博報堂DYグループのCSRは、生活者と社会の中に「新しい幸せ」を生み、つなげ、ともに広げていくことを基本理念として掲げています。このインタビューシリーズでは、生活者一人ひとりが、自分らしく、いきいきと生きていける社会の実現を目指し、日々の仕事の先に存在する社会課題に対して自らの「クリエイティブの力」「伝える力」「一人ひとりの個性」を主体的に発揮しながら取り組んでいる社員たちの声をお届けします。
大石
博報堂では、「ニュースリリースの書き方セミナー」や「生活者にNGOを理解していただくための認知向上プロジェクト」など、2013年度よりJANICの広報戦略のサポートを行ってきました。JANICの中期事業戦略の策定を受けて、2016年から3ヵ年のコミュニケーション戦略およびコンセプト等の立案を博報堂がお手伝いしたことがきっかけとなり、僕らはそのコミュニケーションコンセプトを体現するロゴマークやスローガン、ステートメントの制作に携わりました。
実はそこで一旦プロボノは完了する予定でしたが、日本人の多くがまだSDGsのことをあまり知らないという事実を知り、「この目標をひとりでも多くの人に知ってもらいたい」「目標の達成に向けて行動してもらいたい」という想いから、理解促進ツールの作成を思い立ちました。
伊藤
SDGsには、世界中どこにいても、もちろん日本においても、誰もが取り組むことができるゴールが提示されています。当時、僕自身もSDGsについてほとんど知識がなかったのですが、17目標と169のターゲットを読みこんでいくと、実は、僕たちが生活の中で実践できることがたくさんあると思いました。そこで、生活のさまざまなシーンでSDGsを想起させる方法を大石くんと話し合い、張り紙という発想にたどり着きました。
大石
「注意!」「~お願い~」など、その生活シーンにおいて大切なことが張り紙に書いてあるのをよく見かけると思います。「ひとこと多い張り紙」では、普遍的で誰もがすぐに理解できる言葉を使い、SDGsが示すゴールに取り組むことの大切さに気付いていただけるようなひとことを入れました。
伊藤
たとえば、目標13の「気候変動に具体的な対策を」にあたる張り紙には、「地球の気温が年々上昇しているので、冷やし中華はじめました」と書いてあります。お店で冷やし中華を提供することによって地球の気温が下がるわけではありませんが(笑)、空調の温度調節の近くにこのポスターを張ることによって、地球温暖化について考えるきっかけになるかもしれません。
大石
目標16の「平和と公平をすべての人に」や目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」はどちらも非常に大きなテーマですが、日々の生活で普段使われている言葉から課題を捉えていくことを試みました。世界中の一人ひとりの目標だからこそ、生活者との距離感を大切にしています。
伊藤
張り紙の判型はA4とし、17枚とも白い縁のあるデザインにしたのは、家庭用プリンターで出力してもデザインが欠けないようにするためです。手作りっぽい仕上がりにもこだわりました。オフィスや自宅、図書館など、具体的にどういったスペースに張れるかも想像しながら作りました。
そして、自由にダウンロードできるようにサイトで公開すれば、誰もが気に入った張り紙をプリントアウトでき、職場や学校、店舗などに張ってもらえれば、張り紙の中のメッセージが多くの人に届けられると考えました。
大石
広告にはそもそも、商品やサービスと、生活者や社会とをつなぐ役割があります。JANICのロゴリニューアルから始まったこのプロジェクトでは、貧困や紛争など社会課題解決に真っ向から取り組むJANICの想いを生活者にとってわかりやすいメッセージにして発信していくことにより、SDGs達成に向けた動きを日本国内においても大きくしていくことを目指しました。
伊藤
社会的課題解決に向けた活動はとても時間がかかります。「ひとこと多い張り紙」は、SDGs達成に向けて、ずっと使い続けていただけるツールだと思います。この張り紙が誰かの視点を変え、行動を変える手助けになることを願っています。
大石
JANICとの取り組みを通じて、「SDGsで世の中を変えていこう。その中心的な役割を果たそう」という情熱を感じました。その情熱をできるだけシンプルで生活者に伝わりやすいクリエイティブで表現するというのは、生活者発想を掲げる博報堂の強みだと思います。私たち広告会社のスキルを、これからも社会課題解決に活かしていきたいという想いを強くしています。
2008年 博報堂入社。
TBWA\HAKUHODO アートディレクター。広告のアートディレクションを中心に、企業のCIやパッケージデザイン、CMやミュージックビデオの企画など幅広く制作。国内外受賞歴多数。
2014年 博報堂入社。
TBWA\HAKUHODO コピーライター。国内外のさまざまな企業のクリエイティブを担当。言葉からアイデアを発想することを意識している。