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SDGsは「行動の10年」へ。今わたしたちがすべきこと ~Vol.2:ジャパンSDGsアクション推進協議会の目指すゴールとは~

2020.12.07
#CSR#SDGs
2020年7月、日本におけるさらなるSDGsの普及啓発と、「行動の10年」に沿った取り組みの推進を目的とし、「ジャパンSDGsアクション推進協議会」を発足。
会長を務める慶應義塾大学の蟹江憲史教授と、総合プロデューサーとして立ち上げに尽力した博報堂DYホールディングスCSR推進担当部長の川廷昌弘が、同協議会にかける想いや目指すべきゴールについてオンラインで語り合いました。

Vol.1:きれいごとで勝負する、本気のSDGsとは?~はこちらからご覧ください。

■SDGsの日本代表チーム「ジャパンSDGsアクション推進協議会」が誕生

蟹江
2020年7月に発足した「ジャパンSDGsアクション推進協議会」では、“みんなでつくろう、みんなの未来”をコンセプトに掲げ、これから日本のSDGsアクションを推進するさまざまな官民連携プロジェクトを展開していく予定です。SDGs普及活動のスピードを上げてSDGsの世界を実現させるために、官民さまざまなステークホルダーが集結した、いわばSDGsの日本代表チームともいえる団体です。僕は協議会の会長、そして川廷さんは総合プロデューサーという立場ですが、このお話を最初に構想されたのは川廷さんでしたよね。

川廷
はい。2017年に国連で開催されたハイレベル政治フォーラムで日本政府が発表を行ったのですが、このプロデュース業務を外務省から受託して、SDGsは官民連携で推進すべきものだということを肌で感じました。そこで次は政府ではない立場から、官民連携の事例を国連で発信する業務をプロデュースしたいと考えて動きました。2018年に神奈川県から、「顧問となってSDGs推進を後押しして欲しい」と依頼を受けたことをきっかけに一気に進展しました。まず、全国から多くのステークホルダーを集めた「SDGs全国フォーラム2019」を開催し、「SDGs日本モデル」宣言を行なって内閣府に採択を承認してもらい、神奈川県の黒岩知事がこの成果を国連で報告することとなりました。

この実績が評価されて、国連開発計画(UNDP)からアジア初の「SDGsアクションフェスティバル」開催地に神奈川県が打診されました。そこで、ぜひ蟹江さんに実行委員長のような形で参加してほしいと考えていたわけですが、ちょうどその頃、蟹江さんから、「政府のSDGs推進円卓会議の場で『まだまだ市民の巻き込みが足りないので、もっと広報に力を入れるべき』と問題提起した」という話を伺ったんです。しかもその後に、「川廷さん、何かいいアイデアはないでしょうか」とはっぱをかけられた(笑)。

2019年1月に神奈川県主催で「SDGs 全国フォーラム 2019」を開催。1200人以上が来場し、「SDGs 日本モデル」宣言を行い自治体の役割等をテーマとしたディスカッションを実施。

蟹江
そうでしたっけ(笑)。

川廷
だったら、政府の円卓会議の幹事である外務省に相談してみようと考えたんです。ただしSDGsらしい自発的で幅広い活動を可能にするためにも、あくまでも民間資金を基盤にした官民連携プロジェクトとして推進事業ができたら、と考えた。外務省もその考えに賛同して参加してくれることになり、他の省庁にも連携を呼びかけてくれたことで、民間側も経済団体を始め市民やユース団体などと座組を組んでいくことになって、この協議会が形になりました。当初から蟹江さんにはリーダーになっていただくつもりでしたが、省庁のみなさんも「蟹江さんなら安心ですね」と言ってくれました(笑)。

蟹江
川廷さんの働きかけが形になったのが、ひとつは今回の「ジャパンSDGsアクション推進協議会」発足であり、もうひとつは円卓会議内に新設された「SDGs広報分科会」ということになりますね。SDGs普及活動を進める体制は、確実に強化されつつあります。
とはいえ、SDGsが目標とする2030年まであと10年しかない。国連によってSDGsの「行動の10年」に規定された2020年ですが、コロナの影響でさまざまな活動が制限されています。なんとか普及活動促進をもっとスピードアップし、多くの人に着実にSDGsのメッセージを届け、啓発していけないだろうかと考えています。

川廷
そうですね。円卓会議の「SDGs広報分科会」には識者として声をかけていただき政府への提言をさせていただきました。そんな動きの中で「SDGsアクションフェスティバル(仮称)」に向けて、官民のあらゆるステークホルダーと手を携え、SDGsのさらなる認知拡大と、「行動の10年」に沿った活動を進めていこうと考えています。
具体的なプロモーション手法としては、まず公式ホームページ「10年後の未来をつくるノート」を開設。

SDGsアクションを始めるヒント集や最新情報の発信など、SDGsに関心がある人に興味を持ってもらえるような情報を掲載しています。また、SDGsに積極的に取り組む方々を「SDGs People」と名付け、インタビュー記事などで活動内容を紹介しています。多くの人が環境や未来のことを考えて行動していますよね。マイボトルを持ち歩いたり、日常品をリサイクルしたり、そんな方々にご参加いただいています。今後、「私もSDGs Peopleです」と誰もが気軽に発信できるような仕組みにしていきたいと考えています。

蟹江
そうですね。ぜひいろんな人に「SDGs People」になってもらいたい。実際に、これまでSDGsに向けてさまざまな活動をしてきた人たちがいらっしゃいますし、また、SDGsと声高に言わないまでも、社会貢献活動などを通してSDGs達成に大きな役割を担っている人たちが大勢います。また、特に地方の企業家などに、SDGs関連の取り組みに非常に熱心な方々もいる。そういう方々にSDGs Peopleとして参画していただき、さらには共に発信できるようになるといいですね。会社のトップが従業員との対話の中で、「自分たちの事業もSDGsに貢献しているんだよ」、「一緒にゴールを目指そうよ」と呼び掛けられるようになれば、理想的ですね。

