──「HAKUHODO Marsys Assessment」を開発することになったきっかけについてお聞かせください。
白子
現在国内外で数多くのマーケティングツールがリリースされていて、クライアントの多くはすでに何らかのツールを活用されています。しかし、導入している複数のツールの機能が重複していたり、コスト面で無駄があったり、導入はしたものの運用がうまくいっていないといった課題を抱えているケースが少なくありません。その課題を解決するためには、まずは何が問題なのかを明確にする必要があります。その「診断」のお手伝いをするために開発したアセスメントサービスが「HAKUHODO Marsys Assessment」です。
鈴木
診断をするには、第三者的な視点が求められます。クライアントの社内にはそれぞれの立場でツールを運用している方々がいて、一方にはツールのベンダーがいます。正確なアセスメントをするためには、そのすべての立場を俯瞰して、客観的に問題点を把握していくことが必要です。それを実現するのがこのサービスの狙いです。
金子
もちろん、それぞれのツールのベンダー側にもコンサルティングの機能はあるのですが、あくまでも自社のサービスを使いこなしてもらうためのコンサルなので、例えば、ほかにどんなツールが導入されているかとか、クライアントのビジネス課題にそのツールが本当にマッチしているのかといった視点で課題を解決していくのは難しいのが実情です。僕たちの立場ならば、クライアントの社内外を全方位的に見渡して、ツールやシステムの最適化を図っていくことが可能です。
──クライアントの課題でとくに多いのはどのようなものですか。
白子
よく見られるのは、データ統合の問題ですね。基幹システムや各部署で使っているシステム間の連携がとれていないために、データの統一的な分析や活用ができないというケースです。
金子
ほかに、情報システム部門やIT部門が選んだシステムを事業現場が使いこなせていないという悩みもよく聞きます。情シスやITの専門家は、どうしてもセキュリティ要件やテクノロジー要件を重視してシステムを選ぶ傾向があります。その結果、システムにマーケティング要件が反映されず、現場のニーズにマッチしないケースが多いわけです。
鈴木
「システムを必要としている人」と「システムに詳しい人」が別々であるというのは、どの企業にも見られる問題ですよね。その点で、システムとマーケティングの両方に知見のあるマーケティングシステムコンサルティング局のサービスは多くの企業で有効にお使いいただけると思います。
──サービスの概要を説明していただけますか。
白子
まず、クライアントの現状を「As Is」として診断し、一方でその現状に対してクライアントが「こうなりたい」と考えている「To Be」を把握します。To Beは、マーケティングツール活用の課題を解決することによって実現する姿かもしれないし、全社的なデジタルトランスフォーメーション(DX)が目指す方向性かもしれません。
その次に、As IsとTo Beの間を埋める方法を考えます。多くの企業では、As IsとTo Beの間に大きな距離があります。その距離を縮めるために、新しいツールを入れればいいのか、プラニングを考えればいいのか、あるいはUI/UXの設計を変えればいいのか──。その方法を検証して、As IsをTo Beに可能な限り近づける「現実解=Can Be」をご提案するのがこのサービスの目的です。
金子
To Beで描かれるのは壮大な将来像であることも少なくありません。そこに着実に近づいていくためには、中間KPIを決めて、それを一つずつ達成していくことが必要です。そのKPIを具体的に設定したのがCan Beです。
──アセスメントをするだけでなく、課題を解決するためのCan Beモデルを提案するところまでがサービスの射程ということですね。
白子
そのとおりです。アセスメントのレポートとCan Beモデルのデザイン。その二つがこのサービスの具体的なアウトプットということになります。しかし、そこでクライアント支援が終わるわけではありません。実装・運用フェーズに入ってからも引き続き支援させていただくことで、Can Beモデルをより確実に現実化していくことができる。そう僕たちは考えています。Can Beの内容に合わせて博報堂DYグループのリソースをご提供することもできるし、ベンダーとチームを組むこともできるし、内製化をサポートすることも可能です。
──As Isの把握はクライアントのヒアリングからスタートするのですか。
白子
