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ヒット習慣予報 vol.195『ファスト教養』

2021.11.16
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの永井です。

引っ越しやら部署異動やらで、公私ともにバタバタした日々が続き、気がつけばカレンダーが11月になっていることに、驚愕たる気持ちになった今日この頃。僕が現在住んでいる札幌では、綺麗だった紅葉もすっかり落ち葉へと変わり、ストーブは全開、厳しい冬が着実に迫っていることに日々怯えながら生活しています(とはいえ、何歳になっても初雪だけは毎年ワクワクしますが笑)。

そんな慌ただしい毎日のなかでも、なにかしら知の刺激が欲しいと願ってはいるのですが、ついつい休日はいたずらにぼーっとしてしまい、日頃の情報インプットさえも疎かになってしまうものです。おそらく同じような性分の方も少なくないかと思いますので、今回のコラムは「ファスト教養」をご紹介したいと思います。スマホによっていつでもどこでも情報アクセスできる今、隙間時間にサクッと時事やビジネスの知識・情報を得ることができるコンテンツがSNSや動画共有サイトで注目を集めており、そんな生活者の新習慣を取り上げます。

その走りともいえる存在のひとつが、いわゆる「教育系YouTube」で、今やインテリ芸能人など著名人も続々参入しており、ひとつのジャンルとして確立されてきました。事実、GoogleトレンドのYouTube検索で「教養」というワードで調べてみると、2019年あたりから上昇傾向にあり、教養コンテンツへの注目度が非常に高まっていることがわかります。

出典:Googleトレンド YouTube検索(「教養」で検索)

さらに、教養コンテンツについて詳しく調べていくと、SNSごとに新たな兆しが見えてきたので、いくつか事例をご紹介したいと思います。

まずは、「ビジネスハック動画」です。
こちらはビジネスで使えるお役立ち動画です。ここ最近ではビジネス系の動画を目にする機会が増えてきました。具体的には、計算ソフトの関数のハウツーを1分間で紹介するものや、小ネタをはさみながら楽しく学べるビジネス外国語講座といった、20代以降のビジネスパーソン向けの動画が、にわかに注目を集めているようです。

次は、「学びアカ」です。
学び専門のアカウントのことで、イラストや短文でわかりやすく画像にまとめられているので、スワイプするだけでササッと学べるのが人気の秘訣のようです。ジャンルもSDGsなどの環境問題からジェンダー問題、料理、デザイン、ライフハックなど多岐にわたりますが、特にここ最近では、ミレニアル・Z世代向けにダイバーシティや政治などの少し難しい社会問題をポップなクリエイティブで紹介しているものが多い印象を受けます。若者にとって少し難しいテーマだからこそ、日常使いのメディアの中から学んでほしい、学んでいきたい、そんなニーズの表れかもしれません。

最後にご紹介するのは、「本図解」です。
ビジネス書や教養書などの内容をペラ1の図解で要約したものです。何十ページにもわたる本の内容を1枚に図解したもので、その本質が理解できるのかいささか疑問はありますが、話題の書籍がどんな内容であるかを購入前に知れたり、解説されているマーケティングフレームをSNSのお気に入りリストにストックし、必要時に瞬時に引き出せたりする点で、注目されているようです。図解ではありませんが、他にも同様に本レビューや解説記事を投稿されているものがオンライン上で散見され、SNS時代に生きるビジネスインフルエンサーにとっての、ある種の広告宣伝のような側面も持ち合わせているような印象を受けました。

その他にも、ポッドキャストやオーディオブックなどさまざまな「ファスト教養」コンテンツがありますが、なぜここまで広がりを見せているのでしょうか。

その理由はいくつか考えられます。
まず前提として、さまざまなコンテンツが世の中に溢れ、可処分時間の奪い合いが激化するなかで、時間的コスパが重要視されているからでしょう。もうひとつは、将来が不確実な社会において、自らのスキルセットや教養を身につけるべき、という意識が生活者のなかで高まっているからだと考えます。「潰しがきく」という言葉もよく聞きますし、転職ありきでキャリア設計している若者が多いのも影響していそうです。さらにもうひとつの理由として、ビジネスの多角化により、ひとつの専門性を追求するよりも、バランスの良い常識を身につけることが大切だという意識があるからだと考えます。今や多くの企業が新規事業やDXといった従来のビジネスモデルからの変革を掲げており、個人単位で見ても、趣味で稼いだり、異業種の副業・パラレルワークが増えたりしている(できていなくても願望が高まっている)ことが背景にあるからだと思います。

最後に、コロナ禍をきっかけに今後も加速していくであろう「ファスト教養」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。

「ファスト教養」のビジネスチャンスの例
■ 過去のファスト教養コンテンツを簡単に検索できるアーカイブ・アプリの開発。
■ ビジネスハック専門の構成作家&動画制作サービス。
■ 出版社・著作者にも利益還元されるフリーミアム式の「本図解」サブスクリプションの開発。
など。

今年も残り1ヶ月半。慌ただしい日々はまだまだ続きそうなので、SNSを巧みに活用しながら、プチ教養を深めていきたいです。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

永井 大地(ながい・だいち)
北海道博報堂 / 博報堂生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2018年北海道博報堂に入社し、2021年から博報堂生活者エクスペリエンスクリエイティブ局に複属。アンダーグラウンドからメインストリームまで、新たな生活者インサイトを発掘すべく、日夜どこかの街を徘徊している。

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