こんにちは、習慣ヒットメーカーズの山本です。
本連載150回目という記念すべき節目の回に(めでたい!)、初コラムとしてデビューを飾らせていただきます。写真と音楽とすべてのユースカルチャーをこよなく愛する26歳男性として、若手ならではの視点で、ヒット習慣を発見していきたいと思います。
さて、12月です。一年の締めくくりも近づいてきました。改めて、今年の生活を振り返ってみると、圧倒的に多くの時間を、例年よりも家の中で過ごしていたという方が多いのではないでしょうか。
僕自身も在宅時間が増え、家にいながら様々な体験ができる時代になりつつあることを改めて感じました。特に今年は、エンタメ体験のイエナカ化が進んだように思います。
たとえば音楽業界では、ウイルス対策のためアーティストのライブや音楽フェスの公演キャンセルが続き、代わりに自宅でライブ体験を味わうオンラインライブが増えました。Googleトレンドで「ライブ配信」と検索してみると、2020年に入ってから検索数が大きく伸びていることが分かります。
このように、これまで家の外でしかできなかったエンタメ体験が、自宅の中で体験できるようになってきている背景を受け、今回ご紹介する習慣が「ちょい足しテインメント」です。
「ちょい足しテインメント」とは、ちょい足しとエンターテインメントをかけ合わせた造語で、エンタメ体験がイエナカ化する中で、体験に自分だけのひと手間を加えてアレンジする習慣のことを指します。
それでは具体的に、どのような「ちょい足しテインメント」が行われているのか、事例をご紹介します。
まずひとつめは、先述したライブ体験です。
今年、多くの人にとって、オンラインライブは全く新しい体験だったと思いますが、ネガティブな感想をあまり聞かなかったというのが、個人的な印象でした。むしろ、友人との会話やSNSの様子から察するに、参加した人たちはオンラインライブの体験を素直に楽しんでいるようにみえました。
SNSで、#オンラインライブと検索してみると、「ファングッズを手元に用意して楽しむ人」、「部屋の照明をライブ演出用に変えている人」、「アウトドアチェアなどのインテリアを導入しておうちフェス気分を味わう人」など、自分好みの演出を加えることで、ライブ体験のユニークなアレンジをしている人が多く見受けられました。
このようなちょい足しテインメントの事例はライブ体験以外にもみられるようです。
たとえば、自宅での映画体験です。
サブスクリプション型の映画配信サービスの登場で、映画は映画館に行かずとも、好きなときに好きなだけ見られるようになりました。そのような中、自宅で楽しむ映画体験を、自分好みにアレンジする人が増えているようです。
その手段の一つが、映画のジャンルやロケエリアに合わせて、おつまみや飲み物を決めるという、映画のお供のアレンジです。
たとえば、SNSで#おうち映画と検索すると、「フランス映画にはワイン」「アメリカの青春ドラマを見ながらピザ」といった投稿が見られます。さらに投稿内容を分析すると、映画を見る際のセッティングを、できるだけ映画の世界観に合うように工夫したいという気持ちが見えてきます。
メディアからの提案も活発になってきており、今年起こった韓国ドラマブームの際には、「韓国ドラマを自宅で100%楽しむ完璧計画」という雑誌の特集記事が組まれ、様々な韓国フードが紹介されていました。
また、フードデリバリーの登場で様々なジャンルの食事が手軽に食べられるようになったことも、こういった流れを推し進めている要因といえそうです。
ここで、「ちょい足しテインメント」の背景にある要因を考えてみます。
ひとつは、デジタル化の加速です。技術が進化し、様々なサービスが生まれるデジタル社会が進み、本来外でしかできなかった体験が、どんどん自宅でできるようになっています。
新しい通信システムである5Gが進むことでも、今後、様々な体験が自宅で体験できるようになっていくはずです。
またもう一つの要因として、SNSによる人々のクリエイター意識の高まりもあると思います。
特に若年世代にとって、SNSは単に自分の日常生活をシェアするだけでなく、自分のクリエイティビティを表現する場所にもなってきているようです。そうした中で、日常生活の中で生まれた自分の個性的な視点や工夫を、SNSで共有したいという気持ちが高まっているように思います。
実際に、自宅のライブ体験でちょい足しテインメントをしていた友人に話を聞くと、「体験をどうアレンジするか考える、創意工夫の時間そのものが楽しいし、そのアイデアをみんなに知ってほしいとも思う」とのことで、ちょい足しテインメントを、自分の創造性を発揮する時間として捉えている人も多いのではないかと思いました。SNSの果たす役割の変化を受けて、この動きはこれからさらに加速していくかもしれません。
最後に、「ちょい足しテインメント」をめぐるビジネスチャンスについて考えてみました。
まだまだ通常運転とはいかない生活が続きそうですが、僕も在宅時間が増える中、創意工夫を楽しむマインドセットで、自宅のエンタメ体験をアップデートして行きたいなと思います!
2017年に博報堂入社以来、ストラテジストとして、企業やブランドの戦略・企画立案に従事。ミレニアル世代/グローバル領域の業務経験多数。写真と音楽とすべてのユースカルチャーをこよなく愛する。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。