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【TBSスパークル那須田淳氏・岩崎愛奈氏×博報堂キャリジョ研】
明日もがんばろう!と思えるのが火曜ドラマ
『逃げ恥』『わたナギ』はどんな生き方も否定しない(後編)

2020.12.24
#インサイト#トレンド#博報堂キャリジョ研
『逃げるは恥だが役に立つ』プロデューサーの那須田淳さん、『私の家政夫ナギサさん』プロデューサーの岩崎愛奈さんと博報堂キャリジョ研による対談企画。火曜ドラマに込めた想いや恋ダンス誕生秘話などをうかがった前編につづき、さまざまな世代、性別が抱える“呪い”についてなど、さらに詳しくうかがいます。

女性の上司がお局さん的に描かれるのが気持ちよくなかった

宇平:
さきほど、若い女性は服装を気にしてドラマを見ているという話がありましたが、私は30代なので、どちらかと言うと、『逃げ恥』の百合ちゃん(主人公みくりの叔母/石田ゆり子)や『わたナギ』の古藤支店長(メイの上司/富田靖子)のようにすごく輝いているアラフィフ女性の存在に注目していました。あの二人のキャラクターにはどういうメッセージを込められていたのでしょうか?

岩崎:
少し前のドラマだと、女性の上司や先輩ってお局さん的にちょっといじわるな役に描かれがちだったと思うんですけど、それを見ていて私はあまり気持ちがよくなくて。百合ちゃんのセリフにもありましたが、いずれ自分がそうなっていく立場だということも考えましたし、その世代の人たちも、その世代なりの呪いがあって、一生懸命戦ってきたはずなんですよね。メイちゃんのお母さんも最初はちょっと癖が強い感じだったんですけど、親ってこういう気持ちだったのかというのを投影してもらえるといいなと思って。そうすることで、若い世代から見たお母さん世代やアラフィフ世代の女性へのリスペクトや理解も生まれるし、逆に上の世代の人たちが、若い子たちは今こういうことを考えながら働いているんだなっていう、相互理解につながったらいいなと思っていました。

下荻:
今回の『わたナギ』を見て、私の母も今の若い子ってこんな働き方をしているんだって知ることができて、すごく新鮮だったみたいです。

中田:
私も母と離れて住んでいますが、電話で『わたナギ』の話をすることが結構あって。ドラマを通してディスカッションすることがすごく増えたと思います。

岩崎:
そう言っていただけるとうれしいですね。

佐藤:
私は最近結婚したんですが、夫とディスカッションする機会が(笑)。お互い苦手なものは外に出して、私だけじゃなくて夫の負担も軽くする。そういう議論のきっかけになったという意味でもありがたかったです。たぶんそういう人たち結構いるんじゃないかなって思って。

岩崎:
そうなんです。今回家族で見てくださった方もすごく多かったり、女性につられて旦那さんも見るようになったりとか。あと、大森さんは男性ファンが多い方なので、そうやって『わたナギ』を見て、家事について話し合ってくださる方がたくさんいたんですよね。

いろんな立場を描くことで、想像力を働かせる “種”をまく

那須田:
ドラマではやっぱり、いろんな立場とか世代を描くことが大切だと思うんですよね。同世代の人たちしか出てこなかったら、その世界のことしか想像できないけれど、28歳なら28歳だけを生きているわけじゃなくて、みんな来年どうなるのか、再来年どうなるのかを考えている。ドラマを作るときは、やっぱりいろんなところに向かって想像力を働かせていただくための種をまいておかないといけないと思うんです。
『逃げ恥』の最終回で、百合ちゃんが若い女性に向かって言うすごく大切なセリフがあって。「私たちの周りにはたくさんの呪いがあるの」「自分に呪いをかけないで」っていう。今度の新春のスペシャルでは、男性のほうの呪いもやるんですよ。みくりと平匡に子どもができるんですが、男性は父親になる時にいろんな呪いがあるわけですね。たぶん皆さんのお父さんもたくさんの呪いの中で生きていらっしゃったけど、それを家族は気づいてくれない。結局これって男の呪いだったんじゃないの?っていうのは、今やっとみんなが気づきはじめていることなんじゃないのかなと思って。

コロナがない世界を描くことも、ドラマの役割のひとつ

中田:
いろいろなお話をきいて、火曜ドラマは、ある種の“呪い”を解くことだったり、ふと肩の荷を下ろす瞬間を作ることが使命のように感じたのですが、コロナ禍という状況の中で、どれくらい社会的な問題や今のリアルな状況を表現していこうと考えていますか?

