関連記事:「ノーコード」で仕事と学びを革新する─ミライの事業室「TOOL PROJECT」が目指すもの(2021/3/25)
―あらためてTOOL PROJECTの構想と、実際に取り組んでいる内容を教えていただけますか?
三谷
TOOL PROJECTは「仕事と学びをアップデートする」というコンセプトで立ち上がったプロジェクトです。ノーコードなどの「ツール」をうまく活用することで新たなスキルを身に着け、個人の生産性や市場価値を飛躍的に高めて、働き方の可能性を広げることを目指していて、そのための具体的なトレーニングプログラムの開発を行っています。
昨年2月からは第一弾実証実験として、「STUDIO」と「Exploratory」という2つのノーコードツールと連携し、それぞれのスキルを短期間で習得できるトレーニングプログラムを一般の参加者向けに開催しました。学びと実践がセットになっているのが我々のプログラムの大きな特徴で、まずは週2回、合計6〜7コマのワークショップ形式のライブレッスンを行い、一定の水準に達した修了者の方には、身につけたスキルを使った「実案件トライアル」を行っていただきました。参加者全員が無事に納品を成し遂げ、納品先の企業の方々からも、とても高い評価をいただきました。
大倉
この第一弾の実証実験を経て、まさにいまプログラムの「第2期生」(※)を募集しているところです。今回は「STUDIO」と「Exploratory」に、もうひとつ「Shirofune」というコースを新たに加えて、3つのコースを同時開催します。
※TOOL PROJECT第2期生募集サイト https://toolproject.jp/lesson
―第一弾の2つのトレーニングプログラムには、どのような方が参加されたのでしょうか。参加者の感想などもうかがいたいです。
三谷
「Exploratory」はノーコードの次世代型データ分析ツールで、これを使いこなせると、誰もがデータを活用して深いインサイトを発見し、共有することができます。参加者は、ビジネスバックグラウンドと、アカデミックバックグラウンドの方が半々くらい。実案件トライアルでは、中小企業、スタートアップ、大企業の事業部などをクライアントとして、各社が保有する実際のデータを使って、顧客のさまざまな課題を抽出する業務を実践していただきました。
ただ学習教材と違って、現実はそう単純なものではなくて。肝心なデータが散らばっていたり、欠損していたり。データを見る人が明確な基準を持っていないと分析結果の受け止め方も曖昧になってしまいます。ツールの使い方や分析手法の引き出しを増やすこと以外にも、そうした局面をどう乗り切ったのかを参加者同士で共有することで、一層やりがいや面白さを感じていただけたようです。
大倉
「STUDIO」はノーコードのWebデザインツールです。こちらの参加者は2タイプあって、ひとつはグラフィックデザイナー、イラストレーター、アニメーターのようなデザインバックグラウンドの方。もうひとつはWebディレクター、HTMLコーダーといったWebデザインバックグラウンドの方でした。前者はコーディングなしでサイトが作れることに、後者はデザインの専門知識がなくてもサイトを作れたり、工数を削減できたりするところに魅力を感じておられましたね。
プログラムの感想としては、ツールの使い方とその利点や欠点を学べたことだけでなく、顧客にはいろいろな要件やタイプがあって、キックオフの時点でボタンをかけ違うとその後の開発全体に影響が出ることなど、顧客との向き合い方に関するヒントやコツをお互いに共有できたことが非常に参考になったという声をいただいています。
―参加者の方々は、色々な学びを感じてくださったようですね。プログラムをつくった大倉さん、三谷さんの手ごたえはいかがでしたか?
