毎回、様々なテーマで10~15年先の日本の未来像を描き出す「みらい博」、今回のテーマは、「時間」です。
超高齢社会、100年人生・・・と、生活者が向き合う時間が長くなりました。一方で、働き方改革、時短商品・・・と、時間の無駄を減らす流れが強まっています。そして、時間の使い方が問われはじめている今、これまでのルールには縛られない、まったく新しい時間の使い方をする生活者が現れています。
彼ら彼女らの台頭が、これからの社会をどう変えていきそうか、その可能性を探りました。
講演のはじめに、石寺所長より、時間の歴史をご紹介しました。
集落ごとに、牛の寝起きで時間を認識していたと言われる古来から、18世紀後半の産業革命を経て、時間は工場の労働者や生産の効率を管理するための、共通の物差しとして用いられるようになった。近代化の流れの中で、「社会の時間軸」に「自分の時間軸」を同期することが社会の常識になってきたという歴史がある。
「行動の変化」「意識の変化」「変化の中心世代」に分けて、社会党系や定量調査の結果を中心に、内濱上席研究員よりご説明しました。
このように、20代を中心に自ら積極的に生活の高速化を図ったり、時間を重層的に使ったりする等、「タイムパフォーマンス」を向上させようとする生活者を、生活総研は「新・時間生活者」と名付けた。
「新・時間生活者」は、具体的にどのような新しい時間の使い方をしているのか?したいのか?街頭インタビュー、デプスインタビュー等の定性調査を踏まえ、その特徴を3つにまとめ、前沢上席研究員よりご説明しました。
<新・時間生活者 3つの特徴>
特徴① 時間は短くするより「濃く」する
特徴② 時間のために空間や関係を「組み替える」
特徴③ 自分の時間軸に社会の方を「引き寄せる」
「新・時間生活者」は、自分たちの欲求を叶えるために時間をコントロールしている。そうすることで、自分にとって理想のタイムパフォーマンスをつくりだしている。
これからは、そのような人それぞれの時間のつくり方=タイムスタイルが、その人の生き方や、個性を表すものになっていく。
引き続き、前沢上席研究員より、2030年に実現しているかもしれない「新・時間生活者」たちの生活をご説明しました。
<「時間」をめぐるイシューから発想した風景>
最後に、再び石寺所長が登壇し、「時間」の変化を踏まえ、企業に求められることは何か?お話しました。
これから企業に求められるのは、TPO(タイム・プレイス・オケージョン)、「いつ・どこで・何を?」の新しい組み合わせを生活者に提案すること=TPOのRe:デザイン。
これからの「時間」は、延長したり、連結したり、分割することがもっと簡単になる(下図右)。日常シーン(下図左)を掛け合わせることで、ビジネスチャンスを発想する際のテンプレートとして使用できる。
講演終了後、参加者からは、
「時間に対する発想がここまで自由化しているのかと驚きました。まさに現時代に合ったテーマ設定だと思いました。」
「今の若者の価値観の違いについて、全体像では聞いたことがあったが、『時間』という軸で考えたことはなく、新鮮でした。」
「自身の生活習慣、業務上での示唆を得ることができました。時間は平等にあるが、不平等であると改めて再認識しました。」
などの声をお寄せいただきました。
博報堂生活総合研究所は今後も、生活者のきめ細やかな調査研究を通じて、よりよい未来を提言する活動を続けてまいります。