池田善行
博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
庄司健一郎
博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
──「GRIP & GROWTH」とはどのようなソリューションなのですか。
池田
クライアントのDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するために、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ、DAC(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム)のグループ3社によってつくられた横断戦略組織が「HAKUHODO DX_UNITED」です。「GRIP & GROWTH」は、その組織が提供するBtoB企業向けのソリューションです。
この数年、データを活用するなどして営業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組むBtoB企業が増えてきました。コロナ禍で対面営業が難しくなったこともあって、その動きはさらに加速しています。そこで、BtoBビジネスに特化した支援ができないかと考えたのが、GRIP & GROWTH開発の発端でした。HAKUHODO DX_UNITEDと博報堂DYグループ8社の連携によって、この7月からソリューションの提供をスタートさせています。
──具体的なコンセプトについてお聞かせください。
池田
博報堂DYグループは、生活者の立場に立ってビジネスを考える「生活者発想」を長年掲げてきました。これをBtoBビジネスに当てはめると「顧客発想」ということになります。クライアント企業の顧客が何に悩み、何を求めているかを深く理解し、それをクライアントが解決していくお手伝いをすること──。それが「顧客発想」です。
BtoBビジネスにおける成果は、見込み顧客にアプローチし、商談を成功させ、売り上げにつなげるところまでを含みます。GRIP & GROWTHは、マーケティング戦略支援だけでなく、セールス支援、クリエイティブまでを含むトータルソリューションです。BtoBビジネスをフルファネルで支援できること。それが、GRIP & GROWTHの大きな特徴です。
GRIP & GROWTHのもう一つの特徴は、「ビジネスコミュニティ」をつくることを志向しているところです。社会課題と産業構造が複雑化している今日、パートナーシップの重要性がいっそう増していると僕たちは考えています。顧客に対して一方的に価値を提供するのではなく、顧客とともに価値をつくり出し、ウィンウィンの関係をつくること。それがすなわちBtoBビジネスにおけるパートナーシップであり、そこから生まれるのがビジネスコミュニティです。そのようなコミュニティをつくることをGRIP & GROWTHは支援します。
──BtoBビジネスにおける「顧客発想」の考え方を詳しくお聞かせください。
池田
BtoBビジネスがBtoCと大きく異なるのは、個人ではなく、企業という組織体にアプローチする点です。個人に人格があるように、企業にも人格があります。BtoBビジネスでは、「3つの人格」を想定しなければならないと僕たちは考えています。すなわち、「企業」「担当者」「意思決定者」です。
企業には各社それぞれのキャラクターがあります。それをまずは理解しなければなりません。一方、実際にビジネスを動かしているのは現場の担当者であり、その上位にいる意思決定者です。担当者と意思決定者のミッションは異なるのが普通です。例えば、担当者がビジネスの効率化を目指しているとすれば、意思決定者は投資対効果の向上を目指している。そんな違いです。そのミッションや関心ごとの違いをしっかり把握したうえで、情報提供や提案をしていく必要があります。それが、僕たちが言う顧客発想です。
重要なのは、人格の違いを意識したうえで、「ストーリー」に一貫性を持たせることです。現場担当者向けの情報提供を行うのは、多くの場合マーケティング部門です。それに対し、商品やサービスの機能、価格、ベネフィットなどを担当者や意思決定者に伝えるのはセールス部門です。しばしば見られるのは、マーケティングが表現するストーリーと、セールスが伝えるストーリーの間に齟齬があることです。そのギャップが生じないような適切なアドバイスをご提供するのが、僕たちの一つの役割であると考えています。
──「BtoBビジネスをフルファネルで支援する」という話がありました。それによって生まれるクライアントメリットとはどのようなものですか。
池田
博報堂は広告会社なので、広告を中心としたサービスを提供すると思われがちです。しかし、クライアントが顧客企業にアプローチする最良の方法が広告コミュニケーションであるとは限りません。GRIP & GROWTHが目指すのは、売り上げにつながる戦略をつくり、商談を成立させることです。そのためには、広告はもちろん、さまざまなコミュニケーションの方法を駆使し、さらに営業、成約までをご支援していくことが必要だと僕たちは考えています。
