THE CENTRAL DOT

BranCo!2019 ファイナルプレゼンテーション開催レポート

2019.03.28
#BranCo!#博報堂ブランド・イノベーションデザイン

BranCo!は博報堂ブランド・イノベーションデザインと東京大学教養学部教養教育高度化機構が共催する、“大学生のためのブランドデザインコンテスト”です。今回は、ファイナルプレゼンテーションとゲスト講演が行われた、ファイナルイベントの様子をお伝えします。

BranCo!とは
このコンテストは3~6名のメンバーが協力して、課題となるテーマについて様々な視点から調べ、その本質を考え抜き、魅力的な商品やサービスブランドのアイデアをつくりだして競い合う、チーム対抗形式となっています。

7年目を迎える本年のテーマは「暇」。一言に暇といっても、その意味するものは多様で広がりがあります。
現代人にとって暇とは何なのか?求められているのは暇をつくりだすブランドか?暇をつぶすブランドか?
さて、史上最多エントリーとなった今年、全国89大学・205チーム・837名の頂点に立ったチームはどのように考えたのでしょうか。

BranCo!の基本フレーム“リボン思考”

冒頭、東京大学大学院総合文化研究科真船文隆教授、そして博報堂ブランド・イノベーションデザイン宮澤正憲より、ご挨拶および「ブランドデザイン」に関する簡単なレクチャーを行いました。BranCo!では、博報堂ブランド・イノベーションデザインが業務でも使用している「リボンフレーム」を基本フレームとしています。これは多様な要素・情報を集める「Input」、情報と主観を統合する「Concept」、アイデアを広げる「Output」という3つのステップからなり、参加学生はこの基本フレームに従って、リサーチからアイディエーションまでを行ってきました。この3つに加え、「一貫性」「プレゼンテーション」が審査基準となっています。

暇と対峙するか、肯定するかに別れた決勝プレゼン!

そしていよいよ、205のエントリーチームから選ばれた6チームによるプレゼンテーション。当日午前に二次予選を勝ち抜いたチームだけが、このファイナルイベントの場でプレゼンし、決勝審査員から講評を得ることができます。
今年度の審査員は朝日新聞社マーケティング本部長 石田一郎氏、東京大学大学院総合文化研究科 真船文隆教授、博報堂取締役常務執行役員 北風勝、博報堂ブランド・イノベーションデザイン代表・東京大学教養学部特任教授 宮澤正憲、博報堂ブランド・イノベーションデザイン ブランドデザイン部長 竹内慶の5名です。

1つ目のチームは、多摩美術大学のメンバーで構成された「しいたけ」。このチームは、「暇」を目的のない時間と捉え、情報機器の普及によって目的のない暇が減少し、思わぬ出会いが起こりにくくなっていることに着目しました。そこで、「暇を通して、セレンディピティを提供する」というコンセプトのもと、何を売っているのかわからない、新しい出会いの出発地となるセレクトショップ「MICHI」を提案しました。

2つ目のチームは、慶應義塾大学のメンバーで構成された「しじみ汁」。このチームは、「暇」は取ろうと思っても簡単には取れないものであることに気づき、現代人がついつい休みを取るのを忘れてしまうPC作業中の時間に着目。そこで、「PC作業中に、暇を、まねく」というコンセプトのもと、時間が経つとデスクトップに強制的に猫の足跡が現れるソフトウェアと、それと連動し、触れることで足跡を消すことができる猫のぬいぐるみをセットにした「ひまねきねこ」というブランドを提案しました。

3つ目のチームは、東京大学、慶應義塾大学、青山学院大学のメンバーで構成された「あんぱんs」。このチームは、「たまり場」という、身近な“暇体験”に着目。渋谷でのフィールドワークを通じて、知らない人同士でも、暇を通じて繋がれることを発見し、暇を「人と人をつなぐ触媒」と定義しました。そして、「暇から始まる新たな出会い」をコンセプトに、1人ではできないような遊びを初対面の「暇仲間」と一緒に楽しめるアクティビティ施設「Co-Boring Space」を提案しました。

4つ目のチームは、多摩美術大学、首都大学東京、横浜国立大学、芝浦工業大学のメンバーで構成された「TEAMお豆腐」。このチームは、スマートフォンの普及によって、暇を感じる人が減少する一方で、 暇つぶしの質が低下していることに着目。待ち合わせで遅刻相手を待つ10分間を、「名著との出会い」を通して、人生を変えるような体験の入り口にする、というコンセプトのもと「お詫び本屋」という、待ち合わせに遅刻した人が、待たせてしまっている人に、お詫びとして名著を10分間分、プレゼントできる読書プラットフォームを提案しました。

5つ目のチームは、目白大学、一橋大学、慶應義塾大学、明治大学、武蔵野美術大学のメンバーで構成された「中央線」。このチームは、無目的に暇を「つぶす」ことと、目的を持って暇を「かみくだく」ことを峻別し、無目的な「暇」に目的を付与することで、退屈を避けられるのではないかと提起しました。日本旅行という大きな目的を持ちつつ、どうしても移動時間が発生してしまう外国人観光客をターゲットに、「旅のスキマの暇に“かみ”を」というコンセプトのもと、移動時間を有意義にする「折手元」という、折り紙として楽しめる駅弁の箸袋を提案しました。

