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ヒット習慣予報 vol.209『ソロ活の個室化』

2022.03.08

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの山本です。

皆様いかがお過ごしでしょうか。3月に入り、少しずつではありますが暖かい日も顔を出し始めてきて、春の到来を期待させますね。生まれが春ということもあってか、僕はけっこう春が好きです。冬は出不精になりがちで、一人の時間を楽しむことが多いのですが、気温が暖かくなるにつれて、外で友人と遊ぶ機会も増えてうれしい気持ちになります。

そんな僕が、今回ご紹介する新習慣は、一人時間にまつわる話、「ソロ活の個室化」です。なにかというと、家とは異なる専用のプライベートスペースで、自分だけの時間を楽しんでいる人が増えはじめているという兆しです。

ヒット習慣予報Vol.198「ソロ充」でも取り上げたように、コロナ禍を機に、ソロ焼き肉やソロキャンプ、ソロアウトレットなどを楽しむ人の例を挙げ、一人でマイペースに行動するソロ活が増えていることをご紹介しました。こうした流れも受けながら、最近ではさらに、空間すらもプライベートで楽しみたいという究極のソロ充が増えているのではないか、というのが今回の「ソロ活の個室化」のお話です。

ここからはまず、「ソロ活の個室化」の兆しを象徴するような、最近になってセルフサービスのプライベート空間として生まれ変わりつつある例をご紹介します。

まず一つ目は、「個室サウナ」です。ご存じの通り、ここ数年は空前のサウナブーム。サウナ活動、通称「サ活」という言葉が生まれるほどの人気ぶりで、僕もしょっちゅうサウナに行くのですが、サウナの中はいつも満員で、時には人数制限では入れないことすらあります。そんなサウナも、個室サウナの登場しはじめたことで、完全個室空間で楽しめるものになってきています。Googleトレンドで、「個室サウナ」と調べてみると、2021年の夏ごろから一気に検索数が上昇していることがわかります。

(出典:Googleトレンド)

SNSで「個室サウナ」の実態を調べてみると、一人でじっくりサウナが楽しめることや、好みに合わせてセルフで温度調整ができることが好評のようでした。また、施設によっては携帯電話を持ち込んで好きな音楽を聴くこともできるようで、「もう他人がいるサウナに戻れる気がしない」なんていう声も。個室サウナで一人だけの秘密の時間を楽しんでいる様子が伝わってきて、なんだか自分も行ってみたい気持ちになりました。

次にご紹介するのは、「プライベート瞑想ルーム」です。サウナと同じように、心休まる時間を過ごせるとして、マインドフルネスや瞑想が、ここ数年で盛り上がりを見せています。都内を中心に、グループ瞑想を行える専門施設も増えてきているようですが、最近では、個室で瞑想に集中できる「プライベート瞑想ルーム」という業態もサービスとして提供され始めているようです。実際にサービスを使った人の「何も考えず、無になれるひと時が楽しめる」というSNS投稿が印象的でした。また、某百貨店の今年の福袋では目玉商品として「瞑想個室」が販売されたり、某大手テック企業が従業員向けの個室瞑想ボックスをオフィスに設置したことがニュースになったりと、今後、一人で気軽に立ち寄れるプライベートな瞑想空間のニーズはますます高まっていくかもしれません。

最後にご紹介するのは、「セルフ写真館」です。「セルフ写真館」は、撮影スタジオでありながら、一般的なスタジオのようにカメラマンなどがつかず、自分で好きなように空間を使えてセルフで撮影する、新しい業態の撮影スタジオです。もともとは韓国発祥の文化で、昨年ごろから、若年層に人気のSNSで話題になっています。実際に「セルフ写真館」とSNS検索してみると、インフルエンサーやSNS感度の高い女性のソロ利用をはじめ、撮影可能なカップルのデートスポットとしても利用されていることがわかります。ソロ利用している人の投稿では、「はしゃぎたくなるほど楽しいw」「はまりそう」との声が見られ、先ほどご紹介した「個室サウナ」や「プライベート瞑想ルーム」が、誰にも邪魔されない落ち着ける時間だとすれば、「セルフ写真館」は、誰にも邪魔されない心が躍る時間ということになりそうです。一口に「ソロ活の個室化」といっても、個室に一人で過ごす時間に求めるニーズや気持ちは様々あることが見て取れました。

ここからは、「ソロ活の個室化」が盛り上がっている理由について、すこし掘り下げていきたいと思います。
まず前提として挙げられるのは、前述したように、一人で行動を楽しむソロ充が今増えてきているという背景があります。「一人の時間ってけっこういいものだな」という意識を持つ生活者が増えてきていることで、「ソロ活時間はプライベート空間で過ごしたい」という究極のソロ活ともいえるような欲求もあわせて大きくなっていると思いました。
自宅から離れた個室空間にあえて足を運ぶことは、ちょっとしたお出かけ感がありながらも、自分だけの秘密の時間が楽しめる、プチソロ旅行のようなものです。
特に、「個室サウナ」や「プライベート瞑想ルーム」には、30~40代の客層が多いことから、コロナ禍でリモートワークが進んだことで、家族と過ごす時間が増えた一方、自分だけの時間を誰にも邪魔されず楽しみたいというニーズも高まっているように思いました。
また、三密の回避の形態として、個室でプライベートな空間に世の中的な注目が集まっていることも、「ソロ活の個室化」の新習慣を加速させるものになっていきそうです。

最後に、「ソロ活の個室化」をめぐるビジネスチャンスについて考えてみました。

「ソロ活の個室化」のビジネスチャンスの例
■空港や駅での待ち時間に活用できるプライベート瞑想ルームの設置
■周りを気にしないくつろぎの時間を楽しめる個室バーの開発
■個室セルフを誰かとシェアしながらサブスクで使えるシステムの開発

個人的に、今回のリサーチの中で、個室サウナがとにかく気になり始めてしまいました。コロナ禍で生活環境が一変したことで、ONとOFF、プライベートとソーシャルのメリハリを生活の中にうまく作りたいと感じているので、究極のプライベートOFFタイムとして、自分もソロ活での個室にチャレンジしてみたいと思います。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

山本健太(やまもと・けんた)
生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2017年に博報堂入社以来、ストラテジストとして、企業やブランドの戦略・企画立案に従事。ミレニアル世代/グローバル領域の業務経験多数。写真と音楽とすべてのユースカルチャーをこよなく愛する。

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