2012年ごろから、若者の失業率が30%を超える状況が続いているイタリア。大学を卒業しても良い仕事に就けない人も多い事や、そもそも大学を卒業するまでに5~6年かかる人が多い事などから、晩婚化・少子化が進んでいます。「イタリア人の家事・育児分業に対する意識ががらっと変わってきたのは、今の40代くらいから」と言うHanaさん。元々は「マンマの味」という言葉があるように、家庭でのお母さんの存在感が大きく、家事は全て女性というケースが多かったイタリアですが、ここ10年程度で、状況はかなり変わってきているそうです。今の若い世代には、「家の事は全てお母さんの役目(責任)」という感覚はなく、夫婦で家庭を担うという考え方が広がっています。その要因として、「共働き家庭が増えたから」という事はもちろんありますが、もう1つ、70年代に女性の権利を主張する運動が盛んに行われ、その時のこども世代が、大人になって家族を持ち始めているから、という一面もあるそうです。背景状況はとても日本に似ています。ところがここで面白いのは、イタリア人男性の捉え方。「男性も家事に参加した方が、夫婦の時間が増えるし、お互いに幸せになるじゃない」と前向きに受け止めている男性が多いそうです。「やらされている感」ではなく、むしろポジティブに捉えるあたりが、イタリア流なのでしょうか!
日本でも、子どもに身につけてほしいスキルの1位が「英語」になるなど、英語熱は高まっていますが(※博報堂こそだて家族研究所 小学生ママの「子どもの習い事・身につけさせたいスキル」レポート2016より)、イタリアでも、英語熱が高まっているそうです。その背景には、「子ども達が大人になる頃、イタリアに居続けても明るい未来があるかわからない」という、ママ達の危機感があります。残念ながら最近は、イタリアならではの職人技も、量産できる工業製品に押され気味など、国内の魅力的な職業が減ってきているようです。英会話スクールや英語のサマースクールが盛況なのはもちろん、英語を話すベビーシッターさんが流行っているのだとか。子どもの送り迎えもお願いでき、子ども達の英語も上達し、一石二鳥という事で、人気を博しているそうです。
Hanaさんが、イタリアで子育てして良かった!と最も感じている点は、子どもの教育。「イタリアの教育が、自分や自分の子どもには合っている」と、強く感じています。イタリアの教育は「それぞれの子どもの個性を尊重してくれる。伸ばして、認めてくれる」という方針。例えば、何か係を決める際にも、「Aさんはこれが上手よね、では、この係にしましょう」というように、先生が導いてくれます。「日本の先生は綿密に準備をして授業にのぞむ印象がありますが、イタリアの先生は良い意味で“雑”です。カリキュラムも自由度が高く、例えば、子ども達に“秋”をテーマにした文章を書かせるのが国語の授業だったりと、教科書の音読を繰り返しやるという日本のスタイルとは大違いです」とHanaさん。障害のある子どもや、ジプシーの子どもが同じクラスにいるなど、多様な教室で、子ども達も自然と他者の個性を受け入れ、それだけでなく、「自分の個性を発揮しても恥ずかしくないんだ!」という意識が育まれています。「いつか子ども達は社会に飛び込んで、1人で生きていかないといけない。そのためには、子どもの頃から色々な経験をして、強く育ってほしい」というのが、イタリアのママたちの方針のようです。
「電車などの公共交通機関で子どもがさわいだりぐずったりした時に、イタリアでは周囲もおさめるのを手伝ってくれます。子どもや母親に話しかけてくれたり、知らない人でも、他人でも助けてくれます。なので、全く気まずい思いはしません」とHanaさん。むしろ、日本の実家に帰省した際には、おとなしく電車に乗っている子ども達を見て驚く事もあるそうです。行儀がいいなと思う一方で、子どもらしいハツラツとした感じがないなと思う事も。イタリアでは、度を越して騒いでいる子どもには、他人の子であっても、大人が普通に注意するそうですが、ちょっと泣いた、ぐずったくらいは特に気にしないそうです。「だって大人も結構うるさいですからね(笑)」とのこと。公園などでは、他人であっても子ども同士がすぐに一緒に遊び始めたり、大人もそれにつられて立ち話を始めたり。子どもが同じ保育園や学校に通うママ友には、「今日、おむかえ間に合わないから、うちの子一緒に連れて帰って」と気軽にお願いできるなど、「知り合いだから」「他人だから」という分け隔てがなく、楽に付き合えるのも、イタリアの魅力との事でした。
いかがでしたでしょうか?
個性尊重型の教育。「社会」と「こそだて家族」の、良い意味で“緊張感の無い”関係性。イタリアでの子育てに、多くの魅力を感じました。今、日本の教育も「生きる力重視」へと移行しつつあります。マナーの良さなどは日本の美徳としつつも、多様な個性を受け入れ、育んでいける社会を目指していきたいものです。
2000年博報堂入社。2004年よりPR職として、多数のマーケティングPRや企業広報活動サポート、トップエグゼクティブ向けのコミュニケーショントレーニングに携わる。2009年に長女、2014年に長男を出産。2回の産休・育休・職場復帰、育児と仕事の両立・小1の壁など、育児を中心とした様々な経験を活かして、こそだて関連ブランドのPRにも多数関わっている。