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伝クリ第一弾 「畳を広告メディアに。畳メディア」

2020.02.17
#クリエイティブ#地域創生
博報堂九州支社の伝統×クリエイティブを得意とする支社内プロジェクト「伝クリ」メンバーが、伝統工芸の職人にインタビュー。そのインタビューからインスピレーションを受け、アイデアを考える連載スタートします。
日本には素晴らしい伝統の技術がたくさんあります。その技術を発見して再価値化すると同時に、クリエイティブのアイデアを加えてアップデートできないかというのが狙いです。
第一弾のアイデアは、畳を広告メディアとして活用する「畳メディア」。
このインスピレーションを受けた畳職人徳田直弘さんに博報堂九州支社コピーライターの中村圭がインタビューしました。

徳田直弘 株式会社 徳田畳襖店 専務取締役・4代目
半導体関連メーカーに勤務ののち、家業の4代目後継者として修行を重ねている。週末は、畳で日本を元気にする異色のアーティスト、畳屋ラッパー MC TATAMI に姿を変え、畳を題材にした楽曲やグッズを創作している。数々のテレビやラジオで話題になり、歌手の松崎しげる氏から絶賛された。目標は、畳を再興させることであると同時に、令和元年より福岡県住みます芸人として地域課題を解決するプロジェクトにも力を入れている。

このままだと日本の畳は消滅する

中村:よろしくお願いします。僕らは「伝クリ」という、伝統とクリエイティブを掛け合わせて企画を考えている集団です。

一つ例を出すと、ヤキモノメイクといって女性の顔に焼き物の絵付け師さんがメイクしてくれるサービスを考えました。若い人たちがメイクした顔を自撮りをしてどんどん上げてくれるようにと考えたサービスです。女性の顔をメディアにすることを狙いました。こういう風に、伝統をクリエイティブのアイデアと掛け合わせて進化させることができるんじゃないかと考えています。

そこで、伝統を大切にしながらも新しい試みをしてる人たちをインタビューし、その人たちに受けたインスピレーションを元にアイデアを生み出したいと思っています。そこで、第一弾として、畳職人の徳田さんにお願いしようと考えた次第です。

徳田:ありがとうございます。よろしくお願いします。

中村:早速なんですけど畳業界の現状をお聞きかせください。

徳田 :まず、後継者不足で衰退傾向にあるのが、畳業界が抱える1番の問題点です。どれだけ減っているかと言うと、だいたい日本の98%シェアを持ってるのが熊本県八代市なんですが、そこには平成元年5000軒以上い草の農家さんがいたんです。でも、令和元年の今だいたい30年で399軒に減っています。しかも、そのうち四十歳以下の作り手がいるところは、89軒しかありません。10年後20年後と考えていくと日本の畳は存続すら危ないと言われています。これが畳業界が抱える問題です。業界の規模でも、もちろん縮小傾向で、これから V 字回復は見込めないと言われています。

畳は食べれるんです

中村:ありがとうございます。では次に、畳の魅力について教えていただけますでしょうか?

徳田:畳の魅力はいくつもあります。香りが良いとか、肌触りがいいとかは、一般的に知られてることなんですけれども、最近気付いたことがあって。畳は「衣食住」だってことです。衣で言えば自分は畳ネクタイとか身に付けるものをつくってるので当てはまる。食は食用い草があるので当てはまります。

中村:食用のイ草があるんですね。

徳田:そうなんです。もともと、イ草は漢方薬として日本に入って来たんです。インドが原産でシルクロードを渡って、中国で漢方薬として使われててそれが日本に渡って来ました。そこから日本人の知恵で畳になっていったんです。

だから畳自体は日本固有の文化なんですよね。ただもともとは食用なんです。 今となっては一般の人は畳としか想像できないんですけれどね。でも実は食べれるんですよ。

中村:初めて知りました。

徳田:なかなか誰も知りませんよね。

中村:稲とかも仲間だったりするんですか?

徳田:稲の仲間じゃなくてイ科ですね。カタカナのイが正式名称なんですよね。イ草の。「イ」が正式名称で何で草がつくかと言うとイじゃ言いづらいからなんです。

中村:面白い!

徳田:熊本にいろんな組合かあるんですけど、イ草組合としてるところもあればイ業組合としてるところもあるんです。「イ」なので、最も短い標準和名としても知られてます。衣食住の話に戻すと「住」は皆さんご存知の通り畳とか寝ゴザになるわけです。なので衣食住あるのがイ草だと考えてます。他にこんなものってないと思うんです。

畳の技術の凄さについて

中村:ありがとうございます。次の質問に移らせてください。畳を作る技術の凄さってなんかありますか?

徳田:結構地味な仕事が多いんですよね。細かい仕事が結構あるなという感じです。寸取りでもちょっとでもずれれば畳は入らないので。

中村:寸取りというのは部屋に畳が合うように採寸することのことですか?

徳田:そうですね。新築の場合は畳がないので部屋の寸法を測るんですけど。レーザーとかを使います。1尺2尺と測るんです。そういうのを寸取りと言います。現状あるお客様の和室に畳がある状態で張替えをするときは畳を持って帰ってきてその畳通りに仕上げる。そしてまた寸取りをします。地味な細かい仕事をいくつも重ねているので、そういうところが凄さだと思います。

中村:寸取りの他にも細かい仕事ってありますか?

徳田:カットとかも細かい仕事ですね。切るときにも神経を使います。

中村:勉強不足ですみませんが、畳ってどういう風に作られるんですか?編まれてるんですか?

