―「キャリジョ研AD」を開発したきっかけは?
瀧川
広告をプランニングする側の視点で言うと、デジタル広告のターゲティングは性別や年齢、関心ごとなど、プラットフォームが持っているざっくりとした分類に頼るところが大きく、あまり細かく設定できないことにモヤモヤを感じていました。結果、企画書の前段で語っていたターゲットと、実際に配信しているターゲットが違ってしまっていたり。
白根
新商品など認知を獲得するための広告は打ちやすいけれど、例えばコスメの情報感度が高い層に向けてコスメの広告を届けたいとなった場合、デジタルのなかでそのフラグを見つけるのはとても難しいですよね。そういう意識ベースのターゲティングをするために、SNSの利用に関する調査を絡めて広告メニューをつくれないかと考えたのがきっかけです。
―ユーザー視点からいまのデジタル広告について感じることは?
矢田
テレビの場合、CM枠というのがあるので「ここからが広告」と認識しやすい気がするのですが、SNSの場合はそのSNSフォーマットに馴染んだかたちで配信されることが多いので、あまり広告と意識していない人が多いように感じます。
佐藤
調査でも、広告かどうか特別意識しないという声をききました。とくに若い世代はその傾向があるようですね。
瀧川
30代以下ではアルゴリズムを理解して使っている方が多いようで、例えば化粧品の情報がほしい人は、コスメブランドのアカウントに積極的に「いいね」をしてタイムラインを自分仕様にカスタムしていくなど、広告とうまく付き合っているようです。
白根
「いいね」や「保存」をコントロールして自分仕様にカスタムしていくというのは、ユーザーがもう普通にやっていることだと思います。そのなかでも、自分は検索しがちとか、インフルエンサーをチェックしがちとか行動パターンはいろいろあると思います。自分ではそこまで意識していないので、もしその行動パターンに則した広告が配信されるようになったら、もっと心地よく情報を受け入れてくれるのではないかと仮説をたてました。
すでに認知型の広告手法は多くありますし、購入に近い部分もリターゲティングなど打ち手がある。ただ、その真ん中にあるミドルファネルでどう機能させるかがクライアントの課題です。このフェーズの行動を丁寧に分析して、特性に応じたアプローチをすれば、ユーザーとクライアントとの間にいいコミュニケーションが生まれるんじゃないかと考えました。
佐藤
調査を進めるなかで、検索やインフルエンサーの情報をもとに購入まで結びついているケースが多いことを確かめられて、この仮説はいけるな!と実感しましたよね。
【キャリジョ研の調査から導き出した4つのSNS行動パターン】
■すぐにシェア・拡散タイプ
ハッシュタグをつけて投稿したり、広告も情報のひとつとして拡散する、行動力のあるタイプ。発信するネタを探しているので、新商品やイベントの情報などがよろこばれる。
■ハッシュタグ検索タイプ
話題のアイテムや気になる商品はSNS上で検索をかけ、情報収集するタイプ。「敏感肌」など商材のカテゴリーを検索するケースも多く、意識ベースのターゲティングが可能。
■インフルエンサー全信頼タイプ
気になる商品は、購入前にインフルエンサーの投稿を確認。インフルエンサーが使っていることが後押しになり購入に結びつくケースが多く、購入意欲に大きく影響する。
■すぐにポチッとタイプ
商品購入の意思決定をSNSで行い、インスタグラムなどでそのまま購入することも。ファストファッションや料理教室の情報などに関心が高い。
―調査を進めるなかでどんな“気付き”がありましたか?
瀧川
みんな意外とInstagram経由で買い物しているんですよね。ショッピング機能で直接購入する以外は数字として見えてこないのですが、実体験としてかなり購入に近いところにあると思います。流行っている商品があるときいたらInstagramで検索して、インフルエンサーが使っているのを確認して購入したり。
佐藤
定性調査でも、Instagramの広告を見て購入したという人がかなりの人数いました。車のような高価格帯の商材もInstagramが判断材料になっているときいて、ちょっと驚きましたね。
瀧川
Instagramは特に、ブランドのアカウントでたくさんの商品を見せたり、世界観を表現することができるので、ブランドそのもののファンになってもらうことができる。ひとつの商品を買うというだけでない広がりが期待できるプラットフォームだと思います。だからこそ、広告も商品訴求をそのままするのではなく、Instagramの文脈にあわせた表現にすることが求められていると思います。
―今後、キャリジョ研ADを通じて、デジタル広告のどんな未来を描いていますか?
矢田
“届けたい人”に“届けたい情報”を送ることで、広告を普通の投稿のように見てもらえるようになると思っています。広告に対する抵抗感なく、受け取ってうれしい、役立つ情報だと思ってもらえる未来がきたら、ワクワクしますよね。
佐藤
テレビを観ながらTwitterでハッシュタグ検索をするというシーンも多いと思うので、そういう行動にあった広告も提案できたらおもしろそうです。
白根
まだまだはじまったばかりのサービスですが、今後もSNSのなかの行動パターンは多様化していくはず。それをしっかり捉えてプランニングすることで、より立体的なコミュニケーション提案をしていきたいと思っています。