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現役キャリジョを取り巻くキャリアの現状とは!?
「キャリジョ図鑑」制作裏話とこれからの女性のキャリア展望 後編

2020.07.30
#キャリジョ研
目白大学の安斎ゼミと博報堂キャリジョ研による初の連携プロジェクトから誕生した「キャリジョ図鑑」。その中身や制作裏話について、またこれからの女性のキャリアについて、安斎ゼミの鈴木千優さん、木下菫さん、安斎徹先生と、キャリジョ研の松井博代、白根由麻が語り合いました。後編では、キャリジョの現状や学生から見た理想とのギャップについて語り合います。

松井
ここからは、キャリジョ研の実施したいくつかの調査結果※から、現役キャリジョの現状を見ていけたらと思います。まずはファッション意識についてのアンケート結果をご紹介させてください。NGだと思うアイテムをうかがってみたところ、もっとも多かったのがショートパンツで、ほかにはサンダルやキャミソールなど、三ヶ条にもあるように露出が多い服装はビジネスでは好まれないことがわかります。それから大ぶりなアクセサリー。インタビューでは、そういうもので自分らしさを出したり気分を上げるという話もありましたが、アンケートでは3割以上がNGとしている。こういう側面も知っておいて損はないですね。

安斎
「あてはまるものはない」という回答は24.4%。4分の1のキャリジョ達は職場のファッションに自由に向き合えていて、残りは何らかの制約を感じているということですね。

松井
続いて、学生時代との理想と働き出してからキャリアイメージにギャップがあるかどうかの調査結果です。濃淡ありますが70%の方がギャップを感じていることがわかります。

鈴木
まさに今就職活動中の私たちにとって、そこは悩みどころです。ホームページや説明会などで得られる情報にはどうしても限りがあって、実際には入ってみてからわかることが多いということなのかもしれません。

木下
私も同じく就職活動中なので、同じように思いました。また7割の方がギャップを感じているということは、想定していた通りの仕事ができている人はそれだけ少ないということですよね。私自身にも起こり得ることなので、参考になります。

松井
たとえばメーカー勤務だったら、オフィスワークを想像していたけど工場勤務になったとか、東京で採用されたけど勤務地がいきなり地方だったということもあるでしょう。また、結婚、出産を挟むことで、想定していたキャリアプランとは違う方向に行ったというキャリジョも多々いる。いずれにしても、最初からキャリアプランをがちがちに固めすぎていると、その通りにならなかったときの不安、不満が生まれやすいのではないかなと思います。誰もが入社してすぐは、すべてが初めてですべてが貴重な学びになるので、キャリアプランについてはある程度柔軟に捉えた方がいいような気がしています。

白根
私の場合は入社当初からかなり明確なキャリアプランを描いていて、その通りにならなかったという経験があります。プランを決めすぎることは自分を縛ることにもつながるので、確かにある程度おおらかな気持ちで臨むといいのかもしれませんね。

松井
続いて「現在の仕事の満足度」について見てみると、「かなり満足」「やや満足」の人を合わせると半数くらいになり、「どちらともいえない」が4割くらい、「やや不満」「かなり不満」が15%くらいで意外と少ない。キャリジョが集まると仕事の愚痴は出やすいんですが(笑)、実際は今の仕事を肯定的に捉えている人の方が多いということがわかりました。また、具体的に何に満足して何に不満を感じているかを見ていくと、圧倒的に満足している人が多いのが仕事の内容、続いて給与、それから職場の雰囲気、仕事の拘束時間などが続いていきます。

鈴木
ギャップがあったとしても、仕事への満足度が高いというデータは励みになります。

木下
同じく、今は働くことに対する漠然とした不安があるので、その数字を見ると少し安心できますね。

安斎
全体として、ネガティブ、ポジティブ両方のギャップはありながらも、数年働いていくうちに折り合いがつき、またやりたい仕事にたどり着くことで満足度は高まっていくというような姿なのかもしれませんね。ちなみに満足度の高い項目に「人間関係」もありますね。コロナの影響でこの点にも何か変化はあるでしょうか?

松井
ニュースや記事などによると、余計な付き合いがなくなることで、ストレスが緩和されたように感じる人は一定数いるようです。またコロナの影響というところで言うと、在宅の結果、会議室への移動時間やコンビニに立ち寄るような隙間時間がなくなり、ちょっとした雑談などがなくなった。集中して仕事をする時間は増え、余白がなくなった状態です。この状況が続くと、働く基準は少し変わってくるかもしれませんね。また、ファッションについて言えば、服への頓着がなくなっていく一方で、暗くなりがちな気分を高揚させるために、普段着られないような服を購入するといったことが起きているようです。

安斎
確かに在宅勤務だと、図鑑で取り上げたような服装のルールからは少し解き放たれて、もっとファッションで個性を出しやすくなるかもしれませんね。

白根
キャリジョ研では、自分をいたわる「セルフラブ」の側面に注目もしていて、メンタルヘルスを上げるというファッションの側面もまた再評価されていくだろうと考えています。

会社の垣根を超えた女性同士のネットワークが求められる

白根
いまお2人は、働く女性になることに対して不安などありますか?

