こんにちは。ヒット習慣メーカーズの濱谷です。
いよいよ年末が近づいてきました。実家が遠方の方は、年末の帰省のチケットを取り始めた方も多いのではないでしょうか。私は祖母や両親、弟など家族一同関西なので、年末に帰って会うのが今から楽しみです。特に祖母は、書道や歌など趣味を謳歌して日々元気に暮らしており、そんな姿を見ると、自分も元気で頑張らないとな、と毎年思います。
そんな今週のテーマは、「肉食系シニア」です。若者は草食系といわれることが多い昨今ですが、シニアは一転して、肉食系で自らの本能に忠実に消費している、という習慣です。
では、具体的にどんなものがあるのでしょうか。「食」、「恋愛」、「運動」に分けて、肉食系シニアの習慣を見てみましょう。
まずは「食」です。
最近、焼肉屋やステーキ屋がシニアで賑わっています。実際、厚生労働省の調査でも60-70代の肉摂取量は年々増えています。
60-70代の肉摂取量の変化(単位:g)
とあるステーキ屋では、高齢者客が増えていることから、行列時には優先的に入店できるシニアカードを用意したり、入れ歯メーカーとコラボしたキャンペーンを実施しています。Twitterで、このステーキ屋に行っているシニアの投稿を見てみると、息子と一緒に450グラムの肉を頼んでいたり、炭酸飲料と肉を楽しんでいたり、健康というよりも、本当に肉が食べたくて来店しているようです。
袋麺/カップ麺にも肉食系シニアの消費は及んでいます。カップ麺というと、単身若者の晩御飯やビジネスマンの夜食というイメージがありましたが、そのカップ麺をお椀で食べる袋麺として売り出したところ、シニア層に売れているようです。シニアというと、蕎麦などあっさりした味を好むと思いがちですが、こってり味のラーメンも好んで食べられていることが分かりました。
次に、「恋愛」の分野です。
最近の若者は恋愛に積極的でないとよく言われますが、シニアは恋愛に積極的になっています。弊社のデータで見ても、60代で「充実した人生のためには何度結婚しても構わない」と答える割合は、直近2年で5ptも増加しています。
充実した人生のためには何度結婚しても構わない(単位:%)
熟年離婚、熟年結婚も増えており、それに呼応する形でシニアの婚活サイトや婚活バスツアーも盛り上がりを見せていますが、今では、マッチングアプリを使うシニアも増えています。ある調査では、50代のマッチングアプリのMAU数(月間利用者数)は、2016年9月時点でも約6万で、2013年時点より13.8倍になっています。この調査は50代までになっていますが、60代以上でも伸びていると予想されます。さらに、スマホ保有が年々増えている2018年の今、マッチングアプリを使うシニアはさらに増えているのではないでしょうか。
マッチングアプリで交際相手を見つけたシニアのブログを見てみると「シニアでも新しい恋がしたい!」と切実な想いが綴られていました。
年代別のマッチングアプリのMAU数の変化
(2013年11月と2016年9月を比較)
最後に、「運動」です。
シニアの運動というと、ウォーキングやジョギングというイメージがあるかもしれませんが、最近は筋トレに勤しむシニアが増えています。スポーツジムの新規入会者に占める60代以上の割合は年々増えており、会員数が200人以上いるのに平均年齢が60歳のジムもあるようです。さらに、シニア向けの雑誌で「筋肉体操」の特集が組まれていたり、定年後の筋トレに関する本が出版されていたり、シニアの筋トレが盛り上がりを見せています。
ジムで筋トレに励むシニアの方のコメントを見てみると、筋肉がつく感じが嬉しい、社交ダンスできれいに踊れるようになって男性に声をかけられたい、など運動不足の解消だけでなく、モテや達成感といった積極的な理由で筋トレをしているようでした。
では、なぜこのような、肉食系シニアが増えているのでしょうか。
まずは、「シニアはこうあるべき」という周囲の目から解放されたい、という欲求があると思います。博報堂新しい大人文化研究所の調査によると、60代男女で「シニアと呼ばれて自分のことだと感じる」割合は減少の一途をたどっており、シニアという目で見られたくない意識が見て取れます。このような、凝り固まったシニア像で見られることに疲れて、本能に忠実な消費に向かっているのかもしれません。
次に、生きていた時代背景があると考えます。今の60代は若い頃にビートルズやミニスカートなど、欧米の文化をいち早く取り入れ、働き盛りの30代にバブルを経験し、憧れを手に入れてきた世代です。以前、シニアの方に生きてきた歴史をインタビューしたところ、欲しいものを手に入れてきた過去の時代のことが、鮮明に記憶に残っている方が多かったです。子育てや会社勤めから解放された今、このような時代を生きた影響もあり、自分のやりたいことを重視して生きるようになっていると考えます。
さて、今までのヒット習慣予報と同様に、「肉食系シニア」にも色々なビジネスチャンスがあると考えます。
こんな記事を書いていたら、肉食系シニアの方を見習って、周りの目を気にせず、自分のやりたいことに忠実にお金を使ってみてもいいかもしれないな、と思いました。
2010年 シンクタンクに入社し、2014年 博報堂に中途入社。
ヒット商品やヒット習慣を作りたいと願いつつ、日々マーケティング/コミュニケーション立案に取り組む。2000年代のドラマ好きで、おすすめは「僕の生きる道」と「華麗なる一族」。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。