こんにちは。ヒット習慣メーカーズの永井です。
各地で猛暑が続くなか、お盆休みに入りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。コロナも再び盛り上がりを見せている今、インドア気質な僕はさらなる居住環境の充実を図るべく、おしゃれな間接照明や観葉植物、最新家電を日夜スマホで調べ続ける多忙な毎日を送っています。そんな中、今一番気になっているものがありまして、それがプロジェクターです。「あぁ、数年前に流行ったホームプロジェクターね」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、単に部屋の壁に投影して映画鑑賞するだけではない、新たな使われ方の兆しが見え始めています。
実際、Googleトレンドで「プロジェクター」の検索動向を見ると、コロナ禍をきっかけに検索数は高まりを見せ、以降も定期的にスパイク(急上昇)を繰り返しています。コロナ禍以前と比較しても、全体的な注目度も高まっていることがうかがえます。
さらに調べてみると、当初は天井のシーリングライトと一体化したプロジェクターが人気の火付け役になったようですが、現在ではポケットサイズのプロジェクターも続々登場し、Z世代を中心にさまざまな使われ方がされているのがわかってきました。今回は、そんな今ドキな若者たちのプロジェクターのある暮らしを、「プロジェクター・イン・ライフ」と題して、ご紹介したいと思います。
まずは、「天井に映して瞑想」です。
ベッド上の天井に映像を投影して、寝ながら映画鑑賞するのは、多くの人が一度は憧れたことだと思いますが、今は、スマホのマインドフルネスアプリを組み合わせて、瞑想して入眠するアイテムとして使う生活者がSNSで散見されました。不眠大国と言われる日本ですが、あの手この手の一つとして、プロジェクターが活用されているようです。遠い昔、僕もプラネタリウム的なことを試し、まったくロマンチックにならなかった記憶があるのですが、デジタル環境が整った今、改めて挑戦したい気持ちになります。
次は、「キャンプ場で仲間とゲーム」です。
キャンプ場にて、テントとともに簡易スクリーンを設置し、プロジェクターに投影して仲間とゲームを楽しむのが、若者キャンパーたちの新定番になりました。もともと屋外パーティーなど庭先などでは使われてはいましたが、携帯可能な家庭用ゲーム機や大容量電源バッテリーの誕生により、今や山の中でも楽しめるようになりました。もちろん家の中でも楽しめるものですが、実践している友人に聞くと、野外で焚き火と夜風に吹かれながらやるゲームはまた格別らしいです笑
最後は「フェイクウィンドウ」、つまり擬似的な窓をプロジェクターでつくるというものです。
どういうことか、もう少し詳しく説明すると、まるでどこか別の場所にいるような、窓から見えるループ映像を部屋の壁に映し出し、風が吹く音や雨音などの環境音も流しながら、擬似的な空間演出として楽しむというものです。コロナ禍で「作業用BGM」が注目を集めましたが、その映像版といえるかもしれません。
日本ではまだ馴染みはないようですが、海外では昨年、どれくらいリアルな窓をプロジェクター投影で表現できるかに挑戦する「Fake Window Challenge」というSNSミームが話題になりました。“ガチ勢”の中には、DIYで壁に窓枠を取り付ける人もいて、映像だけでも錯覚してしまいます。ちなみに、最近僕の周りでは、川のせせらぎや雨音をスマホで流しながら在宅ワークしている友人も少なくなく、擬似的な環境のなかでリラックスしながらイエナカ時間を過ごすのが、新たな習慣トレンドになってきているようです。
さて、いくつかの事例を紹介してきましたが、Z世代を中心に、ここまでプロジェクターが注目されている要因を考えてみると、まずひとつは、普段の暮らしの中での「非日常感」を求めているからだと思います。コロナ禍で行動範囲が限定される今、日常の生活や趣味の中でも、デジタルテックを巧みに使うことで、少しでも非日常感を味わいたい生活者が増えているからでしょう。もうひとつは、生活者インサイトとして、デジタルな体験の中でもフィジカルな要素が求められているからだと思います。ホームシアターやキャンプ場でゲームでは、大画面で誰かと楽しむ“ガヤ感”が生まれますし、フェイクウィンドウでも、高精細な映像美と高音質の環境音がつくるリアリティさが担保されているから、本物のようなリラックス感が生まれているのかもしれません。
最後に、「プロジェクター・イン・ライフ」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。
先日、大手家電メーカーが、電球ソケットに着脱可能で、照明にもスマートスピーカーにもなる最新プロジェクターを発表し、話題になりました。これからのデバイスのトレンドは、スマホでもスマートウォッチでもなく、プロジェクターなのかもしれない…そんな思いとともに、今後の動向を注視し続けたいと思います。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
2018年北海道博報堂に入社し、2021年から博報堂生活者エクスペリエンスクリエイティブ局に複属。多拠点居住を夢見て、定期的に実家のある宮古島に帰りながら、北海道と東京を股にかけ、マーケティングとクリエイティブ、二足のわらじを履いた生活を送っている。