徳田:最近流行りが断熱フォームで、もう一つは昔からある稲わらなんですけれども。掛け合わせているものなんです。昔からあるのは稲わら。全わら床っていうんですけど。それを使ったのが畳床。土台になる部分です。これに畳表というゴザを張り付けます。

中村:中身はどういう構造になってるんですか?

徳田:交互になってるんです。稲わらの方向が今こっちですよね?下は反対方向になっていて、それで強度をもたせてるんです。

中村:稲わらを重ねているという感じなんですか?

徳田:そうです。層があると思うんですけど、縦横と層を組み合わせてるんです。

畳の可能性は無限にある

中村:ちなみに畳の色を細かく変えて絵柄にできたりするんですか?

徳田:できますよ。サンプルがあるんですけど。こうやって柄を作ることもできます。画像を持って行き、これで柄を作ってくださいとやることができます。イ草自体を染めて機械に読み込ませて、機械が織り込んでくれるんです。

中村:すごい!いろんな色がいっぱいあるんですね!

徳田:黒いのは高級車の天井に使われたりしてるらしいです。

中村:畳べりも色々模様を入れられるんですね。

徳田:そうですね。

中村:この流れで他にも畳を流用したアイテムを教えてもらっていいですか?

徳田:まず「畳あめ」を説明させてもらうと、普通のアメじゃないんです。食用イ草が入ったアメなんです。名前は「畳あめ」と言います。食用イ草は、食物繊維がめちゃめちゃ多いんです。和のスーパーフードと呼ばれてます。食物繊維は、キャベツとかケールとかごぼうとかより多い。キャベツの43倍なんです。

中村:キャベツの43倍!

徳田:すごいですよね。和のスーパーフードと言われてるくらいなので。

中村:生産量は多くないんですか?

徳田:多くないですね。作ってるところが一軒しかなくて。加工も難しくて、無農薬で育ててるので。口に入るものなので、そこはしっかりとしなきゃいけない。あとどういう工程で作られてるのかを詳しく教えてくれないんです。企業秘密らしくて。会うたびに教えてくださいと言ってても教えてくれない(笑)大量生産は難しいんじゃないかなぁと。畳アメを作った理由は一番手に取りやすいからです。おじいちゃんから子供まで楽しめる。畳って食べれるんだという、畳に興味を持つきっかけになってほしい。なので第一弾で畳アメを作りました。

中村:なるほど。入り口としてのアメなんですね。

徳田:続いて畳ネクタイです。畳屋ラッパーとして活動してるので、そのときにつけるコスチュームとして作ってます。特徴的には、デニム素材と掛け合わせて作ってます。後ろはマジックテープで止めるので簡単なんです。畳とわかりやすいように、畳の色で作ってます。

畳屋ラッパーの誕生秘話

中村:畳屋ラッパーとしての活動についても教えてもらってもいいですか?

徳田:平日は畳屋、週末はラッパーをしています。それが合わさって畳屋ラッパーなんです。

中村:なんでラップだったんでしょうか?

徳田:好きなことを通して畳を紹介したかったんです。昔からヒップホップとレゲエが好きで。

中村:ラッパーをする中で反応はどうですか?

徳田:自分はクラブでは一切歌わないんです。地域のお祭りとかが一番多いので、お子さんからおじいちゃんが多いところで歌うようにしてます。そこでのラップの反応はめちゃめちゃいいです。最初は心配だったんですけど、どういう反応があるかわからなくて。でも意外とめちゃめちゃ反応が良かったんです。おじいちゃんおばあちゃんとかもセイホーと言えば、手を上げてくれる。敬老会とかも行くんですけど、みなさん手を上げて、いい運動になったーっと言ってくれます(笑)

中村:ちなみにご自身の曲で一番好きなのは?

徳田:一番歌っているのは、T.A.T.A.M.Iですね。TA!TA!MI!畳~!でコールアンドレスポンスしてます。

中村:他にも畳の魅力を盛り込んだ歌ってありますか?

徳田:あります。愛され畳という曲があるんですが、それは、「日本の畳は奈良時代から受け継がれ、今も人々に愛されています」とか機能性で言えば「夏はクールに、冬はホット」にとか、「体に良くて癒してくれて」とか。ストレートにいうのが自分のスタイルなんです。わかりやすい方がいいと思ってるので。

畳をアップデートする

中村:そういうところが老若男女に受けてる理由かもしれないですね。最後にこれからの畳の活動に対する思いを聞かせていただいていいですか?

徳田:畳業界はPR不足だと思ってます。いろんな人がいろんなPRを業界もしてきたのはわかるんです。ただ、それがうまい具合に一般消費者には伝わってない。だから、自分自身が前に出て畳をPRして行きたいんです。

取材から生まれた伝クリのインスピレーションアイデアは?

畳をアップデートする徳田さん。徳田さんに聞いた取材から僕らは二つのアイデアを生み出しました。

一つ目は、「畳メディア」細かい色を付けられると知ったことで、畳を広告宣伝をするメディアにできないかと考えました。有名な飲食店の畳に、酒造のロゴの広告を出すなどはどうかと考えています。

二つ目は、「畳そば」今、瓦そばという名物がありますが、それと同じように、畳をテーマにした名物を作れないかと考えています。スーパーフードイ草の粉を使った麺というのを徳田さんが考えられてたことから、見た目も畳にしてはどうかと発想しました。

「伝クリ」はこれからも、伝統の技術に光を当てながら、クリエイティブとの掛け合わせで、新しいアイデアを生み出していきます。

※伝クリとは?

博報堂九州支社で、伝統技術のクリエイティブを多く手がけてきた3人が立ち上げたプロジェクト。伝統技術とクリエイティブで新しいアイデアを生み出していく。

写真右から、アートディレクターの今林大造、コピーライターの中村圭、プロデューサーの横尾暁宣。
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