こんにちは。ヒット習慣メーカーズの永井です。
東京では厳しい冬は去り、春の訪れを感じさせる暖かい日々が続く今日この頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。まだまだ先行きの見えない自粛生活が続き、天気はいいのに一日中お家に籠ってしまう、そんな方もいらっしゃるかと思います。僕もそのうちの一人で、日々テレワークに勤しみ、ストレスを感じることもある家ナカ時間を過ごしています。
そこで、今回ご紹介するテーマが「付加香力(ふかこうりょく)」です。
テレワークの過労や自粛疲れによるコロナストレスが危惧されるなか、生活シーンに「香り」の力をプラス(付加)することで、日常をストレスなく快適なものにしようというお話です。まずは下記のGoogleトレンドをご覧ください。「フレグランス」の検索数の推移を見てみると、緩やかではありますが年々上昇傾向にあり、コロナ禍以降、その注目度はより一層高まっていることがわかります。
僕自身も数年前からメゾンフレグランスにハマっており、香りの力を取り入れて、できるだけストレスフリーに過ごそうと模索しているので、今回は生活者行動をウォッチするなかで見えてきた、今すぐ実践したい「香りハック」をご紹介します。
ひとつ目は、「シャワータイム+香力」です。
本来部屋に使用するフレグランススプレーを、シャワーを出しながら浴室に噴射し、香りに包まれながらシャワーやバスタイムを楽しむというものです。こちら我が家でも実践してみたところ、体感で通常の何倍もの香りが沸き立ち、とてつもない幸福感に包まれました。簡単かつ時短でリフレッシュできるので、忙しくてゆっくりと湯船に浸かることができない方に、ぜひ試していただきたいです。
二つ目は、「手洗い+香力」です。
香りにまつわるエピソードについて周囲にヒアリングしてみると、香り効果で子どもに手洗いを習慣づけさせたという友人がいました。感染予防として、手洗いの重要性が高まっている昨今ですが、小さな子どもがいる家庭では、子どもにしっかりとした手洗いを習慣づけさせるのが難しかったりするかと思います。そういったなかで、これまで使っていたハンドソープを、残り香を楽しめる少々お高めなもの(500mlで4,000~5,000円程度)に思い切って変えてみたところ、子どもがしっかりと手洗いするようになった、とのことでした。目に見えないウイルスを除菌するための「作業」だった手洗いですが、「好きな香りをまとう」という目的に変わったことで、子どもの意識変容と習慣化を促したのだと思います。
最後にご紹介したいのは、「マスク+香力」です。
こちらは文字通り、マスクに香りをつけるというものです。コロナ禍によってマスクが当たり前の社会となりましたが、同時に長時間着用によるストレスとマスク内の臭いが気になるという問題も顕在化してきました。そこで、除菌や消臭だけではなく、香りづけ効果のあるマスク用スプレーが、にわかに注目を浴び始めているようです。同様の事例をSNSで探してみたところ、専用スプレーではなく、食用の柚子を活用するという強者も発見しました。その方は、地方に住んでいる祖母に教わったとのことでしたが、未使用の不織布マスクを柚子などの香味果物に包んで香りづけしているそうで、まさにおばあちゃんの知恵袋ですね。
さて、いくつか付加香力の事例をご紹介してきましたが、なぜ今この傾向が強まってきているのでしょうか。
ひとつは、コロナストレスで求められているメンタルヘルスのなかで、香りは最も本能的だからではないでしょうか。嗅覚への刺激は、視覚や聴覚より脳への伝達速度が速いといわれており、原始的に感情に訴えかけるものです。現代では日々膨大な量の情報を浴びて脳が酷使されるので、理屈なしに判断できる右脳的なものがより好まれやすくなっているからだと思います。
もうひとつは、自分の生活ルーティンを変えずに楽しめるからではないでしょうか。音声メディアの「ながら時間」が注目されているように、日々忙しい生活者にとって、隙間時間での新たな行動喚起は難しくなってきています。しかしながら、香りや匂いは音声同様、情報スペースに余白があり、加えて日常の生活ルーティンとも結びつけやすいため、生活者に受け入れられているのだと思います。
最後に、「付加香力」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。
上述した通り、僕自身も日々の煩悩対策として香り力を養っている途上ですが、個人的なメンタルヘルス研究にとどまらず、日々のクライアント業務にも活かせればなと思う、今日この頃です。
2018年北海道博報堂に入社し、2020年博報堂統合プラニング局に出向。
入社以来、マーケティング職に従事。アンダーグラウンドからメインストリームまで、新たな生活者インサイトを発掘すべく、日夜どこかの街を徘徊している(現在は自粛中)。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。