こんにちは。ヒット習慣メーカーズの中川です。
リモートワークになって、通勤時間がなくなることで、暮らしにゆとりができる。そう思いきや、なぜか朝から晩までオンライン会議で埋まる日々が続く。日によっては、お昼を食べる時間もなくて、オンライン会議のカメラをオフにして、こっそり裏でご飯を掻き込むことも(笑)。そういう日々がつづくと、曜日感覚もなくなるし、時間感覚も薄れてきて、生活のリズムが崩れていく。そう感じている人も少なくないと思います。
今回のテーマは、「戦略的余白」。リモートワークによって、オンとオフがシームレスになった暮らしの中で、日々に流されるのではなく、あえて戦略的に余白時間をつくることで、生活リズムを取り戻したり、疲れを癒したりと工夫をする人が増えているという話です。ちなみに、Twitterの「ストレス」に関する投稿数を見ると、4月に入ってから急激に投稿数が増えて、その後落ち着いてきたものの、それ以前よりも高い水準となっています。
〈「ストレス」に関するTwitter投稿数の推移〉
この「戦略的余白」ですが、調べてみるといろんなパターンがあるようです。
まず思い当たるのが、「休憩時間を予定表でおさえる」です。リモートワークになり、メンバーで共有できるオンラインの予定表でスケジュール調整をする会社が増えています。効率的でとても便利ですが、うっかりすると空き時間がすべて会議で埋まってしまう。それを回避するためにも、あらかじめ予定表に、休憩時間を入力して確保しておく人が周囲を見渡すと多くいます。また、ライフハック系サイトでも生産性を上げるTIPSとして記事でとりあげられていました。お昼の食後30分は仕事をしない時間として確保しているチームメンバーもいました。
次に「あえてひと手間加える」です。あえて急須でお茶をいれる。SNSを検索してみると、若者の中にも、あえてそれをやる人が散見されます。気持ちを集中させたり、お茶の香りで癒されたりしているようです。似たような事例で、コーヒーを豆から挽いて淹れる人も。これらは「不便益」とも言われていて、あえて不便にすることで、手ごたえや喜びを感じる価値のことで、昨今注目されています。
つづいて「あえて歩く」です。リモートワークで自宅にいる時間が増えて運動不足になる人も多いため、少しでも体を動かしたいという欲求が高まっています。そんな中、朝、家の近所を30分ほど散歩したり、会社に行く際に、一駅分歩いてみたり、人それぞれ「あえて歩く」時間をつくっているようです。ちなみに私は、会社から自宅までの1時間半の道のりを帰宅時だけ歩くことがあります。好きなラジオや音楽を聴きながら、街の雰囲気や夜空を眺めて歩くと、運動不足も解消されますし、たまにアイデアも降ってくるし、気持ちもすっきりするので、おすすめです。
最後に「真っ暗にする」です。文字通り部屋の電気を消してプロジェクターで映画を観たり、真っ暗な状態でお風呂の湯船につかったりするなど。実際に部屋を暗くして映画を観る人に話を聞くと、「それ以外できない時間を強制的に作りたかった。明るい部屋だと他のことが気になるし、スマホは通知が気になるし。日常からの強制的な切り分けと、集中力が増すことによる特別感なのかも」とのこと。いろんな情報や誘惑を暗くすることでシャットアウトして、気持ちに余裕をつくっているのですね。
「戦略的余白」。その理由は、冒頭に書いたように、オンとオフがシームレスになった暮らしのリズムを整えて、心にゆとりをつくり、蓄積した疲れやストレスを解消しようというものなのですが、それだけではなくて、そこから今まで気がつかなかった新たな時間の楽しみ方を見出しているようです。急須でお茶をいれる豊かな時間、散歩中に夜空を眺めてふと気づく月の美しさ、部屋を暗くして映画を観る没入感。こうしてみると、人々の暮らしが、また一段アップデートしているように感じますね。
この『戦略的余白』ですが、これからも多くの人が実践していくことが予測され、そこには新たなビジネスチャンスが広がっています。
この記事を書いている最中に、少し体調を崩しまして、仕事や外出の予定をいくつかキャンセルすることになりました。周りの方には大変申し訳ないなと思いつつ、ここ半年間は、あまり余白なく働いてきたので、神さまが余白時間を用意してくれたんだと思ったら、少しだけ前向きな気分になりました。まだまだ大変なことが多い日々ですが、みなさん、焦らずマイペースでまいりましょう。
メーカーの商品開発職を経て、2008年に博報堂中途入社。
クリエイティブストラテジストとして、日々お得意先や社会の課題に向き合っている。折りたたみ椅子を持ち歩き、気になる景色を楽しむチェアリングを実践中。好きな落語家は五街道雲助師匠。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。