こんにちは。ヒット習慣メーカーズの鈴木です。
暑かった夏からだんだん気温も下がり本格的な秋を迎えつつありますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?最近は東京もついにGo To Travelの対象となったりGo To Eatもはじまるなど、ほんの少しだけ今までの日常が戻ってきた印象がありますね。その一方でまだまだ予断が許されない状況は変わらず、少しおっかなびっくりしながら今の状況とうまく付き合っていく。そんな新しい生活習慣を模索する日々が続きそうです。
そんな中、今回注目したいのが「テラスライフ」です。レストランやカフェのテラス席等、可能な限りオープンな環境で飲食や仕事をする。それを、街や自治体が一丸となって取り組んでいく。そんな新しい習慣について見ていきます。
下のグラフをご覧ください。今年6月をきっかけに「テラス席」の検索数が大きく向上し、高止まりしています。もしかしたら暖かくなると外の席が気持ち良くなるので、単純に季節の関係かなとも思い昨年の6月以降の期間も入れて検索してみましたが昨年は微増なので、今年は特に「テラス席」の上昇が顕著といえます。
そこでよくよく調べてみると、実はこのタイミングで「テラスライフ」を推進する大きな動きがありました。今年6月、国土交通省は新型コロナウイルスの感染対策のため、テイクアウトやテラス営業などのための道路占用の許可基準を緩和したのです。これによって、各飲食店が仮設のテラス席を営業できるようになりました(ちなみに営業可能時間は週末限定で正午すぎから午後9時45分までです)。これは余談ですが、カフェのテラスが有名なパリではロックダウン直後はパリ首都圏のカフェ・レストランの営業をテラス席のみ再開可能としていました。そういう意味でもコロナ対策としてのテラス席はある程度の効果が期待できそうです。
実際にSNSでテラス席を活用している人の声を見てみると、「外食はまだまだ怖いので、個室かテラス席にしている」「ずっと家にいる生活だったのでリフレッシュできる気がする」「テラス席はペットも同伴できるので最近重宝している」「子供がうるさくても気にならない」等、コロナの対策になっているのはもちろんのこと、ペットや子ども連れでも気軽に使える等、他の点でもテラスの利点を発見している人が多いことが伺えます。
上記の規制緩和を受けて、個別の店舗だけではなく、街や自治体が一丸となった取り組みを行なっていることもポイントです。横浜の関内では関内まちづくり振興会、関内地区連合町内会幹部などが主体となった実行委員会が主催し、地元の企業や団体を巻き込んだ「かんないテラス」というイベントを開催。車道の一部を通行止めにして道路にテラス席を設置して近くの飲食店のテイクアウトを利用できるようにするという実証実験を行いました。こちらは第一回が好評で、複数回行われたようです。
また、岐阜県の大垣市では市が中心となり中心街をテラス化し活性化する「まちなかテラス(まちテラ)」を実施。こちらは単発のイベントではなく定常的な取り組みで、店舗前の歩道に置かれたいすやテーブルでゆっくりと過ごすことができるようになっています。参加店舗をまとめたマップも用意され、商店街に新しい人の流れが生まれているそうです。
このように、各店舗がバラバラと参加するのではなく、街や自治体全体で「テラスライフ」を推進することで、街自体の景色もゆっくりと変わっていきそうです。
ちなみに「テラスライフ」は飲食だけではありません。私の会社の先輩はテレワークの際必ずと言っていいほど外から参加をしていて気持ちよさそうだなと羨ましく思っていました。これも広義の意味での「テラスライフ」だといえます。大阪のある地域ではコインパーキングの一部にテーブル等を設置し、青空の下でコワーキンングが行える場所を設置する等の取り組みを行っていました。今後「テラスライフ」が広がれば、飲食やワーキングスペース以外にも様々な広がりが期待できそうです。
このように、国のシステムやルールが変わることで人々の習慣も大きく変わる可能性があるんだなと、改めてヒット習慣を研究する身としても今回は発見がありました。ところでこの国土交通省の取り組みの期限は今年の11月30日まで。まだコロナの予断が許さない状況と、テラス席の人気を踏まえ、継続の声も多いそうです。もし緩和が継続するとしたら、それに伴いまた新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。
私も先日とある飲食店のテラス席に家族と座る機会があり、ステイホームの反動かやはり外はいいなあと感じましたし、心なしか会話もいつもより弾んだ気がしました。今年はコロナで不便な思いをしたり辛い思いもしましたが、このような状況でも少しでもポジティブな文化や習慣を作っていければ良いなと感じているので、テラス文化が根づけば嬉しいです。
2007年 博報堂に入社。
ヒット商品やヒット習慣には飛びつかずにはいられない、ドミーハー。好きが高じて、ヒット商品やヒット習慣を生みだせると良いなと思い日々奮闘中。休日は家でアイドルのDVDを見るのが好き(主にジャニーズ)。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。