こんにちは。ヒット習慣メーカーズの中川です。
私が子どもの頃、父親の仕事の関係で、全国を転々としていました。静岡、仙台、東京、盛岡、名古屋と住み渡りまして、今となってはいい思い出ですが、当時は、気候も違うし、食べ物も違うし、結構戸惑ったのを覚えています。東京の幼稚園から引越しをして、盛岡の小学校に入学した初日に、男子はみんな長ズボンなのに僕だけが素足に半ズボンをはいてきて、とても恥ずかしかったのを覚えています(笑)そんな転々とした経験があるからなのか、今になって、いろんな地域で暮らしてみたいという欲求が芽生えてきました。
さて、今回のテーマは「住所不定ライフ」。
ひとつの場所に定住するのではなく、気の向くままに、住む場所を変える自由な生き方のこと。よく持家派か賃貸派かという議論が繰り広げられますが、そこよりもう少し先をいった暮し方だと思います。そんな住所不定ライフ、いくつかの事象が生まれてきているようです。
まずは、「サブスクリプション型のホテル」。
国内外で、月額制で複数のホテルに泊まることができるサービスが生まれています。日本で生まれた全国のホステルに泊まり放題のサービスは、月1.5万~2.5万円で東京、千葉、札幌、京都、大阪の5都市で多拠点居住ができてしまうもの。掃除もしなくてすむので助かりますよね。それ以外にも、光熱費込の月4万円で、房総、真鶴、湯河原、小田原、熱海、伊豆、箱根、葉山、湘南など自然や温泉を楽しめる魅力的な地域にある空き家、空き別荘に泊まり放題のサービスも展開される予定です。日々の暮らしの中に自然を取り入れていきたい人も、多いのではないでしょうか。
また、海外を中心に「バンライフ」がじわじわ拡がっています。
家を手放し、車のバンに荷物を詰め込んで、移動しては泊まり、移動しては泊まるを繰り返す暮らし方。Instagramで「#vanlife」というハッシュタグと共に拡がっていて、男性のみならず女性も含めて、とてもオシャレな暮らしが垣間見えます。バンライフを楽しむ人は「vanlifer」とも呼ばれていて、ひとつのライフスタイルとして定着しつつありますね。海外ではキャンプのように海辺や森などの大自然に囲まれて泊まる人が多いですが、日本では都市型バンライフをおくる人もいて、その際は、どこの駐車場で停泊するかが課題となっているようです。タイムパーキングや24時間営業のスポーツジムの会員になるなど、いろんな工夫をしているようです。
「vanlife」検索推移(すべての国)
最後に、「“住所不定”というコンセプトのファッションブランド」の登場です。
ミニマムな装備で転々と生活をする人が増えていくという社会の兆しの中で、ファッションのあり方を考え直す実験的なブランドも生まれました。移動を意識した耐水性、耐久性、収納性に優れた服やバッグなどを展開しています。住所不定ライフを送る人のみならず、なるべく手ぶらで過ごしたい人などミニマムな装備でおでかけしたい人にもマッチしているのではないでしょうか。
このような「住所不定ライフ」が増えている理由として、3つ挙げられます。1つ目は、持ち物のミニマム化。暮らしに必要なモノを必要最小限にとどめる傾向です。家を持つよりも転々と移り住み、身軽に生きたい人が増えているのでしょう。2つ目は、欲求の分散化。忙しいときは会社の近くで、余裕のある時は自然の中でなど、その時々の状況に合わせて住む場所を変えたい気持ちが高まっているのではないでしょうか。3つ目は、マルチコミュニティへの帰属欲求。定住した場所だけで関わりを持つのではなく、移住した先の各地域ごとに関わりを持つことで、新しい出会いや新しい取り組みにつなげていきたい人が増えているのかもしれません。
このような「住所不定ライフ」が拡がることで、今までの定住ライフとは異なるニーズの高まりが考えられるため、新たなビジネスチャンスが予想されます。
日本には多くの空き家があるので、それを有効活用することで、多くの人がいろんな地域で生活して、異なる文化の人同士の関わりが増えることで、新しい何かが生まれる。日本国内だけでなく、海外も含めて、そんな波が拡がったとしたら、ちょっとワクワクしますよね。
メーカーの商品開発職を経て、2008年に博報堂中途入社。
マーケティング職として、日々お得意先や社会の課題に向き合っている。飲みながらいろんな業界の人と話をするのが好きだが、気づくとお酒に飲まれている。好きな落語家は五街道雲助師匠。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。