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【博報堂生活総合研究所】みらい博2019「#みんなって誰だ」を開催
-生活総研ウェブサイト内に特設サイトもオープン

2019.03.18
#生活総研
博報堂生活総合研究所は、恒例の研究発表イベントとして、みらい博2019「#みんなって誰だ」を、1月30日(水)渋谷ヒカリエにて開催しました。

今回のみらい博は「みんなの未来」をテーマとして、個と個が自由につながり、[みんな]を自ら生み出そうとする、デジタル社会ならではの生活者の新しい「衆」のあり方を提言しました。会場には企業のマーケティング担当者や経営層、メディア関係者など、約800名が来場しました。

また、3月15日より、博報堂生活総合研究所のウェブサイト内に特設サイト(https://seikatsusoken.jp/miraihaku2019/)をオープンし、研究内容を公開しています。

本レポートでは、1月30日の講演の概略をご紹介致します。

みんなって誰だ?

まず石寺所長から、[みんな]という言葉の使われ方や、今回の研究での定義についてご紹介しました。

[みんな]という言葉の使われ方やイメージのされ方は生活者の中でも様々ですが、社会学上は
所属集団:自分が所属する集団としての[みんな]
準拠集団:判断の参考・指針にする=準拠する集団としての[みんな]
という2つの定義があります。
今回の研究では、生活者が「人と同じでいたい」「人と違っていたい」と考えるときの拠りどころであり、マーケティングやコミュニケーションの上でも前提となる、準拠集団としての[みんな]にフォーカスを当てました。

発表中の石寺所長

[みんな]を気にする意識の終わり

続いて、酒井上席研究員から、準拠集団としての[みんな]の変遷をご紹介しました。

現代は世帯やライフステージ、接触メディアなどの多様化が進んだ結果、[みんな]の共通項が成立しにくい、標準が崩壊した時代。その中で、浸透したのが「自分は自分、ヒトはヒト」という価値観です。
その結果、80~90年代には隆盛していた[みんな]と差をつけるための消費や、個性をアピールする記号としての消費が今、本格的に終わりを迎えようとしている(「差別化の終わり」)と分析しました。

発表中の酒井上席研究員

新しい[みんな]の兆し

そのような[みんな]の変遷を踏まえた上で、次のパートでは今起きている新しい兆しについて荒井研究員からご紹介しました。

SNSの#(ハッシュタグ)の分析からは、日本人は他国の人々に比べ、SNS上でも [みんな]の人並みを気にする人々であること、結婚式準備や出産準備など自分のライフステージにあった[みんな]を#を介して生み出していることが明らかになりました。
そして、これらの兆しの背景には、
数値化:[みんな]の規模や活動量を明確な数値で把握できるようになった
双方向化:参照するだけでなく、自分も[みんな]から参照されるようになった
特定多数化:[みんな]を構成する一人ひとりを特定できるようになった
という[みんな]の構造変化があります。
現代は[みんな]がバラバラで掴みにくいと言われている一方で、実は今ほど[みんな]がはっきりと捉えられる時代はなく、漠然としていた「みんなって誰だ?」の答えが明確に出せるようになっているのです。
この変化を、[みんな]の高解像度化と名付けました。

発表中の荒井研究員

6つの[みんな]が生まれる未来

次のパートでは再び酒井上席研究員が登壇し、高解像度化が進んだ未来に生まれる6つの[みんな]をご紹介しました。

今後、[みんな]を考える上で重要な未来の環境変化として、5Gによる通信の革命とそれによって本格化するIoT、そこで集められたデータを解析するAIという3つの技術革新があげられます。これらによって実現するのがIoH(Internet of Human)であり、今まで明かされなかった人々の行動や意識がリアルタイムに可視化・解析され、共有されるようになるのです。
そのような環境変化によって、次にあげる6つの[みんな]と、新たな準拠の仕方が生まれます。

タイミング が生む[みんな]
人々の行動の可視化によって、「所有の横並び」ではなく「行動の横並び」が新たな準拠の仕方に
気分 が生む[みんな]
人々の感情の可視化によって、「体験の横並び」ではなく「感情の横並び」が新たな準拠の仕方に
面倒 が生む[みんな]
選択をAIやシステムに任せることで、自己判断ではなく「他者判断」が新たな準拠の仕方に
異端 が生む[みんな]
個々人の強い熱量の可視化によって、分布の中央ではなく「分布の両端」が新たな準拠の対象に
故人 が生む[みんな]
行動や意識のデータが時代を超えて蓄積されることで、タイムラインではなく「アーカイブ」が新たな準拠の対象に
自分自身 が生む[みんな]
自分自身のデータが365日測定され続けることで、C to Cではなく「Me to Me」が新たな準拠の仕方に
こうして生まれる新しい[みんな]が、生活者の“選択基準”とビジネスを変えていくでしょう。

これからの日本と[みんな]

最後に再び石寺所長から、人口減少期にある日本の中での[みんな]についてご紹介しました。

古来、人間が差別化に向かったのは人口増大期であり、人口減少期には同質化に向かう傾向があったという学説があります。同質化はともすれば同調圧力を高める負の側面を持っていますが、では[みんな]は要らないのかというと、対話の共通基盤としてやはり重要です。
研究の過程でみてきた新しい[みんな]には、どれもその核に何がしかのテーマや課題があります。課題先進国の日本には、今後も多様な[みんな]が生まれていくでしょう。そして、今後は外国籍を持つ人々も日本の中に増えていきます。多様な人で、多様な課題を解決する[みんな]をつくる時代がやって来ようとしているのです。

講演でご紹介した内容は以上です。
また今回の講演では、来場者に随時質問を投げかけ、回答結果をスクリーンに映し出す参加型アンケートシステムを導入。会場の[みんな]とのインタラクションによって講演が進みました。

投票結果をリアルタイムに表示

講演終了後参加者からは、
・「みんな」という漠然とした言葉を追いかけた先に、これほどの時代変化を気づくとは思いもしなかった。
・巷にあるようなマーケティング論ではなく、テクノロジーを交えた新しい切り口を紹介いただけた。
・自社でも議論している「マス→個」について、解像度を上げてもらえる機会になった。
・今後のターゲティングに関する視点が変わりそうだと感じた。
・差別化が無意味になりつつあるという、時代変化を感じた。
などの声が多く寄せられました。

博報堂生活総合研究所は今後も、生活者のきめ細やかな調査研究を通じて、よりよい未来を提言する活動を続けてまいります。

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