こんにちは。ヒット習慣メーカーズの馬場です。
いきなり私事ですが、昨月引っ越しをしました。マンションなので、近くのお部屋の方に、ご挨拶に伺おうと思っていたのですが、何度尋ねても不在のお部屋があり、結局回り切れないままひと月が経過してしまいました。最低限のご近所づきあいは大事だと思いつつ、なかなか難しいですね。
さて、今回のテーマは、そんなご近所づきあいに関する「ネオご近所さん」という習慣を取り上げたいと思います。「ネオご近所さん」とは、主にインターネットを介して、昔ながらのご近所さんのように、身の回りの家事や育児を手伝ってくれたり、物事を教えてくれたりする人と繋がり、お世話になる習慣のことです。
具体的な例を3つほどご紹介します。
1つ目は、高齢者の就業支援の仕組みを通じて、育児の手伝いや旅行中のペットのお世話などをしてもらうケースです。今や、高齢者であってもスマホを使いこなす時代なので、今後ますます増えていくケースなのではないかと思います。実際、Googleトレンドを見てみると、今年度に入ってから、「シルバー人材」という高齢者の就業に関する言葉の検索数が増えていることがわかります。
2つ目は、共働き世帯向けに地域の公共団体等が提供するファミリーサポートの仕組みを通じて、家事や育児、介護などの手伝いをしてもらうケースです。こちらは、高齢者に留まらず、18歳以上の意欲ある方であれば、誰でも手伝いをすることが可能です。
3つ目は、教える先生と空きスペースをマッチングするスキルシェアサービスなどを活用することで、ご近所さんから、英会話、手芸、メイクノウハウ、ビジネススキル、和服の着付けなど、様々なことを習うケースです。近所の少し詳しい人にものを習うというご近所づきあいのインターネット版が形になっています。
私の母も、公共団体の仕組みを活用して、仕事が忙しいお母さんの代わりに、幼稚園のお子さんを迎えに行くというお手伝いをしています。予定がつくときだけ、短時間お子さんの相手をするという内容で、普段交流できない小さい子供とお話しできて楽しい、と言っていました。もちろん、アルバイト代のような形でのお金もいただいているそうですが、それ以上に助ける側にとっても、ありがたい習慣になっていると感じました。
では、なぜ「ネオご近所さん」が新しい習慣になるのか。理由を考えてみました。
まず一つには、高齢者の増加に伴う、高齢者就業支援の仕組み化が挙げられます。高齢者の方が、就業しやすい条件を考えた結果、家から近くでできて、経験豊富な領域ということになっているのではないかと思います。
他には、隙間時間労働の一般化も一因です。今回の例だけでなく、空き時間でフードデリバリーをすることで、報酬を得られる仕組みなど、様々な形での隙間時間労働が出てきており、その一つの在り方として、「ネオご近所さん」が出てきていると考えられます。
最後に、世の中全体として近所の連帯自体が弱まる一方で、ご近所さんという信用できる人たちとの繋がりから得られる恩恵へのニーズは残存しているのではないかと思います。育児や家事の代行にしても、子供や家のことを時に安心して任せられる人の存在は貴重です。「ネオご近所さん」の習慣では、インターネットを介してではありながら、公共性の高い組織と自主的に手伝いを申し出ている人々という、信用のおける仕組みによって、そういった安心感を担保しているのではないでしょうか。
最後に、「ネオご近所さん」のビジネスチャンスについて考えてみました。
昔ながらのご近所づきあいというのは、減ってきているかもしれないですが、令和の時代に合わせた、新しい人と人との繋がりが広がっていくといいなと、素直に思います。
2016年 博報堂に入社。
入社以来、データマーケティングに従事。業務で培った知見を活かし、新たな習慣を生み出すべくヒット習慣メーカーズに参画。
新しいマンションで、住民同士の挨拶が非常にしっかりしていることに対し、いいマンションだなと日々感じている。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。