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ヒット習慣予報 vol.58 『沈黙コミュニティ』

2019.02.05
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの濱谷です。
寒い時期が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

僕はインドア派で、休日たまにカフェで仕事をすることがあるのですが、パソコンで仕事をしている人、本を読んでいる人、友人と語らいあっている人など、色んな人がいる中でも、妙な一体感があって、面白いなといつも思います。

そんな今週のテーマは、会話しない中で、コミュニティを感じられる場の「沈黙コミュニティ」です。え、コミュニティなのに沈黙なの?と思われる方が多いかもしれないので、詳しく説明していきますね。

最近、「会話禁止」がルールとなっているサービスが増えてきています。実際、「会話禁止」の投稿数はここ最近で伸びています。

「会話禁止」の投稿数の推移

出典)Topic finder

具体的には、話してはいけないクラブが話題になっています。行った人のSNS上のコメントを見てみると、「誰とも話していないけど、いつもより一体感が半端ない」や「単騎出陣でも気が楽だった」といった発言が見られました。クラブというと、社交性がある人が盛り上がる場というイメージがありますが、参加の敷居が下がり、会話が苦手な人でも1人で気軽に一体感を楽しめている模様です。他にも、とあるカフェは、入ったら会話禁止をルールにしています。こちらも同様に、行った人のコメントを見てみると、「1人でも入りやすい」、「静かに読書できる」という発言が多く見られました。1人で静かに、なら自宅でいいじゃないかと思ったりもしますが、みんなと同じ“場”を共有したいのかな、と感じます。

上記のように新しい施設やサービスだけでなく、昔ながらのものでも、会話しないけれど、コミュニティを感じられる場所が人気を集めています。

まずは銭湯です。ヒット習慣予報vol.51『湯ノベ〜ション』でも書いた通り、最近銭湯が人気を集めています。コラム本文にもある通り、「いろいろな人がいるので、緩やかなつながりが生まれて心地よい」ことが銭湯の魅力だと感じる人もいるようです。僕自身、スーパー銭湯によく行きますが、炭酸泉やサウナに見知らぬ人と入っているだけなのに、ちょっとした仲間感がある気がしますし、もし、銭湯ががらんとしていたら、行かなくなる気がします。

次に、図書館です。昨年、ヒット習慣メーカーズで実施した「第一回 全国習慣実態調査」では、100個近くある習慣の内、15位に「図書館に行くようになった」がランクインしています。学年が進み勉強するようになっただけかもしれませんが、特に若年ではこの傾向が強く、10代では、7位に入っています。前述の調査では、始めた習慣のメリットやクセになるポイントを自由回答で聴いており、「似た人がいる」、「地元地域とのつながりができる」、「色んな世界の人が感じていることを知ることができる」という声も見られました。

では、なぜこのような、「沈黙コミュニティ」が増えているのでしょうか。
“社会的な背景”に、“現代人の生活意識”が掛け合わされて、『沈黙コミュニティ』が生まれていると考えます。
“社会的な背景”に関しては、近年、地域住民同士のつながりがなくなったり、会社の仲間で飲みに行ったり休日遊んだりすることがなくなるなど、コミュニティの希薄化が起こっています。実際、博報堂生活総研の生活定点データで見てみると、「参加しているグループ・団体がある」と回答する割合は、1992年から20pt以上低下しています。このような社会背景の中で、何らかのコミュニティを持ちたい意識が高まっていると考えます。

「参加しているグループ・団体がある」と回答する割合の推移(単位:%)

出典)博報堂生活総研「生活定点」

“現代人の生活意識”に関しては、2点あると思います。1つ目として、スマホ中心の生活になる中で、オンラインでのやり取りが多くなり、リアルでの会話が苦手になっている人が増えている気がします。2つ目が、余計な気を遣いたくない、という意識です。最近の若者は周りの空気を必要以上に読むと言われることとも関係しますが、コミュニティに参加する時に、何か話さなくてはいけないというプレッシャーを感じたくないのかな、と思います。
このような背景の中で、気を遣わなくてすむ「沈黙」の中でコミュニティを感じられる場やサービスが流行っていると考えます。

◎「沈黙コミュニティ」のビジネスチャンスの例
■遊園地に会話禁止エリアを設けて、1人来訪を促す
■会話・縦ノリ禁止のライブを開催する
■会話が苦手な人向けの、会話禁止のカルチャースクールを開催する
など。

会話禁止のコミュニティ、いかがでしょうか。皆さんも、興味があれば是非一度試してみてください。

濱谷 健史(はまたに・けんじ)
第三プラニング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2010年 シンクタンクに入社し、2014年 博報堂に中途入社。
ヒット商品やヒット習慣を作りたいと願いつつ、日々マーケティング/コミュニケーション立案に取り組む。2000年代のドラマ好きで、おすすめは「僕の生きる道」と「華麗なる一族」。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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