実はキャリジョたちにとって、美容・ファッションはグルメ・キャリア・恋愛よりも関心が高い普遍的なテーマ。そして働く男女のうち、男女差が最も大きい領域でもあるのです。
ひとくちに「美容」と言っても、スキンケアやメイク、ボディケア、髪などジャンルは様々ですが、ここ数年の流行を見てみると、自分の顔や身体にどう賢く投資するか、という視点が際立ってきたように思えます。たとえば医療脱毛や歯列矯正など根本改善につながる美容医療・整形、中長期で効果が持続するアートメイクなど。
特に美容医療の中でも、ボトックスやレーザーフェイシャル、ピーリングなどメスを使わない非外科的手術はダウンタイムも短いため、キャリジョたちにとっての抵抗も少なく、日々のメンテナンス感覚で通う人もちらほら。切開を必要とする外科的手術に関しても、近年SNSの美容アカウントや美容整形の口コミアプリなどで多くの実例にアクセスできるようなったため、かなり身近になったのではないでしょうか。これらのプラットフォームではBEFORE/AFTERを含めた経過報告が動画・画像を通じて包み隠さず語られており、効果・ダウンタイム・痛みなど今まではブラックボックスだったリアルな情報がオープンになりました。
美容医療の施術一回の料金は高額ですが、効果が現れやすく長持ちする・毎日のメイクの時間を短縮できる……などのメリットを考えると、長い目で見たときにコスパとタイパ(タイムパフォーマンス)は決して悪くないのです。キャリジョたちにヒアリングをしたところ、肌の老化が現れないうちに将来のお肌に投資しようと考え、20代半ばから毎月美容皮膚科に通いレーザーやフォトフェイシャルをしている強者もいました。今抱えている美容の悩みや、いつか表面化する肌悩みに根本から働きかけて中長期的な解決を図る美容医療は、これからますますメジャーになるかもしれません。
そして最近の美容・ファッションを語る際に無視できないのがエシカル文脈でしょう。数年前までは1シーズンごとの短サイクルで消費する安価なファストファッションが大きなトレンドでしたが、今はSDGsの潮流も受け、環境問題や児童労働問題に真摯に向き合っているブランドが台頭しています。とりわけアパレル業界に関しては、前々から環境への負担が問題視されていると報道されており(*1)、世界のラグジュアリーブランドでは使われている素材や生産過程、梱包、売り場、廃棄の仕方まで一貫した透明性が求められつつあります。
今まで環境問題やサステナビリティを気にせず、流行りの商品を買っていたキャリジョたちも、ここ数年での国内外の著名人たちによる呼びかけや問題提起によって、意識が変化したように思えます。実際に働く女性たちにヒアリングをしてみると、「部屋着をオーガニックコットンに替えたら肌ざわりがよくて気に入った」「プラゴミを出すのが嫌でマイボトルやエコバッグを使い始めたら、罪悪感もないし節約にもつながるから一石二鳥だった」などの声があがりました。環境にやさしい選択が自分の心地よさにもつながった、というのです。
今後は、美容だけでなく消費行動全体として、ブランドの思想やビジョンに共鳴できるか、長く使えそうか、ずっと愛せるか、という基準で服やコスメを選ぶ人が増えそうですね。
長期的な目線で自分が満足できるものか、そして地球と人々にやさしいクリーンなものか──この2つの基準は一過性のトレンドに終わらず、私たちの消費基準の軸になるかもしれない、と感じています。
*1)UN News (データ元は国際連合貿易開発会議/UNCTAD)
2016年博報堂入社。食品・飲料や化粧品などのマーケティング領域の担当を経て、現在は新規メディア開発やマーケティングソリューション開発に従事。好きな動物はパンダ。