博報堂のAPAC共同チーフクリエイティブオフィサーのヤン・ヨウが、2018年6月18~22日までフランスのカンヌで開催されたカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル2018(以下:カンヌライオンズ)でインダストリークラフト部門の審査員長を務めました。博報堂からカンヌライオンズの審査員長が選出されたのは今回が初めてです。
今年新設されたインダストリークラフト部門では、「美しい広告ソリューションを提供し、クリエイティブなアイデアを実行するために求められるクリエイティブの芸術性、才能、技能を高く評価」し、「クリエイティブなテクニックを応用する中で専門知識とビジョンを実践している」エントリー作品を表彰します。
ヤンは様々な国籍、経歴を持つ9人の審査員で構成された彼のチームと共に、5日間にわたって約1,700作品を丹念に吟味し、グランプリ、金賞、銀賞、銅賞の受賞者を選出しました。
■審査基準
ヤンは、インダストリークラフト部門の審査の基準は、「どんなアイデアか?クラフトによって、そのアイデアが昇華したか?である」と説明しています。
「アイデアがなければ、単に美しい作品で終わってしまい、ショートリストにも残りません。私たち審査員が共感し、『同じようなことをやってみたい』と思ったら次のレベルに進みます。『その作品は私たちを嫉妬させるものか?』『自分のクライアントには見せるのが怖いか?』『これ誰がやったの?!』と思うかどうか。そうであれば金賞です!さらに、『信じられない、私は絶対できない!』と思ったらグランプリ!という判断をしました」と語りました。
■インダストリークラフト部門で最初のグランプリ受賞作品
インダストリークラフト部門初のグランプリには、オグルヴィ・シカゴが制作したSC JohnsonのKiwi Shoe Careの印刷広告、「First Steps: Ali」が選ばれました。これは4名の著名なアメリカ人の靴の現物を発見し、ストーリーを語るという慎重に作り込まれ研究されたシリーズキャンペーンの一部で、モハメド・アリのボクシングシューズをテーマにした作品です。他にもアーネスト・ヘミングウェイやエイブラハム・リンカーン、アメリア・イアハートらの靴を紹介したシリーズが作られました。
ヤンは、「モハメド・アリの肖像は使用されていませんが、文章を読むと彼がリングの周りを踊っているのを感じ取れます。匂いまで感じられそうです。ツイートが無造作に放たれる時代に、コピーライティングの力を認識できた点が素晴らしいと思いました」と講評で語りました。
■「銀」「銅」も、グランプリや金と等しく讃えたヤン
今年のカンヌライオンズの授賞式では、グランプリと金賞のみを発表し、ステージ上でトロフィーを渡す授賞方式がとられました。しかしヤンは、壇上で『銀賞と銅賞も同じように称えるべきである』という強い思いを述べた上で、会場に着席していた銀賞と銅賞の受賞者達をその場で立たせ、彼らにも祝福の言葉を述べました。
毎晩行われる授賞式で、各部門から何人もの審査員長が登場しましたが、このような思いをオーディエンスの前で述べ、実行に移した最初の審査員長となりました。
■審査委員長の役割
ヤンは、「作品のほとんどは、私以外の9人の審査員が審査しました。私は審査には加わらず、ただモデレーターを務めました。話し合いが討論に発展した場合のみ、自分の見解を伝え、議論を前へ進めていきました」と、審査中に自分がどのような役割を果たしたのか説明しました。
インダストリークラフト部門の審査員の一人は、
「ヤンは、全員に発言を促してくれる素晴らしい審査委員長でした。私たちが発言しなかった時には、ヤンが答えやすい質問をしてくれます。これまで何度も審査員をやりましたが、ディスカッションの質を考えても、最高の審査経験となりました」と語りました。
世界各国から集まった優秀な審査員達を質の高いディスカッションに導き、最終的にベストな作品を選出するという重責を負う審査員長は、クリエイティブリーダーとしての資質がおおいに問われる任務です。
チームメンバーからの信頼も勝ち取ったヤンは、博報堂初のカンヌライオンズ審査員長という大役を無事つとめあげました。