これまでのBtoBビジネスにおいて、マーケティングとセールスが緊密な連携をとるケースはあまりありませんでした。しかし、DXが進んだことで、マーケティングとセールスが顧客データを共有し、チームとして動くことができるようになりました。例えば、マーケティングがリードを獲得し、そのデータを営業に渡していくという流れがつくれることはもちろん、逆に営業が必要とする顧客像をマーケティングに伝え、それをもとにマーケティングが見込み顧客を探し出すという「逆転のフルファネル」も可能になっています。GRIP & GROWTHをお使いいただくことによって、そのようなトータルなモデルづくりが実現します。
──このソリューションにおいて、博報堂DYグループのクリエイティビティはどのように発揮されていますか。
庄司
「顧客発想」とは、担当者や意思決定者がどのような課題を持っていて、どうやったら幸せになるかを考えることです。その発想を具体的な「表現」に変えていくのがクリエイティビティです。「表現」には、いわゆる広告クリエイティブだけではなく、コミュニケーションのためのさまざまなコンテンツ、あるいは戦略づくりやクライアントの組織内のインナーブランディングまでが含まれます。フルファネルのモデルの中で、そのような表現を生み出すことができるのが博報堂DYグループの力であると考えています。
──B2Bにおけるコンテンツの考え方についてもお聞かせください。
庄司
クライアントの顧客企業は、自社にとって最も必要なパートナーを常に探しています。たくさんのパートナー候補の中から選んでもらうために大切なのは、「常にそばにいる存在」であり、そのために必要なのが「役に立つコンテンツ」です。
はじめから「商談の機会を得よう」とか「成約を実現しよう」と考えるのではなく、まずは自社がもつナレッジを有効に活用して、顧客にとって役に立つコンテンツをつくり、顧客が「情報がほしい」と思ったときに、いつでもそのコンテンツにアクセスできる。それが「常にそばにいる」ということです。
顧客のそばにいることによって、役に立つことができれば、確かな信頼感が醸成されます。実際に相談する前に「この会社なら相談してみたい」と思ってもらう。そのためにコンテンツは大きな力を発揮します。そのコンテンツづくりにも博報堂DYグループのクリエイティビティや生活者発想を応用した「顧客発想」が活かされると僕たちは考えています。
──「役に立つコンテンツ」には、具体的にどのようなものがあるのですか。
庄司
主に3つのタイプに分けられます。1つ目が、仕事の効率化の方法や、仕事に役立つツールなどを紹介する「ビジネスコラム」、2つ目が、業界のトレンドや専門家のインタビュー、用語集などをコンテンツ化した「ビジネスナレッジ」、そして3つ目が、事例紹介記事、セミナーなどの動画、業界の知識を深く学べるEブックなどの「ラーニングコンテンツ」です。いずれも、自社のソリューションやテクノロジーを起点とするのではなく、あくまでも「顧客にとって有用な情報は何か」という視点でコンテンツをつくって発信していくことが重要です。
──コンテンツの展開方法についてもお聞かせください。
庄司
それも主に3つの方法があります。オウンドメディアを使う方法、マスメディアや専門メディアと連携する方法、ニュースなどのプラットフォームを活用する方法です。コンテンツのタイプや、誰に対してコンテンツを提供するかといった視点で展開方法を考えていくことが大切で、そのプランニングにも博報堂DYグループのノウハウをお使いいただくことが可能です。
──最後にあらためて、BtoB企業のビジネス支援にかける思いをお聞かせください。
池田
BtoBビジネスには、BtoCよりもプロダクトアウトの発想が根強くあります。製品やサービスを開発するのにはたいへんな時間やコストが必要とされるので、そのぶん、いかに技術や機能が優れているかを伝えたくなるのは無理もないことだと思います。しかし、これからのBtoBビジネスで成果を上げていくには、その発想を変えて、顧客視点を徹底する必要があります。その発想の転換をぜひお手伝いしていきたいというのが一つ。
それから、マーケティングとセールスの連携をなかなか進められないという課題にもぜひ応えていきたいと考えています。とくに大企業は、組織の壁があるためにその課題をなかなか自力では解決できないというケースが多いと思います。GRIP & GROWTHによって、その課題解決を支援していきたいというのが二つめです。
もう一つ、GRIP & GROWTHにはDX支援の側面があることもお伝えしておきたいと思います。BtoBビジネスでは、顧客データ、マーケティングデータ、アドデータの3つを統合してカスタマーデータプラットフォームをつくることが非常に重要です。その構築支援をさせていただけることはもちろん、すでにプラットフォームは構築しているけれど有効に活用できていないというケースもぜひご相談いただきたいと思います。
もちろん、データはあくまでもツールであり、重要なのはそれを使っていかに顧客の課題を解決するかです。データ構築、データ活用、顧客課題の解決までを視野に入れたDX支援を進め、クライアントのBtoBビジネスの成功のお役に立ちたい。そう考えています。
≪「BtoBビジネスのDXの課題を解決するために」につづく≫
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