストアでコアファン向けのアニメのタイアップ商品棚が設置されたことが物珍しく語られていた頃でした。「コンテンツ消費の研究って、ほぼオタク研究でしょ」と言われがちだった当時から、この7年間でかなり様相が変わってきました。コンテンツが牽引する消費は拡大し、企業におけるコンテンツのマーケティング活用事例も積みあがってきています。メディア環境の変化、特にモバイルシフトに伴い、生活者とコンテンツの付き合い方もまた大きく変化してきたと言えるでしょう。

作品そのものでない付帯情報が、コンテンツ消費を促す

昨年、国民的大ヒットと呼ばれるような映画・ドラマ・ゲームのヒット現象が相次ぎました。分析チームではこの現象を解釈するにあたり、こんな仮説を立てました。「作品そのものでない情報が、コンテンツ消費のきっかけになる機会が増えているのではないか?」ここで言う「作品そのものではない情報」とは例えば、作品周辺の小ネタやエンディング映像・WEBニュースや作品批評等の周辺情報・生活者によってSNS等でシェアされる評判情報などが相当します。私たちはそうした付帯情報を “Feed”と呼んで、分析することにしました。“Feed”とは、直訳すると“餌・食べ物”です。ちょっと語感が強いですが、ここでは“思わず、ついつい生活者が食いついてしまうような情報“をイメージしてください。この“コンテンツ消費における付帯情報=Feed”に焦点を当てると、生活者とコンテンツの付き合い方の変化が見えてきます。
2010年時点と比較した主な変化のポイントを、図1にまとめました。

(図1)2010年→2017年 “Feed”にみるコンテンツと生活者の付き合い方の変化

この図1の表のように、“Feed”が年々増えてきている現在を象徴するような生活者のエピソードがあります。ある50歳女性に「観るドラマを1本選ぶ際に使った情報源」というものをインタビューしたところ、以下のような大量の情報源が挙げられました。※
※メディア生活フォーラム「たしからしさの求め方」デプスインタビューより(2017年6月) http://mekanken.com/cms/wp-content/uploads/2017/07/3d7e691fd2eea1ff58ee17125a366bf0-1.pdf

●Yahoo!ニュース記事●Yahoo! ニュース記事のコメント●家族(娘たち)の口コミ(評価)●友人の口コミ(評価)●TVの番宣(広告)●出演者のCM●Twitterでの評判● Google検索で調べる(悪い面も)●Yahoo! 知恵袋~有名ドラマウォッチャーの評価

1本の地上波のドラマを選択することは生活者にとって大変な作業なのだな、と感じさせるとともに、生活者は現在これだけの“Feed”に囲まれており、常時受発信が可能である、とも言えます。では、一体、どんな生活者が“Feed”に反応しているのでしょうか?

2017年、コンテンツファン8つのクラスター

“Feed”に焦点を当てながら、生活者とコンテンツの付き合い方をさらに分析するために、コンテンツファン消費行動調査2017の調査データでクラスター分析を行いました。
図2をごらんください。

図2 コンテンツの年間支出金額とSNS毎日利用サービス数

各クラスターの詳細については、こちらのリリースをごらん頂きたいのですが、(http://www.hakuhodody-media.co.jp/column_topics/feature/research-feature/20171013_19491.html)私たちが特に注目したのは、右上の3つのクラスターです。このクラスターに共通しているのは、年間のコンテンツ支出が全体平均の1.1~3.3倍にものぼるとともに、毎日SNS等を中心としたWebサービスを3つ以上利用している、という点です。すなわち、日々、大量の“Feed“に接している生活者たちが、結果的に活発なコンテンツ消費を行っていると言えます。

かつて2014年の分析では、私たちはフリーライダーならぬ“ヒットライダー”※http://www.hakuhodody-media.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2014/08/HDYmpnews20140822.pdfとも呼ぶべき存在に注目していました。「世の中のヒット現象そのものにSNSでのコミュニケーションを通じて反応はするものの、コンテンツ支出金額はさほど高くない」という層が、大きなかたまりで存在していました。

3年たった現在、そのかたまりは分化して、「コミュニケーションが活発で、支出行動も活発」というコンテンツ消費行動を牽引するような生活者群が見えてきたと言えます。彼らは“Feed”の海を自在に泳ぎ、コンテンツに対する思い入れは薄い、という点で共通しています。特定のコンテンツに熱量を捧ぐ行為よりも、「SNS内に流れる大量の“Feed”から効率よく情報をピックアップし、それに次々と反応したり支出したりすることで、コンテンツ消費を牽引する存在」となっています。

送り手側の企業からすると、作品と、その付帯情報とは一線を引いて考える場面も多いかもしれません。しかし上記で注目したクラスターのような生活者は、日々大量の“Feed”に囲まれながら、作品も付帯情報も渾然一体の消費対象として、彼らなりの「コンテンツ消費」を今日もどこかで活発に行っています。「コンテンツ」というものの輪郭をどう捉え、どう生活者に届けていくのか、いま新しいアプローチが求められているのではないでしょうか?

加藤 薫(かとう かおる)

1999年博報堂入社。菓子メーカー・ゲームメーカーの担当営業を経て、2008年より現職。生活者調査、テクノロジー系カンファレンス取材、メディアビジネスプレイヤーへのヒアリングなどの活動をベースに、これから先のメディア環境についての洞察と発信を行っている。

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