岩崎:
世の中がコロナ禍で、やっぱ気持ちが沈んでしまうじゃないですか。私個人としては、今回の『わたナギ』のように肩の力を抜いて見てほしいコメディーだったら、コロナがない世界を描くのもありだなと思っています。それもひとつ重要なドラマの役割かなとは思っているんですね。

那須田:
コロナ禍の状況になって、やはりいろんなことが起きたと思うんです。例えば病院ではこんなことが起きていたとか、みんなが知らないところを見せるのにドキュメンタリックなドラマはとっても大事かなと思うんだけど。でもドキュメンタリーに徹しすぎて、みんながマスクして出てきても、はっきり言って俳優さんの表情がよくわからないから、うまく伝えるのはとても難しい(笑)。じゃあ、マスクなしで今の時代を描くにはどうしたらいいと思いますか?

瀧川:
えっと…リモートで撮るとか?

那須田:
いや、もう会社を描かないんですよ。今までは仕事がないとお話がはじまらなかったじゃないですか。だから会社ばっかり出てくるんだよね。でももう、それすら呪いだったんじゃないのかって、みんな気づいているわけです。テレワークでも問題なかったみたいな。
だから、会社を描かなきゃはじまらないお話はもうあまり求められてないんじゃないのかなと思って。家帰ったらみんなマスク外しますよね。だから、家を描けばいいんだと(笑)。

瀧川:
なるほど!おもしろい(笑)。

足りないところはチームの力を借りる。それがドラマにふさわしい作り方

下荻:
私、最後にひとつ聞きたいことがあるんですが。最終回のエンドロールに、協力でキャリジョ研の名前を出していただいた並びに「おじさん監修」という肩書きで那須田さんのお名前が入っていた気が…

岩崎:
気づいてくださったんですね!気づいてくださる方がいるのを楽しみに入れてたんで、うれしいです。
裏事情をお話すると、私がまだ新人プロデューサーだったもので、大先輩の那須田にいろいろとアドバイスをもらっていたんですけど、那須田がクレジットには名前を入れなくていいってずっと言っていて。でも立ち上げの時から相談に乗ってもらっていたので、どうしても名前を入れたくて。プロデューサーのところには入れるなと言うので、じゃあ何か違う形なら、と考えたのが「おじさん監修」だったんです(笑)。

那須田:
自分も若いときは勝手がわからないことも多かったし、長いことやっているからこそわかることもある。だから、なにかを決めたりチャレンジする時には、背中を押してくれる人がいたほうがいいと思うんです。
『逃げ恥』でも細かい家事分担を夫婦で話し合うことでクリアしたし、『わたナギ』でも、家政夫がやることは家事だけじゃなくて、いろんなことを話す相手ですよね。
ドラマには脚本家もいれば、プロデューサーもいて、ディレクターもいる。考え方や生き方が違うたくさんの人たちがいるから、いろんな意見を聞きながら選んでいくっていうのは、ドラマにふさわしい作り方だと思っています。
足りないところはみんなチームの力を借りてやればいい。それは、これからの生き方もドラマ作りにも変わらない大切なことですよね。

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Information

那須田プロデューサーの手掛ける『逃げ恥』に待望の続編が!
父親になる平匡を苦しめる“男の呪い”とは!?
キープディスタンスで“ハグの日”はどうなる!?
多様性を大切に描く『逃げ恥』ならではの視点にご注目ください!

2021年1月2日(土) 21時
『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』

プロフィール

那須田 淳
TBSスパークル
取締役
エンタテインメント本部長

岩崎 愛奈
TBSスパークル
エンタテインメント本部
ドラマ映画部
プロデューサー
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