こんにちは、ヒット習慣メーカーズの田里です。
私事ではございますが、10月に慣れ親しんだ関西から東京へ異動となり、アウトドアメディア(交通・屋外メディア)のプラニング・ソリューション開発の担当となりました。街中を歩いていて、”偶然”出会うことが多いメディア。みなさまに、ふと足を止めて見ていただけるようなメディアを開発することを夢見て、日々精進して参ります。
さて、今回紹介するヒット習慣は、そんな”偶然”をテーマにした「計画的偶然」です。
以前、日常生活において偶然出くわしたコンテンツを何かに記録しておいて貯めていく「たまたまクリップ」(vol.119) というヒット習慣がありましたが、今回はセレンディピティ(=偶然から生まれる幸せ)を、計画的・意図的に享受しようとしている人が増えているのではないか?というお話になります。そんな「計画的偶然」の例を、3つ紹介したいと思います。
1つ目は、”出会い”の計画的偶然です。
全国的に緊急事態宣言が解除され、夜の街を中心に人出が戻ってきたことは記憶に新しいかと思います。私も全国さまざまな街で飲むのですが、大人数で飲むことや滞在時間が長くなることに対する人々の抵抗からか、一人〜少人数でサクっと飲むことのできる「立ち飲み」や「横丁」スタイルのお店が増えたように思います。そんな「立ち飲み」「横丁」は、検索エンジンに入力すると、いずれも「出会い」がサジェストで出てくることからも、同性・異性問わず出会いの宝庫だったりします。私も含めて、「偶然出会った人と、しがらみなく会話を楽しみたい」という目的で足を運ぶ人が増えているからか、そのようなスタイルのお店で飲んでいて、偶然隣に居合わせた人に話しかけられたりすることが多くなったように感じます。個人的な体験談になりますが、先日も北陸のある県で「地元の人と出会いたい」という動機で立ち飲みに向かったところ、偶然居合わせた地元の方々と意気投合し、そのまま二軒目〜締めの蕎麦屋までご一緒するという体験をしてきました。笑 その方々とは現在もSNSでやりとりを続けており、まさに”計画的偶然”によって広がった出会いであると考えています。
2つ目は、”旅” の計画的偶然です。
最近、航空券や宿泊施設の”くじ(ガチャガチャ)”が次々に登場しています。事前にお金を支払い、ガチャガチャを回すことで航空券やホテル宿泊の引換チケットが入ったカプセルが出てくるという仕組みです。ガチャガチャのため、行き先はもちろん選べません。本来の目的は観光需要の喚起であると思われますが、「どこに行くか分からないワクワク感」が話題を呼び、すぐに売り切れとなるなど、人気を博しているようです。余談ではありますが、過去に関東近郊の鉄道を使って、出た目の数だけ進む&必ずその駅で降りる「鉄道サイコロ旅」を友人と行った経験があります。普段は降りないような駅で降り、ガイドブックもなしにその土地を散策する、時間はかかりますが非常に刺激的な旅でした。笑 まさに偶然性がもたらすワクワク感を、計画的に享受した例であると感じます。
3つ目は、”買い物” の計画的偶然です。
買い物にも”計画的偶然”高まりの兆しが見られます。時期が限られる話ではありますが、以下は「福袋」の検索トレンドになります。毎年、福袋が一斉に売り出される年始にヤマが出来ていますが、全体として検索トレンドが上昇傾向にあることが分かります。ECサイトがこれだけ発達し、必要なものだけをすぐに買うことができる現代において、「欲しいものが手に入る一方で、欲しくないものも手に入る可能性がある」福袋が注目されているとは、意外な結果です。またまた個人的な話にはなりますが・・・実は昆虫飼育が趣味であることから、昆虫ショップの「クワガタ福袋」を毎年購入しております。特に欲しいとは思っていなかった種に愛着が湧き、結局一番のお気に入りになる、といった経験をこれまでに多くしてきました。笑 デパート、書店、ラグジュアリー等、福袋で同様の経験をされた方も多いのではないでしょうか。
では、なぜ「計画的偶然」の傾向が高まっているのでしょうか?
一番の要因は、「不確実性に対する欲求」が高まっていることであると考えます。マッチングアプリやコミュニティサイトで趣味が合う人と出会うことや、SNSにアップされた綺麗な観光地の写真を参考に旅行先を決めること、欲しいものやAIにリコメンドされたものだけを通販サイトで買うことが簡単にできる時代。最短距離で目的を達成することができる非常に便利な時代ではありますが、そんな時代だからこそ・・・「どんな人と出会うのか予測できない立ち飲み」「行き先を自分で決められない旅」「何が入っているか分からない福袋」が人気を博していることに表れているように、不確実性がもたらすワクワク感を味わいたいという人が増えているものであると推察します。
他には、コロナ禍を経て、人付き合いが最低限のものになったこと、また外出率が下がったことが影響していると考えられます。コロナ前であれば・・・例えば、出会いに関しては「たまたま出会った友人の友人」、旅に関しては「知人の何気ない口コミ」、買い物に関しては「店頭で見て、ふと欲しくなったもの」等、何気ない人付き合いや外出の中で生まれるセレンディピティが豊富にあったように思います。コロナ禍でそのような”余白”が減っているからこそ、偶然性を伴ったサービスや商品が人気を博しているのではないでしょうか。
最後に、「計画的偶然」から見るビジネスチャンスについて考えてみました。
余談ではありますが、計画的偶然を追い求めるあまり週末はほぼ家におらず、全国各地を転々とする生活を送っています。家賃よりも移動にかかる費用の方が高くなっており、やりすぎは禁物かもしれません・・・。笑
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
2018年に博報堂入社後、博報堂DYメディアパートナーズへ出向。メディアプラナーとして「メディア出稿の最適化」をテーマに、ALLメディアの出稿戦略立案~効果検証業務に従事。現在はアウトドアメディア(交通・屋外メディア)を担当し、DXの荒波の中で新たな価値を生むメディアを開発すべく、奮闘中。