木下
女性として結婚出産を視野に入れると、どうしてもキャリアの断絶が起きたり、そもそもその後も働き続けることができるのかという不安は、すでにあります。

松井
女性のライフステージ問題は、キャリジョにとってまだまだ大きな課題ですね。ただ、男性の育休取得も増えているし、家事育児を一緒にやっていこうというスタンスの男性は増えてきています。もしかしたら一番重要なのはパートナー選びかもしれませんね(苦笑)。

安斎
コロナによって在宅勤務が当たり前になってくると、男女の役割分担の見直しも進むかもしれませんよね。現に私も、日によっては食事担当になります。大した料理はつくれないのですが。

松井
そもそもなぜ女性の家事労働時間が長いかというと、残業の有無などで、男性に比べ物理的に女性が家にいる時間が長いからという調査分析を過去に行ったことがあります。男女とも在宅が常態化すれば、家事も平等にシェアしようというマインドを持ちやすくなりますね。

鈴木
私の場合、目指している業界に女性があまりいないので、私のような人間の意見が尊重されるだろうかという不安があります。

松井
男性がほとんどを占めるような職場は、まだたくさんありますよね。そういう中で私が勧めたいのは、横のネットワークを広げていくこと。周囲に同じような立場の人がおらず、情報もなくてどうしていいかわからなければ、会社や業界の垣根を超えて、さまざまな働く女性とつながっていく。そうすることで、情報をシェアしたりいい知恵を教え合ったりできるし、何より励まし合える。一つの会社だけで考える必要はないと思いますよ。

働くリアルを知るために必要な、大学と企業をつなぐ取り組み

安斎
これは大学側の責任でもあるんですが、企業と大学生の接点が就活やインターンくらいしかなく、仕事の実態を学生が把握しにくい。就活を始める前に、大学が学生に、会社の本当の姿や働く人のリアルな姿をもっと見せておくべきなんですよね。そういう意味でも、今回のプロジェクトではありのままの社会人であるキャリジョ研の皆さんと1年間ご一緒させていただくことができ、学生たちにとっても非常に勉強になったと思います。改めてありがとうございました。テーマ選定の会議から、インタビューの事前準備、本番、そして記事を書いて冊子を完成させるまで、学生たちの成長を間近に見ることができ、本当によかったと思います。
私自身が企業に長らく務めていた経験のある大学教員なので、企業と大学をつないでいく懸け橋のような役割を果たせたらと思っています。今後もキャリジョ研の皆さんと何かしらご一緒できれば嬉しいです。

白根
私も学生さんとここまで一緒にプロジェクトを遂行することは初めての体験だったので、皆さんの意見を知るいい機会になりました。ありがとうございました。働くことに対して学生の皆さんが抱くさまざまな不安についてよく知ることができたので、社会に出た後にどんなことが待っているのかをお伝えし、少しでもその不安を解消できるよう、今後もこの活動を続けていきたいです。

松井
女性の場合、自分や自分以外の人の都合でそのつどキャリアや生活が変わり得ます。その時々で柔軟に考え、最適な選択をするためにも、なるべく早いうちから将来起こり得ることを知り、考える機会が必要だと考えていて、それこそが「早期キャリア教育」の意味だと思います。今回ファッションという馴染みやすい切り口から、将来のキャリアについて考えるきっかけにもできたのは、学生さんたちの視点があったからこそ。今後もキャリジョ研としてこうした活動ができるといいなと思います。

鈴木
今回のプロジェクトを通して、たくさんの社会人の方々と深く話をすることができ、働くということが少し自分の中でクリアになりました。働くことをポジティブに捉えられるいい機会になったと思います。リーダーとしてチームをまとめた経験を活かし、今後もやりたいことがあれば積極的に周囲を巻き込み、物事を進めていければと思います。

木下
私にとっても今回一番大きな経験になったのが、社会で働く女性の本音を聞くことができたこと。テーマであるオフィスカジュアルの幅広さ、奥深さを知ることができたのもとても楽しかったです。今回体感できた、「チームで力を合わせてプロジェクトを進めていく大切さ」を、働く上でも忘れずにいようと思います。

松井 白根
鈴木さん、木下さん、安斎先生、今回はどうもありがとうございました!

博報堂キャリジョ研では、今年から「働く女性が生きやすい“ニュートラルな社会”づくり」を掲げて活動を強化しています。安斎先生とのご縁もあり、大学生のみなさんとお会いし、さまざまな話を聞く中で、依然として社会に出て働くことへの漠然とした不安や、女性特有の結婚・出産というライフコースと仕事の両立への不安などがあることが分かりました。その理由としては、学生たちは社会に出た方との直接的な接点が少ないことや、就職活動では企業のほんの一部しか見ることができないことが多く、具体的な働き方のイメージを持ちにくいことなどがあると考えられます。社会に出る上では、実は多種多様な選択肢があること、そしてその都度自分の意志でキャリアもライフも柔軟に変えていくことができること、などを知ることで、実際に社会に出てから思い描いていたキャリアとのギャップに対する不安や焦りが少なくなるのではないかと思います。
そのために今後も博報堂キャリジョ研では、さまざまな研究や調査、そして企業や大学とのコラボレーションを通して、早期キャリア教育に取り組んでいきたいと考えております。

※博報堂キャリジョ研実施 働く女性のキャリア意識・実態調査(2020年2月)
20~30代有職女性90名を対象としたインターネット調査(全国)

■プロフィール

安斎徹先生

清泉女子大学文学部地球市民学科 教授
(「キャリジョ図鑑」作成時は目白大学メディア学部教授、2020年4月に移籍)

木下菫さん

目白大学社会学部メディア表現学科 4年生
(同学部同学科は2018年4月よりメディア学部メディア学科に改組)

鈴木千優さん

目白大学社会学部メディア表現学科 4年生
(同学部同学科は2018年4月よりメディア学部メディア学科に改組)

松井博代

博報堂キャリジョ研 代表、第三プラニング局 ストラテジックプラニングディレクター

白根由麻

博報堂キャリジョ研 研究員、TEKO アクティベーションディレクター

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