博報堂インドネシアは2003年に設立され、現在100名以上の社員が博報堂グループのフィロソフィーである生活者発想とパートナー主義の精神を体現しています。ここ数年、そのクリエイティブ力の向上は目覚ましいものがあり、今回のADFESTの他にもThe One Show 2021でも複数のメダルを獲得するなど、勢いを増しています。
WoonとKKがマレーシアから、Fajarがインドネシアからインタビューに応じてくれました。
ADFEST 2021では、「Flavour of Home」「Little Light」「#CloseTheGap」の3作品でメダルを獲得しました。最初に、Outdoor Lotus: Retail部門で銀賞を受賞したSushi Sei(鮨清)の「Flavour of Home」キャンペーンについて語ってもらいました。
KKは、「我々のクライアントであるSushi Seiのキャンペーンは、昨年に続き2度目の受賞になります。本格的な日本料理を手頃な価格で提供しており、ジャカルタに駐在している大勢の日本人顧客から愛されています。」と語ります。
新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンや渡航禁止措置で、ジャカルタに滞在している日本人は帰国できず、母国の文化を恋しく思っていました。キャンペーンでは、ポスターや新聞広告、インスタグラムの動画などを使用して、Sushi Seiが本格的な母国の味を提供していることを思い出してもらえるようにしました。
一つ一つの寿司が家の形をしており、一見とてもシンプルに描かれているように見えるかもしれませんが、試行錯誤を繰り返した末のベストな表現方法です。
アニメ作品の「Little Light」は、New Director Lotus: Commissioned Spot部門銅賞を獲得しました。この作品は1987年から毎年開催されているインドネシア最大の広告祭Citra Pariwaraのプロモーション用に制作されたものです。
博報堂インドネシアは、2019年のCitra PariwaraでAgency of the Yearを受賞したことから、当広告祭の2020年度プロモーションビデオ制作を任されることになりました。Woonは、「このビデオは広告祭の応募を呼びかけるキャンペーンです。博報堂インドネシアは既にAgency of the Yearを過去5回受賞しており、実はこれまでにも同プロモーションビデオを5回制作しています。今回、まさかそれが賞を獲得するとは想像していなかったので、思わぬご褒美が貰えたようで、ラッキーでした!」と言います。
https://www.youtube.com/watch?v=xXXWzNzg4Ws
Fajarは「2Dアニメーションを使い、記憶に残る魅力的なキャラクターとストーリーができました。作品のテーマは『お互いを大切に思う人々』と『光のように輝くクリエイティビティ』です。
2020年のCitra Pariwaraはコロナ禍により初めてオンラインで開催されました。どんな状況でも輝きを放つホタルと、ホタルとふれあう少年の姿。そして彼らが村の人々の生活を明るく幸せにする様子を描きました。この作品は、ロックダウンのなかで、インドネシアの制作会社、Think Tankの仲間たちと数々の課題を乗り越えながら創り上げた作品だったので、一緒に受賞を喜びあいました。」と語りました。
ADFEST3つ目の受賞作品は、She Radio 99.6 FMのために制作した「#CloseTheGap」です。このラジオ局の視聴者は女性が80%以上という特徴があります。
クライアントからは、極めてタイムリーな社会問題である“男女間の賃金格差”について取り上げて欲しいという課題が与えられました。
KKは、「She Radioは、女性問題を支援するCSRプロジェクトを数多く実施しています。このキャンペーンは新聞広告から始めたのですが、さらにインタラクティブ性を高め、魅力的なしくみを加えたいと考えるようになりました。そこで、自分の写真の性別を女性から男性へ、あるいは男性から女性へと変えられる人気アプリFaceAppを活用することを思いつき、携帯やソーシャルメディアで共有してもらえるような設計にしました」と語りました。
これは瞬く間に人々の関心を集め、有名人やインフルエンサーも参加し、インドネシアにおける男女間の賃金格差を埋めるためのオンライン請願書につながりました。現在は教育プログラムにも使用されています。
ADFESTでの受賞後、Woon、KK、Fajarの3人にとって嬉しいニュースが続きました。6月には、広告やデザイン、デジタルマーケティングの分野で卓越した作品を表彰する権威ある国際賞であるThe One Show 2021で、Sushi Seiの「Flavour of Home」が金賞を3つ、銅賞を1つ獲得という輝かしい成果をあげました。
「Flavour of Home」は、受賞作品のポイントで企業や個人の順位を決めるOne Show 2021 Rankingsにおいて、Highest Ranked Workの2部門(Out of HomeとPrint部門)で世界2位を獲得しました。また、タイトル別のクリエイティブランキングでは、本作品に関わったクリエイター6名が、それぞれの部門でアジアパシフィック地域の5位以内に入りました。もちろん、この6名の受賞者の中にWoon、KK、Fajarも入っています。
WoonとKKはマレーシアを、Fajarはインドネシアを拠点に活動しています。新型コロナはチームやクライアントとの仕事の進め方に大きな影響を与えました。「コロナ以前、私たちはブレーンストーミングを頻繁に行い、会議室に座って何時間も話していることもありました。
現在はオンラインミーティングが多いのですが、いつも時間に追われていて、せかされているような気持ちになります。家で仕事をしているんだから、もっとミーティングを入れられるんじゃないかなどと思われることも!」とWoonは苦笑いを浮かべ、あとの二人も頷きます。
Woonは、「ビデオプレゼンテーションをオンラインで行うと、タイムラグがあってイライラしたり、ボディランゲージや表情が見えにくく、他の人の反応が見えなくて、やりにくさもある。それでも自分がこのような問題に直面しているのなら、他の人たちもみんな同じなはず。どうにか適応して国外のチームと協力しながら仕事を進めています」と述べました。