大倉
はっきり言って、想像以上でしたね。主婦の方、大企業の役員、学生、シニアディレクター、焼肉店のオーナーなど、色々なバックグラウンドと職能を持った方々に参加していただき、全員が私たちのプログラムに太鼓判を押してくださいました。すべてオンラインでのレッスンなので、北米やASEANから参加してくださった方もいて。ExploratoryのCEOの西田勘一郎さんにはサンフランシスコからライブレッスンをしていただくなど、場所と時差を超えた一体感のあるコミュニティが生まれました。
この「参加者同士のコミュニティ」がとてもユニークで、非常に価値があるものでした。ツールの使いこなしや応用方法だけでなく、顧客との向き合い方のようなビジネススキルなどもシェアされ、参加者同士での自発的な学び合いや、高め合いが常に起きていました。特に実案件トライアルの時には、ツールの使い方につまずいた方がいても、すぐにコミュニティの誰かがやり方をシェア。外部の専門家に頼ることなく、あらゆる問題がプロフェッショナルなコミュニティの中で次々と解決されていきました。その様子は、まるで奇跡を見ているようでしたね。
三谷
プログラムの修了後もコミュニティの交流は変わらず続いていて、現場に出てからの学びや気付きが日々シェアされています。受講された方々にとっては、ツールを活用したスキルが習得できたことに加えて、学び合う仲間とのつながりを得られたことも大きな成果だったようです。
―今回、第2期で新たに加わる「Shirofune」とは、どのようなツールでしょうか。また、このツールを新たに選定した理由を教えてください。
大倉
「Shirofune」はWeb広告の運用を自動化するツールです。今回TOOL PROJECTでは、Shirofuneを使ってデジタルマーケティングの基礎と、単独でWeb広告制作・出稿・運用を行うスキルを身につけられるプログラムを用意しました。一定の素養があれば、Webデザイナーや個人事業主など、Web広告運用の未経験者でも問題ありません。
三谷
Shirofuneを選んだ理由は、先にスタートしたツールとも深く関係しています。STUDIOを活用して短期間で効率的にWebサイトを作っても、そこに誰も来なければ、サイトは「陸の孤島」のようなものです。Shirofuneを上手く活用できれば、SEOに頼らなくても少額の予算で広告出稿が始められ、プロ並みの運用もできて、作ったサイトに顧客を連れてこれるようになります。集客がうまくいかないときはサイトの見直しや広告の差し替えなどの対応もすぐにできるので、この2つのツールは非常に相性がいいんです。もともとサイト制作ができるWebデザイナーやWebディレクター、Webライターの方は、新たな武器を手にすることができると思います。
そのほか、自社サイトに集客したい個人事業主や、企業で宣伝を担当されている方などにもおすすめできるプログラムです。
※「Shirofuneでデジタルマーケターになる」プログラム 募集詳細:https://toolproject.jp/lesson/shirofune
―TOOL PROJECTの今後の計画をお聞かせください。
三谷
取り扱うツールを増やして、ソリューションを拡張していきたいと思っています。今後もECサイト構築など、さまざまなテーマのプログラムを随時追加していく予定です。
そして運営面でも、自律的な組織運営を目指したチャレンジを開始します。今回の第2期では、第1期の受講生の方々に「運営側」に回っていただいて、第2期の受講生への指導や、実案件トライアルの支援をしていただきます。教わる側から教える側に立ち、新しくやってきた方を迎え入れていく。こうした循環をコミュニティに実装したいと考えています。他には類のないプロフェッショナルのコミュニティ、DX人材プールを作っていきたいですね。
―回を重ねるたびに、そのコミュニティがどんどん大きくなっていくということですね。これから、どんな方にTOOL PROJECTのプログラムを受講してもらいたいですか?
大倉
ツールによって職域を拡張して収入を増やしたい方、あるいは本気で人生を変えたいという方は、ぜひエントリーしてほしいです。終身雇用制度が崩壊して非正規雇用が増え、所得は減り続けているのに税金や物価は上がっていく。日本の環境は非常にシビアな状況です。そんな中でどうやって一定の生活水準を保つことができるか。生涯やりがいをもって働き続けることができるか。きっと会社の外に出ても助け合える場所があることや、自分が市場価値の高い職能を発揮できるようにすることが、とても大事になっていくと思うんです。ノーコードやDX、副業という言葉ばかりが取り上げられがちですが、私たちの活動のベースラインには、常にこうした状況に対する切迫した課題感があります。
第1期では、何人もの方が「受講したことで、自分の強みが増えて、世界が広がった」とおっしゃっていました。一人でも多くの方に、ツールという武器と、ともに学び合う関係を得て、戦闘力を高めていただきたいと思っています。私たちも全力で、その支援に取り組んでいきます。
―ありがとうございました。また第二弾の成果も聞かせてください!