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博報堂のソーシャルアクション
Vol.5 大学生の共創による、ブランドデザインコンテストBranCo!

2019.12.13
#CSR#SDGs
*本活動は、SDGsの17の目標と169ターゲットにおいてSDGs4.4、4.7、17.17に貢献しています。

大学生の共創による、ブランドデザインコンテスト

博報堂が日頃の業務として手がける「ブランドデザイン」の社会における重要性を大学生に伝えることを目的に開始した、大学横断のコンテストです。参加者は博報堂流の課題解決方法を学び、情報インプットからアウトプットアイデアまでの一貫した企画の流れをチームで実践します。「正解のない問いに共に挑む」というコンセプトのもと、2011年に授業形式で開始した東京大学と博報堂の教育連携事業である「ブランドデザインスタジオ」の拡大企画として本コンテストは、2012年にスタートしました。7回目となる2018年度は、全国89の大学から837人の大学生が参加しました。

左:宮澤正憲/博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局 右:真船文隆/東京大学 総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系 教授

「共創」は、イノベーションとサステナビリティを生む力。

― 東京大学(以下 東大)の持っていた課題は?

真船(東大): 大学生は入試勉強で、自分で答案を作ることにはすごく慣れているわけです。でも、友達とグループを作って、共創するのはあまり得意ではないという学生が多かった。これが一つ。もう一つはこの取り組みを始めた頃、アクティブラーニングという言葉はありましたが、正直、教員も何をしたらいいのか戸惑っていた。アクティブラーニング用の教室は作ったものの、いったい中に何を詰めたらいいのかわからない。そこで、ご縁がありまして宮澤さんにご相談しました。

― なぜプロジェクトのテーマを「ブランド」と置いたのでしょうか。

宮澤(博報堂): まず「ブランドとは、他にないもの」という定義をしています。その企業でしかできないこと、この商品でしかできないことという固有性をどうやって作るのか、そのお手伝いを仕事としてきました。企業研修などで、「ブランドをつくる」方法をお話しするうちに、これは非常に教育的で、汎用性も高いテーマだから、「企業だけ」よりは、色々な人が知っていたほうがいいのではないかと思うようになりました。学生視点で考えても、自分をブランドとして捉え、自分にしかできない生き方を作っていける、というのは教育的に非常に重要であろうということになったわけです。

真船: 最初は、もうとにかくわからなかった。試行錯誤している中で、「正解のない問いに共に挑む」というキャッチフレーズが出てきたんですよ。

宮澤: 「正解のある問いに一人で答える」のは、学生は非常に得意なので、そこをわざわざやる必要はない。東大の教養学部は理系も文系も全ての学部生がいるという珍しい存在です。教養課程にいる間こそ、多様な学生を交ぜてやるのがいいのではないかと考えました。ただ東大には芸術系の学部がないので、途中から東京藝術大学(以下 藝大)の学生に入ってもらっています。今は社会人も一部で入っているので、本当に多様な「共創の実験空間」になっていると思います。

ブランドデザインスタジオの授業風景。講義などの一方的な知識伝達スタイルではなく、グループの中で学び合い、発想し、合意形成していきます。

多様性を学ぶには互いをリスペクトすることが大切。

― 多様性や共創に対する手応えはどんなところで感じました?

真船: やはり藝大生が来た時が、一番インパクトがありましたね。アウトプットが変わってきました。文字ではなく、絵で描くんですよ、絵で考える。

宮澤: この授業は「リボン思考」と言い、調査をしてコンセプトを作って、そしてアウトプットと、すごくわかりやすい形にしています。実践してわかったのは、人によって非常に得意なところと、そうでないところがあるということです。藝大生はアウトプットは得意ですが、そのプロセスを言語化できない人も多く、東大の文系学生は、コンセプトワークは比較的得意なので、その部分をササッと形にすると、藝大の学生は「すごいな」と感心します。理系には非常に緻密に調査・分析する学生がいる。そうした相互補完関係になっているのを見た時に、多様性は新しいものを生む時に非常に重要なのだとあらためて感じました。また、みんながリスペクトし合うのもいい。東大の学生は藝大生をリスペクトするし、文系の学生は理系の学生をリスペクトする。多様性を学ぶ上で、リスペクトは非常に重要です。

「Input」→「Concept」→「Output」というフローでアイデアを生み出す思考フレーム「リボン思考」を学生たちは実践。

― 授業の課題、テーマにはどのようなものがありましたか?

真船: みんなが平等に取り組むことができるテーマ設定にしています。今は音楽のブランディングをしています。基本的に、「何々をブランディングする」というタイトルにしていまして、東京タワーをリブランディングするとか、猫のブランディングとかもあります。

宮澤: 全てのテーマを「他にないもの、社会的に価値のあるもの」と定義しているので、答えとして、商品なのかお店なのか、何が出てくるのか僕らにもわかりません。でもこの授業のポイントは、共創やアイデアを出すためのスキルを学んでもらうことです。アウトプットが面白ければそれはそれでいいのですが、アウトプットまでの過程を言語化したり、整理したりすることを学んでもらうことがメインです。

― 授業から「BranCo!」に門戸を開いた際に、コンテスト形式にした理由や狙いは?

宮澤: アクティブラーニングは、自分で自発的に学ぶことが大切。だから究極のアクティブラーニングとは、お題を与えてコンテスト形式にすることではないかと思ったのです。わかりやすく言えば、高校生があれだけ野球を頑張るのは、「甲子園」という大会があるからです。自発的に頑張る、そこを狙ってゴールを与えるということを考えました。

2018年12月に開催したBranCo! 2019一次予選に参加した学生たち。 詳細はhttps://branco.h-branddesign.com/

社会全体がサイロ化する今、共創が求められる。

― BranCo! や授業について、これからの目標や夢は?

真船: フィードバックですね。学生たちが色々な会社で働き始めて、彼らが仕事の中で考えたアイデアがあれば、それを取り入れるということがあるかもしれません。教育は走り続けることに意味があるので、走り続けながらフィードバックというのがあり得ると思うんですね。

宮澤: 学生たちが学んでいるスキルを、下や上に広げることを考えています。下は小学生から高校生。早い段階からやると、共創、コラボレーションの精神が身に付きます。上は社会人で、BranCo!の卒業生が一緒になって考えた時に、すごいものが出てくるのではないかと、実験的に今年から始めたのが「BranCo! ネクスト」です。共創がなぜ必要かと言うと、組織が縦割りになってサイロ化すると、効率はいいが、効果が上がらないという現象が起きます。それが、組織運営上の最大の問題点です。最近はこれが、企業単位というより、社会全体で起きています。ある業界とその隣の業界はほとんど情報交換がないとか、大学と企業は情報交換がされていないとか、実は社会全体で総サイロ化が起きている。世の中でより新しいことや、もっとイノベーションが求められた時に、そこがとてもネックになります。だからこそ、横をつなぐ大きなうねりのコラボレーションを作ることが、これからの社会やサステナビリティ、イノベーションにとって一番大事ではないかと感じ、できるだけ活動を広げていきたいと考えています。

2015年より、ブランドデザインスタジオは東京藝術大学とも連携。なお、BranCo! 2020は、「秘密に関する新しいブランドをデザインする」がテーマ

こちらのインタビューの他、博報堂DYグループの事例を「新しい幸せをみんなでつくろう! Hakuhodo DY Group SDGs Collaboration Book 2019」に多数掲載しております。ぜひ、上のリンクよりご覧ください!

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