THE CENTRAL DOT

ヒット習慣予報 vol.219『子どものお金英才教育』

2022.05.24
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの永井です。

GWの大型連休が遠い日の記憶のように思われる今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。僕は先日、久しぶりに学生時代の友人たちに再会し、互いの近況を報告し合っては思い出話に花が咲く、充実の休日を過ごしたのですが、アラサーともなると結婚や出産、キャリアなどライフプランの話がホットトピックに。なかでも、仮想通貨とかマイホーム購入とか将来のお金や資産形成の話が盛り上がり、いい年齢になってきたことを実感しました。僕自身、惰性で生きている性分、友人たちの話は初耳なことも多く、これを機会に資産形成に関するニュースや書籍をチェックしたのですが、なんと金銭感覚がまだ身についてない子どもへのお金の教育が、今注目を浴びているようなのです。

そんな自分の金融リテラシーの遅れを取り戻すべく、今回は「子どものお金英才教育」と題し、今後盛り上がってくるであろう子どもへの金融教育の最前線について、ご紹介したいと思います。そもそも、子どもの金融教育が巷で注目されている背景には、今年の4月から高校の家庭科で金融教育が必修となったこともありますが、「老後2000万円問題」などのニュースをきっかけに、若年層を中心に金融意識が高まっていることが大きいかと思います。Googleトレンドで、ここ5年間の「投資」の検索動向を見ると、緩やかながら上昇傾向にあり、自身の資産形成はもちろん、子どもに対しても金融リテラシーの必要性を感じ始めているのかもしれません。

出典:Googleトレンド(「投資」で検索)

では実際に、どのようなお金の教育が注目されているのか、海外の事例も交えながら、いくつかご紹介したいと思います。

まずは「子ども向けデビットカード」です。
金融意識の高いアメリカ発のサービスになりますが、子どもが使えるデビットカードと親子がそれぞれ管理できる専用アプリを組み合わせたものです。キャッシュレス決済が一般化しているアメリカなどでは、いつでもどこでも買い物ができる反面、自己破産などが大きな問題にもなっており、子どもの頃から正しいお金の知識が求められています。さらにキャッシュレス化が進んでいることやセキュリティの観点で、自宅に余分な現金を置いていないことも多く、そんなお金事情から誕生したのがこのサービスでした。子どもが自分でお金を管理できるUIに加え、親サイドでは利用店舗や限度額など細やかな設定ができる点が好評のようです。家庭内でお手伝いして稼いだお小遣いを親が見える安全な範囲で好きなものに使える、お小遣い帳のDXですね。

次は、「ゲーミフィケーション」です。
仮想的に資産運用が学べる金融教育ゲームです。架空の資本金を元手に、他ユーザーと収益率を競い合いながらリアルな株売買の感覚を養うことができるバーチャル取引ができるそうです。実際の株価情報が反映され、保有銘柄の評価損益額や勝率が随時確認できるため、実戦力が身につくゲームとして、日本でも証券会社の研修などにも利用されているようです。

最後は「子ども向け投資プラットフォーム」です。
先ほど紹介したゲーミフィケーションのUIをみると、ある程度の金融知識を身につけた高校生以上でなければ難しそうなのですが、なんと海外では実際に子どもが投資できる投資プラットフォームもサービスとして展開されています。調べたところ、株式を調査でき、親が承認さえすれば実際に株取引を行い、実践をしながら資産運用を学ぶことができるとのこと。お金の使い方だけではなく、お金の増やし方も学ぶ教育サービスが今後は求められてきそうですね。

ここまで「子どものお金英才教育」について、いくつかの事例を紹介してきましたが、なぜいま子どもの金融教育が注目されているのでしょうか。

ひとつは、冒頭であげた「老後2000万円問題」をきっかけに、これまで貯金ばかりだった日本人とって、投資などの資産形成が一部の人が儲ける手段から、誰もが将来への備えとして必要なものという意識に変化しはじめているからでしょう。あのニュースとコロナ禍が浮き彫りにした先行き不透明な将来をきっかけに、自身はもちろん、小さな子どもがいる家庭では、我が子の将来を案じた人も少なくないのではないでしょうか。
もうひとつは、テクノロジーによって金融体験が拡張されたからでしょう。これまで多くの知識とリスクが要された金融領域も、デジタルで擬似的に体験・学習ができたり、子どもでも安心してお金を管理できるよう制限を設けたり、親の見える範囲でコントロールできるようになったことが大きな要因だと思います。

最後に、「子どものお金英才教育」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。

「子どものお金英才教育」のビジネスチャンスの例
■ 学生向けの金融能力検定試験。
■ 子どもの性格や得意分野に合わせて、学ぶべき資産形成術をレコメンドしてくれるマッチングサービス。
■ 子どもが株取引を実践しながら、親に代わって指南してくれるAIコンシェルジュサービス。
など。

今回、国内外の金融教育を調べてみて、改めて自身の金融リテラシーの低さを痛感しました。将来設計を語る前に、今一度勉強し直したいと思います。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

永井大地(ながい・だいち)
北海道博報堂 / 博報堂生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2018年北海道博報堂に入社し、2021年から博報堂生活者エクスペリエンスクリエイティブ局に複属。多拠点居住を夢見て、定期的に実家のある宮古島に帰りながら、北海道と東京を股にかけ、マーケティングとクリエイティブ、二足のわらじを履いた生活を送っている。

FACEBOOK
でシェア

X
でシェア

関連するニュース・記事