川廷
日本国内にはSDGsにのっとって主体的に動いている人が本当に多いので、そういう人たちがつながっていき、盛り上がっていくことで、一つの大きな波にしていけたら。そうすれば日本社会らしいSDGs浸透を図るような動きが可能になるような気がします。

■世界とのつながりを意識した「SDGsアクションフェスティバル」に

川廷
2021年3月26日、27日に予定されている「SDGsアクションフェスティバル」は、「ジャパンSDGsアクションイベント」と「グローバルSDGsアクションイベント」という2つのイベントで構成されています。横浜のみなとみらい地区で行われる「ジャパンSDGsアクションイベント」の内容については検討を進めている最中ですが、基本的にはSDGsに関連するトークセッションやシンポジウム、また一般の人を巻き込むようなオープンなステージなどを通して、多くの人がSDGsに関する気付きを得て、自分ごと化する機会になればと考えています。

それからもう一つの主要イベントである「グローバルSDGsアクションイベント」は、世界各地と連携したオンラインカンファレンスとなります。国連が唱えている「BUILD BACK BETTER」、つまり新型コロナウィルスによる影響を受けている今、より良い復興を大きなテーマに、例年カンファレンスが行われていたUNDPの拠点があるドイツのボンを始めとする複数の拠点とネットワークを結び、知恵の共有をし、SDGs達成に向けて力を合わせていこうという、決意を新たにするようなカンファレンスにできればと考えています。
決して国内だけのローカルイベントではなく、世界とのつながりもきちんと意識した、グローバルな取り組みであるということがしっかり社会に伝わる形にしなければいけないですね。

蟹江
最近、豊島区長とお話をする機会があったのですが、豊島区はご存知のように、マンガやアニメ関連の拠点が多くあり、文化芸術面における世界への発信力が非常に高い区です。実現できるかはわかりませんが、SDGsの17番目のゴールに「パートナーシップで目標を達成しよう」とあるように、そうやってさまざまなステークホルダーが集結していけば、面白いモデルになるのではないかなと思います。

川廷
なるほど、そうですね。文化芸術面についてはSDGsで語られることの少なかった分野ですが、普及活動の一環として、「ジャパンSDGsアクションイベント」においてもさまざまなアート関連の展示などをおこなっていけるといいかと思います。

■純粋な気持ちで仲間とつながり、動いていけるから面白い

川廷
2030年に向けて、蟹江さんがこの推進協議会の存在価値を高める提案として「SDGs白書」を出すというものがあるんです。ですからなおさら、SDGsを進めていくさまざまな活動において、この組織はSDGsの本質を常に捉え、日本におけるさまざまな動きを巻き込みながら、SDGsアクションの中心的役割を果たせるようにいろんな方と連携していけたらと思っています。

蟹江
僕は幸いにも政策周りのさまざまな動き、情報に日々接していて、そうした動きをきちんと捉えながら、推進協議会の取り組みをその中に位置づけ、この仕組みができるだけうまく回っていくように取りまとめていければと考えています。

川廷
蟹江さんは、研究者として誰よりもSDGsに精通し、さらにSDGs推進を自ら進める実践者でもある。何より今日の対談でも明確なように、大変なアイデアマンで、柔軟な知恵を共有してくれるんです。だからこそさまざまな方面から信頼され、相談されるような存在なんでしょうね。傍から見ていると大変そうでもありますが。

蟹江
いえいえ。実際にいろんな動きが起きているさなかで、その流れを目の当たりにできている。面白いですよ。

川廷
SDGsによってたくさんの人たちと思いの共有ができ、純粋な気持ちでつながれる仲間もどんどん増えていますよね。ビジネスのためだけではなく、未来のために、みんなのために、自分のためにと思ってどんどん動いていけるから、面白くないわけがありません。ここからますます頑張っていかないといけませんね。今後ともどうぞよろしくお願いします!

蟹江
こちらこそよろしくお願いします。

蟹江 憲史(かにえ のりちか)
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授

慶應義塾大学SFC研究所xSDG・ラボ代表、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)非常勤教授。北九州市立大学助教授、東京工業大学大学院准教授を経て2015年より現職。専門は国際関係論、地球システム・ガバナンス。国連におけるSDGs策定に、構想段階から参画。SDGs研究の第一人者であり、研究と実践の両立を図っている。日本政府SDGs推進円卓会議構成員、内閣府地方創生推進事務局自治体SDGs推進評価・調査検討会委員などを務める。「持続可能な開発目標とは何か:2030年へ向けた変革のアジェンダ」(ミネルヴァ書房、2017、編著)、「SDGs(持続可能な開発目標)」(中公新書、2020、著)等、多数の著書がある。博士(政策・メディア)

川廷 昌弘(かわてい まさひろ)
株式会社博報堂DYホールディングス グループ広報・IR室CSRグループ推進担当部長

兵庫県芦屋市生まれ。1986年博報堂入社。テレビ番組「情熱大陸」の立ち上げに関わり、地球温暖化防止国民運動「チーム・マイナス6%」では、メディアコンテンツの統括責任者を務める。現在はSDGs領域の業務に専従。外務省や内閣府のSDGs関連事業などを受託。環境省SDGsステークホルダーズ・ミーティング構成員。グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンSDGsタスクフォース・リーダー。神奈川県顧問(SDGs推進担当)。鎌倉市SDGs推進アドバイザーなど委嘱多数。また、公益社団法人日本写真家協会の会員として「地域の大切な資産、守りたい情景、記憶の風景を撮る」をテーマに活動する写真家でもある。

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