KKも同意し、「在宅勤務という働き方にはもう皆、慣れました。ロックダウンが実施されることにより撮影の許可が下りなかったり、直前にオリエン内容が変更されたり、最悪の場合、キャンペーン予算が急きょ削減されたりもします。いずれにしても、あらゆる事項に対して、短時間で迅速に調整することが求められます」と説明します。また、移動が制限される中で、対面でのミーティングを重要視するクライアントとの良好な関係構築を維持し、強化することも決して怠っていません。いかなる障害があっても、博報堂インドネシアではみんなが前向きな姿勢を持ち続けています。Fajarは、「Citra Pariwaraの『Little Light』キャンペーンのように、クリエイティビティによって前に進み続けることができると信じています」と笑顔で語りました。
Woonは、「会社が上手くいくかどうかは、ビジョンを定めて進むべく道を描くリーダーたちにかかっていると思います。その点において、Hakuhodo International Indonesia の経営陣4名、Irfan Ramli, Ferti Wiratih, Mahendra Suyono, Devi Attamimiが博報堂インドネシアの企業文化を支える柱となっています。私が15年前に入社した当時、博報堂はインドネシアでは無名でした。Hakuhodo International Indonesiaの会長であるIrfan Ramliは、クリエイティブエージェンシーとして高い評判を得る、という明確なビジョンを持ち、広告賞などで高い評価を得て、そのクリエイティビティを証明する必要性を明確に示し、実績をつくるようミッションを与えてくれました。」と語りました。
3人とも、博報堂インドネシアチームメンバーを思いやり支えるチーム文化と、それによって生まれる家族的な雰囲気があると話します。
Fajarは、博報堂グループでの13年間を振り返り、「社員には自分のスキルを伸ばし、自分の能力を証明する機会が与えられていることに感謝しています。私たちは単なる同僚ではなく、家族のような深い結びつきを感じています。」と語りました。
今後のインドネシアの業界の動向と課題について、Fajarは次のように述べました。
「市場における競争は激化しています。規模の大小に関わらず様々な競合企業が、大口クライアントに対して価格などを武器に日々アプローチしています。一方、私たちはクライアントの期待を超える“別解”の提供に日々邁進しています。」
Woonは、社会のオールデジタル化により、生活者は、すぐに欲求を満たしてくれるスピード感を求めていると指摘します。「今、クライアントが私たちに期待するものも、迅速な提案や機敏なアクションです。オリエンからプレゼンテーションを行うまでの全過程を加速する必要があります。以前は4~6週間かけていたものが、今では1~2週間でやるように求められるのですから、私たちは常に考え続け、可能な限り最高の人材で臨まなくてはいけません。」と続けました。
KKは、「メディアの状況は変化し続けていますが、私たちはこれまでと同様、生活者発想に基づいたクリエイティブなアイデアを生み出していくことがすべてです。デジタル時代の到来は恐れるものではなく、ターゲットにリーチするための取り組みをさまざまなカタチでサポートしてくれるものです」と語りました。
Woonも、「従来メディアであれデジタルメディアであれ、優れたクリエイターはメディアそのものに適応できます。重要なのはクリエイティビティであり、人を惹きつけるコンテンツです。 そしてどんなに厳しい状況でも、情熱が必要です。情熱があるのなら、スキルを磨いて行動に移し、楽しめばいいのです」と同意しました。
KKは、最高のアイデアが出てくるまで、自分自身とチームのために前進し続けたいと言います。またFajarは、「どのような壁が立ちはだかろうとも、クリエイティビティには限界はありません。私たちは可能性の実現に向けた挑戦を続けていきたい。」と付け加えました。
博報堂インドネシアのエグゼクティブクリエイティブディレクターを務めた後、現在はインドネシア、マレーシア、シンガポール担当チーフクリエイティブオフィサーを務める。Woonの指揮の下、インドネシアでのエージェンシーオブザイヤーを5回受賞。昨今は、若手人材の育成に専念しており、近年Woonが率いるチームが、The One Show、New York Festivals、London International Awards、Clio Awards、Citra Pariwara、Kancil Awards、LongXi Awards、ADFEST、Spikes Asia、Cannes LionsなどでBest of Showや金賞を含む数多くの賞を受賞している。尊敬を集めるクリエイティブとして、世界および地域の広告賞の審査員を定期的に務めている。
シンガポールでキャリアをスタートし、複数のエージェンシーを経て2002年にマレーシアに戻る。2016年、博報堂インドネシアのエグゼクティブクリエイティブディレクターに就任し、2019年にリージョナルエグゼクティブクリエイティブディレクターとしてタイに移る。これまでに、D&AD Awardsでペンシルを5つ受賞した他、Cannes Lions、The One Show、Clio Awards、London International Awards、Spikes Asia、ADFEST、New York Festivalsを含む数々の国際的な広告祭で230回以上受賞。また、Campaign Brief Asiaのクリエイティブランキングにおいて2017年、2018年、2020年にインドネシアにおけるNo.1クリエイティブに選出されている。
アートディレクターとしてキャリアをスタートし、2008年に博報堂インドネシアに入社。2020年にクリエイティブディレクターに就任し、ローカルおよびグローバルクライアントのために革新的なキャンペーンを制作している。Campaign Brief AsiaのインドネシアにおけるHottest Creativeランキングで2017年に6位、2018年に4位を獲得。また、Citra Pariwaraで数回グランプリを受賞した他、ADFESTやAD STARSで複数の賞を受賞し、D&AD AwardsでもGraphite Pencilを獲得するなど、業界で高く評価されている。クリエイティビティによって人の行動や人生を変える方法に限界はないと考え、将来の可能性を生み出して真の変化を起こすことに情熱を注いでいる。