そうです。ヒアリングをしながら、6つのポイント、すなわち「自社の戦略との適合性」「施策/IT化要件からのTo Be像検討」「施策結果把握/アーキテクチャ診断」「IT投資のROI」「基盤の将来性診断」「新しいテクノロジー活用の視点」で課題を整理していきます。
金子
クライアント自身も課題を把握できていないケースもあるので、ヒアリングにじっくり時間をかけることが多いですね。
鈴木
クライアントの課題は千差万別ではあるのですが、いくつかのタイプに分けることは可能です。課題のタイプ分けと、そのそれぞれに応じた解決法を用意することで、Can Beモデルのデザインづくりが効率化すると考えています。
白子
このサービスでは、ケースにもよりますが、ご相談をいただいてからほぼ3カ月でアセスメントとCan Beモデルのご提案までもっていくことを想定しています。短期間で課題を可視化し、解決法を提示するサービス。そう考えていただいていいと思います。
──クライアント側の窓口はケースバイケースとなりそうですか。
鈴木
あらゆる窓口からのご相談に対応させていただきます。比較的多いと考えられるのは、博報堂が通常おつき合いのあるデジタルマーケティングや広告宣伝部門を窓口として、そこから情報システム、CRM、アフターセールスといった他部門とお話をさせていただくといったケースでしょうか。全社的なDXが課題である場合は、経営層と直接お話をさせていただく場合もありうると思います。
白子
サービスが適合する業種・業態も様々です。マーケティング活動を行っているあらゆる企業にお使いいただけるサービスであると考えています。
──このサービスで発揮される博報堂ならではの強みとはどのようなものですか。
鈴木
先ほども触れたように、客観的立場に立って課題を把握できること、システムをマーケティング要件で捉えることができることが大きな強みと言えると思います。
金子
いろいろなプレーヤーがシステムの導入・運用の支援サービスを手がけていますが、クライアントのマーケティング課題を把握した上でシステム活用の支援ができるプレーヤーは多くはないと思います。まさにそこに博報堂の知見が生かされると考えています。
白子
もう一つ、あらゆることをクライアントファーストで考えられるのも僕たちの強みです。企業の中でマーケティングを日々実践している方々の立場に立って、最適なツールを選び、最適な運用の仕方を提案していく。それができるのは、広告会社ならではだと思います。
──今後の展望をお聞かせください。
鈴木
早い段階でクライアントと共にこのサービスを活用した成功事例をつくっていきたいですね。それによってサービスのメリットが明確になれば、より多くのクライアントにお使いいただけるようになると思います。
金子
このサービスによって、博報堂が広告マーケティング活動以外のサポートができるということをより多くのクライアントに知っていただけるといいですね。同時に、グループ内の人たちにもこのサービスがクライアント支援の新しい「武器」となることを知ってもらって、グループ全体のビジネスの裾野が広がっていけば理想的だと思います。
白子
「HAKUHODO Marsys Assessment」は、いわば「入口」のサービスです。そのあとのクライアント支援の形には非常に幅広い可能性があります。できるなら、ビジネス成果を達成するところまでを長期的に伴走させていただきたいと僕たちは考えています。そのつど最適なリソースを組み合わせながら、トータルな支援体制を継続的に提供できること。それもまた、博報堂DYグループの大きな強みです。
2014年博報堂入社。テクニカルプランニング・ディレクター。デジタル領域のビジネス開発に幅広く携わりながら、ビジネス面とテクノロジー面を考慮した全体設計・プロジェクトマネジメントを行う。近年はデジタルマーケティングプラットフォーム/データ基盤領域/サービス開発領域を中心に、様々なクライアントのプロジェクトに携わる。
2018年博報堂入社。各省庁から金融、流通、エンタメ系までジャンルを問わず、IT関連の幅広い業務を経験。最近のメインフィールドはデジタルトランスフォーメーション(DX)構想及び統括PMとしてのデジタルマーケティング戦略策定。現状分析から要件定義、情報デザイン、システムデザイン、実運用までをトータルにプロデュースすることで、 IT の効果と可能性の最大化を目指している。
2016年博報堂入社、耐久消費財系のクライアントを中心に
様々な業種にてマーケティングシステムの導入や運用業務をサポート。趣味は釣り。