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【コンテンツファン消費行動調査2019分析リレーコラム】#2(音楽編)「ストリーミングサービスが生み出した新たな音楽消費サイクル」

2019.09.12

盛り上がる音楽市場

弊社グループのオリジナル調査『コンテンツファン消費行動調査2019』(2019年2月実施)の結果を見ると、最も支出喚起力が大きいカテゴリは「音楽」で、8,930億円となった。この数字は、2位「レジャー・ライブイベント」の5,984億円と大きく差をつけており、圧倒的である。
特に、音楽カテゴリの中でも支出喚起力が大きかったのは「音楽ライブ・コンサートへの参加」で、1,864億円となった。「音楽フェスティバルへの参加」の市場規模218億円と合わせると、ライブ・フェス(=音楽イベント)の市場規模は約2,000億円にものぼる。
近年盛り上がりを見せる音楽市場について、コンテンツファン消費行動調査2019のデータを用いて見ていきたいと思う。

ストリーミングサービスの普及により音楽消費に変化の兆し

ライブ・フェスを音楽の”ハレ”消費とすると、日常的な音楽利用である”ケ”消費にも変化が起きている。それは、ここ数年で徐々に普及してきた音楽ストリーミングサービスによるものだ。日常的な音楽視聴プラットフォームとしてストリーミングサービスが普及していくにつれて、リスナーの音楽消費にどのような変化が起こっているのだろうか?ストリーミングサービスとライブ・フェスの関係性とは?コンテンツファン消費行動調査2019のデータからこれらの疑問を紐解いていきたい。

ライブ・フェスとストリーミングサービスの関係性は?

ライブ・フェス利用者とストリーミングサービス利用者それぞれについて性年代構成比率(図1)を見てみると、ストリーミングサービスユーザーは10-30代男性、ライブ・フェスユーザーは10-20代女性の比率が比較的高く、いずれも若年層比率が高いことが共通している。つまり、これからの音楽マーケティングを考えていくには、ライブ・フェス、ストリーミングのどちらも重要なファクターであることを示している。

【図1】

※「全体」は、「過去1年間に音楽コンテンツを利用したことがある」と答えた人(以下同様)

フェスだけに注目してみても、SUMMER SONICやROCK IN JAPAN FESTIVALなど、やはり20代中心に高い参加率となっていることがわかる。

【図2】

一方、ストリーミングサービス利用率(図3)を見てみると、まだサービスが乱立状態にあるためか、どのサービスも音楽利用層全体の利用率は概ね10%以下となっている。実際に、ストリーミングサービスユーザーの平均利用サービス数は2.4個と、複数サービスを利用している傾向にある。そして、やはりどのサービスも若年層ほど利用率が高く、特にLINE MUSICは10代の5人に1人が利用していることがわかる。

【図3】

ライブ・フェスとストリーミングは相性が良い?

おもしろいことに、実にストリーミングサービス利用者の2人に1人はライブ・フェスに参加していることがわかった。さらに、今後予定されているフェスについての参加意向を聴取したところ、ストリーミング利用者はライブ・フェス利用者よりも参加意向が高い結果となった。

【図4】

一方、ストリーミング利用者の音楽との出会い方を見てみると、ストリーミングサービス の特性をうまく生かせているように見える。「新しいアーティストや楽曲に出会ったきっかけ」に、ストリーミングサービスを挙げている割合が高いことや、「今まで利用していなかった新しいコンテンツを利用することが増えた」「サービス内のレコメンド・おすすめを利用することが増えた」と答える割合が高いことから、様々なアーティストに触れやすいストリーミングサービスを利用して、好きなアーティストに出会えているといえる。

【表1】

※カッコ内は全体差分を示す

【表2】

上記のように、ストリーミング利用者は、ストリーミングサービス内で新たに好きなアーティストを複数発掘し、そのアーティストたちを一気に見られるフェスに参加するという流れができつつあるように見受けられる。最近では、FUJI ROCK FESTIVALやROCK IN JAPAN FESのような個々のフェスごとのプレイリストも存在しており、フェス参加者がアーティストの予習やフェスに向けて気持ちを高めるために聴いていたりもする。これは、ストリーミングサービスからフェスへの誘導の顕著な例だろう。このように、音楽を”消費”する場であるフェスの入り口としてストリーミングサービスが機能しているといえる。一方で、フェスに参加することで、新たに好きだと思えるアーティストに出会い、ストリーミングで聴くこともある。さらに、フェスとストリーミングだけで閉じることなく、ライブやフェスでは、グッズやCDを購入したりと、さらなる消費につながる。このような音楽消費サイクルによって、音楽市場は今後も盛り上がりを見せるだろう。

谷口 由貴
博報堂 研究開発局研究員

2017年博報堂入社。研究開発局で研究員として、データを活用したマーケティングサービス開発、生活者DMPを活用した生活者研究を行っている。注力研究領域は若者研究やAI技術を用いたマーケティング研究。また、コンテンツビジネスラボのメンバーとして、コンテンツ消費行動研究を行なっており、音楽分野担当として音楽ヒット予測等にも従事。

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