6つ目のチームは、慶應義塾大学のメンバーで構成された「Neighbor助人」。このチームは、現在の暇つぶしが、満足なものになっていないことや、暇の脳科学的有用性などから、暇を有意義に使うためには、「暇を暇として過ごすべき」と提起しました。そして、暇つぶしではなく、暇を生かす(何もしない)習慣を広めるため、最も情報量・労力の要らない行動「ぼんやりング」をコンセプトとし、炎が人間の本能を喚起し、潜在的能力を引き出すこと、焚き火には人間が集まる場所というイメージが有ること、すでに炎を見る需要が動画配信サービスなどに見られることから、都市の屋上焚き火空間「燔屋(ぼんや)」を提案しました。

6チームのファイナルプレゼンテーション終了後には、ゲスト講演を開催。今年は昆虫食の伝道をされている「地球少年」こと篠原祐太さん、そして、アーティストの鈴木康広さんが登壇しました。

篠原さんの講演では、昆虫食を切り口に、既存の仕組みに囚われず、新たな冒険をしていくことの重要性をお話いただきました。特に、「桜の木につく毛虫を食べると桜餅のような香りがして、この虫が生きてきた人生ならぬ虫生を感じることができるんです。」といったエピソードとともに、「冒険は、日常の中にもある」という示唆をいただきました。また、講演後の質疑応答で「篠原さんに暇はありますか?」との問いに対し、「どこから虫が出てくるかわからないし、暇はないですね。」と笑いながら言い切り、暇にとって「日常のありふれた風景をどう捉えるか」が大きな変数になりうる、という気づきを会場に与えていただきました。

鈴木さんの講演では、「遊具の透視法」(2001)や「りんごのけん玉」(2003)、「まばたきの葉」(2003)、「ファスナーの船」(2004)といった代表作をご紹介いただき、その何気ない風景から浮かび上がる、遊び心ある作品の数々に、会場からは度々感嘆の声が上がりました。中でも、“作品はプロトタイプ”であり作品をつくりながらまた新たな視点が立ち現れる、「不完全性から可能性が生まれる」という言葉には、学生の顔にも驚きが見られ、これまでアイデアを模索してきた学生にとっても日常を独自の視点で捉え作品を生み出し続ける、鈴木さんならではの多様で柔軟な世の中への視点が伝わってくるご講演でした。

ゲスト講演も終わると、ついに結果発表。ドラムロールの音とともにまずは準グランプリが発表されます。
選ばれたのは「TEAMお豆腐」。「人に待たされる」という誰もが体験したことがある、日常の中の暇に着目し、普段のコミュニケーションツールを使って、自然な流れでサービスに誘導する、そしてその暇が有用なものになる、という価値転換を行ったことが高く評価されました。また、サービスの画面のプロトタイプを作成することで、実際の使用風景を想像させることができたことも、準優勝獲得の後押しになりました。

続いて、グランプリ。

選ばれたのは「Neighbor助人」。審査員の朝日新聞社石田氏からは、「プレゼンの最初に“私達は暇を愛しています”と宣言したのがよかった」と、暇を有用なものとして受け入れる姿勢が、他のチームとは異なっていたとコメントがありました。動画配信サイトで焚き火の映像が多く見られていることなど、新しい生活者の行動を論拠としながら、「なにもしない」をする、という行動に”ぼんやりング”という新しい名前を与え、行動デザインをしていることが高く評価されました。

ファイナリストに残った3チームにも盛大な拍手と賞状が送られ、熱気さめやらぬままイベントは終了しました。

なお、イベント終了後には参加者による懇親会も行われ、自己紹介カードを身に着けた博報堂社員に、プレゼンに対するフィードバックや、ブランディングに関して熱心に質問する学生の姿がとても印象的でした。また、ゲスト講演でも登壇していただいた「地球少年」こと篠原祐太さんの特設ブースでは、タガメをつけたお酒、カイコの糞を煮出したお茶が振る舞われ、学生や社員で賑わいを見せていました。

<BranCo!特別編 2019年6月に六本木ヒルズで開催決定!>
さらに、ファイナルイベント内において、BranCo!の拡大企画「BranCo!特別編」が開催されることが発表されました。普段のBranCo!で実践しているブランドデザインの発想法を引き継ぎながら、
実際のサービス開発を見越したイノベーションのチカラをみなさまに問う、今までとは異なる形のBranCo!です。
今回のテーマは、
「Digital Wellbeing -デジタルで実現する人々の新しいしあわせ-」
人々とデジタルテクノロジーがますます密接化する中で、その関わり方を問い直し、実際に「AIアシスタント」を用いた新しいブランドのアイデアを競い合っていただきます。通常のBranCo!同様博報堂社員のメンターがつくほか、実際のサービス開発手法を体験する場など、従来のBranCo!以上にみなさまの成長の機会をご用意し、今まで以上にパワーアップしたBranCo!として学生のみなさまにお届けします。

詳細はwebページをご確認ください。
https://branco.h-branddesign.com/special-edition/

FACEBOOK
でシェア

X
でシェア

関連するニュース・記事