毎回、様々なテーマで10〜15年先の日本の未来像を描き出す「みらい博」。
今回のテーマは「信頼」です。
講演のはじめに、石寺所長より、ご挨拶と今回のテーマ「信頼」について、様々な角度から紐解いて紹介しました。
今回のテーマにつながる、生活者の「信頼」を取り巻くマクロレベルの環境変化について、佐香上席研究員よりご説明しました。
1)「人」との関わりの変化
人口減少や単身で生活を送る人の増加などによって、人と関わる「機会」が減少
ひとりの時間を求め、他者との交流を避ける意識の高まりから、人と関わる「意欲」が減退
→人との関わりが「疎」になっていく
2)「情報」のやりとりの変化
個人が接するネット情報量が急増、トラブルも増えるなど、情報の氾濫で「摩擦」が増加
コロナ禍を機に、リモートでのコミュニケーションなど、非接触化の進展で「情報の質」が低下
→人との「相互理解」が難しくなる
将来的にこれらの変化が続いていくことで、
人と人とが“わかりあう”ことが難しい、不信と疑心の社会に陥る可能性も。
上記の問題提起に対して、生活者はこの課題をどのように乗り越え、未来の「信頼」を模索していくのか。続くパートでは、そんな「信頼」のゆくえについて、定量調査や未来へのきざしを感じさせる生活者へのインタビュー調査結果も交え、三矢上席研究員がご説明しました。
<「信頼」の未来を決める2つの論点>
論点1)「関係構築」の考え方
わかりあうことが難しい社会で、他者とどのように関わっていくか?
■ 限られた相手と関係を深めたい=他者との関係を「しめる」
■ 幅広い相手と関係を広げたい=他者との関係を「あける」
他者との関係を「しめる」か?「あける」か? 生活者が10年後に望むあり方は両者が拮抗
→10年後の「信頼」は、「関係構築」の考え方しだいで2つに分かれていく
論点2)「情報共有」の考え方
わかりあうことが難しい社会で、自分の情報をどう伝えるか?
■ 取捨選択して伝えたい=自分の情報を「しめる」
■ ありのまま伝えたい=自分の情報を「あける」
自分の情報を「しめる」か?「あける」か? 生活者が10年後に望むあり方は両者が拮抗
→10年後の「信頼」は、「情報共有」の考え方しだいで2つに分かれていく
「4つの信頼」の導出
「関係構築」と「情報共有」、それぞれの考え方について、「しめる」か「あける」かで価値観が分かれていく
シナリオ・プラニング手法を使い、価値観の分岐軸を直行させることで、4つの未来シナリオを導出。
このパートでは、未来に生まれる「4つの信頼」と暮らしの風景について、堀所長代理からご説明しました。
また今回、未来シナリオ策定で協働したデザインファーム「IDEO Tokyo」から、Senior Environments DesignerのCory Seeger氏(ビデオ出演)、Visual Communications Designerの横田未緒氏の両名に、ゲストスピーカーとしてお越しいただきました。
(参考:IDEO Tokyo企業サイト https://jp.ideo.com/ )
<未来に生まれる「4つの信頼」>
1)「公開」でつくる信頼
自分の情報を広く開示し、データを公共財として利用する
見知らぬ人とも臨機応変に助け合う暮らしが広がる
→「公開」でつくる信頼によって、思いがけないめぐり合わせが得られる
2)「濃縮」でつくる信頼
自分の情報を限られた相手と濃密に共有し、自分以上に自分を知る仲間をつくる
安心して新しいことに挑戦できる暮らしが広がる
→「濃縮」でつくる信頼によって、新しい挑戦への勇気が得られる
3)「自立」でつくる信頼
限られた相手と、目的と貢献度だけを共有し、知らないからこその最適なチームをつくる
一人では不可能な目的を達成できる
→「自立」でつくる信頼によって、想像を超えた目的の達成が得られる
最後に、再び石寺所長が登壇し、ここまでの発表を受けての総括と、企業に求められる考え方などについて、提言を行いました。
なお今回の講演は、リアルタイム・アンケートによる参加者とのインタラクティブなやりとりも交えて行われました。講演終了後、参加者からは、
などのお声をいただきました。
博報堂生活総合研究所は今後も、生活者のきめ細やかな調査研究を通じて、よりよい未来を提言する活動を続けてまいります。