いまから400年前に描かれた傑作に、私たちが一体どう関わることができるのだろうか?
hakuhodo-VRARチームに課せられたミッションは、日本を代表するアート作品、俵屋宗達の手による国宝「風神雷神図屏風」に向き合うこと。この傑作を、現代のデジタル技術と私たち博報堂グループのクリエイティビティを発揮することによって、作品の品位を損なうことなく、生活者の美術鑑賞の仕方を更に深く、楽しく、一人一人の想像力を掻き立てるものにアップデートすることである。
「文化のデジタル・トランスフォーメーション」共同研究事業と名付けられたこのプロジェクト。2017年7月、キックオフとなる説明会を風神雷神図屏風の所蔵者である京都建仁寺にて行った。祇園にほど近く、国内外から多くの観光客を迎える建仁寺は、京都を代表する文化スポットでもある。禅の思想をあらわした建築物や庭園、そして風神雷神図屏風をはじめとして、すぐれた絵画や屏風絵。800年ものあいだ、日本文化を擁護してきたともいえる建仁寺の奥村部長は、デジタル技術の活用により、古い文化の奥深さが更に追及されることに期待をかける。
「文化財とMixed Reality(複合現実)技術。貴重な文化財に、立体的に情報レイヤーを重ね、歴史観光や、美術学習を、実空間の中で体験可能なものにしたい」とhakuhodo-VRARの狙いを、博報堂グループのプロジェクトリーダー須田和博がプレゼンテーション。技術的に採用したのは、マイクロソフトのホロレンズ。その技術ポテンシャルを引き出すめに、マイクロソフト本社があるシアトルにみずから赴き、開発者と日本発グローバルに向けた事業のために情報を収集し、議論を重ねている。
須田は、「京都にはホンモノのすごさがあり、ここに来てオリジナル作品の持つ価値を、自分で目にして五感で感じることがベスト。映像も、VRも、その場に行かなくても楽しめてしまうが、MRは実物に情報レイヤーを重ねて、〝体験コンテンツ“にするのが特徴。ホンモノの良さを更に高めることがMRで実現できると考えた。」と語った。
「実現したいアイデアは山のようにある。例えば俵屋宗達が解説役として登場したり、尾形光琳や酒井抱一など風神雷神の他の作品や、絵だけではなく彫刻作品と重ね合わせてみたり。そのアイデアの1つが、この作品に込められた五穀豊穣というテーマ。この絵に込められたという、自然への畏怖と感謝の想い。種を広める風神と、雨の恵みをもたらす雷神の思想を可視化する、というのも面白いと思った。」
「風神雷神図屏風」に込められた、神々の足元の雲が踊り出し、雷と雨により大地に豊かさがもたらされるストーリー、五穀豊穣というテーマを立体的に表現する。
「風神雷神図屏風」に夢中になった作家の夢と、その集大成を、世界中の生活者一人一人が深く耽溺することができる未来がすぐそこに来ているかもしれない。
ホロレンズによって、どんな世界が表現されるのだろうか?作品は今年中に完成する予定。
東京から日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 Windows & デバイス本部長の三上智子氏も駆けつけてくださり、ホロレンズ技術の大きな可能性とこの共同研究への期待を伝えていただいた。
また、京都市役所から、産業観光局 観光MICE推進室長の横井雅史氏が来賓として参列。「京都には、年間5500万人の観光客が訪れている。デジタル技術を活用したホスピタリティの向上に、市としても大いに期待を寄せたい。」とエールを送っていただいた。
京都から世界へ。
「本物の良さ」は、そのままに。「情報体験」を付加し興味と探求をうながす。hakuhodo-VRARは、風神雷神図屏風を皮切りに、世界中の文化財や、美術館・博物館の体験をアップデートしてゆく。