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BXラウンドテーブル【第9回 BXとは何か・後編】
改めて、ブランドとは何か。BXとは何か。研究者と実務家の最終ディスカッション

2022.08.29
#BX#ブランド・トランスフォーメーション
新進気鋭の研究者たちと、ブランドの実務で活躍する博報堂社員が繰り広げる連続ディスカッション「BXラウンドテーブル」。最終回となる第9回のラウンドテーブルでは、改めて「BX(ブランド・トランスフォーメーション)とは何か?」をテーマにディスカッションが行われました。BXがこれからの社会に対してどのような価値を生み出すのか、活発な意見が交わされました。(→連載 BXラウンドテーブル

参加者(五十音順・敬称略)
岩嵜博論 武蔵野美術大学 クリエイティブイノベーション学科 教授
杉谷陽子 上智大学 経済学部経営学科 教授
本條晴一郎 静岡大学 学術院工学領域 事業開発マネジメント系列 准教授
水越康介 東京都立大学 経済経営学部 教授
山野井順一 早稲田大学 商学学術院 商学部 准教授

宮澤正憲 博報堂ブランド・イノベーションデザイン局 局長
*司会:岡田庄生 博報堂ブランド・イノベーションデザイン局 部長

「BXとは何か?」を考えるための3つの視点

最終回となる今回は、東京都立大学経済経営学部の水越康介教授のプレゼンテーションから始まりました。プレゼンの内容を踏まえて、水越氏から3つのテーマが提示され、全体ディスカッションがスタートしました。
【本日のテーマ】
1. 改めて、ブランドとは何か?
2. BXが生活や社会をどう変えるか?
3. BXが経営をどう変えるのか?

テーマ1:改めて、ブランドとは何か?

出発点として、「ブランドの定義」からディスカッションがスタート。ブランドアイデンティティは企業側が決めるが、ブランドイメージはあくまでステークホルダーの認知の中にある。人間のアイデンティティとブランドアイデンティティを対比しながら、非常にユニークな意見が飛び交いました。

杉谷 教科書的に言うと、自社のものと他社のものを顧客に区別して認識してもらうための識別の印が、ブランドの本来の定義だと言われています。それは製品を識別するためのロゴなどだけではなくて、もっと上位の概念というか、これまで議論してきたパーパスやエコシステム、コミュニティなどもこの定義に当てはまると私は思っています。

山野井 なるほど。すると結局、それを実際どう捉えるかは顧客側というか、外部の人間に任されるわけですよね。

本條 ブランドは、人間の認知によって識別されています。その意味で、認知のシステムの方に注目しようというのがブランドの基本的な議論だと考えています。

杉谷 まさに、識別するのはあくまで顧客側ですよね。ロゴマークや商標のようなものは企業の資産でもありますが、一方で、顧客がブランドを識別してくれて、しかもそのブランドを素晴らしいと思っているとすれば、それが顧客の心の中にあるブランド資産だと捉えられます。

山野井 重要な論点だと思います。組織の周囲にいる人々を組織論ではオーディエンスと呼ぶのですが、オーディエンスがどう捉えているかが、ブランドとは何かを考える一つのポイントになりますね。その組織に対して、個々人が持っているイメージまでがブランドに含まれていると。

岩嵜 さらに、今はブランドを形成するステークホルダーが顧客以外にもどんどん広がっていて、しかもコミュニティのようなものも生まれて、企業とオーディエンスの接点が結構多様になっていますよね。

宮澤 たしかに、ブランドはステークホルダーそれぞれの頭の中にあるわけですが、そこにある程度の共通項はあって、それをブランドと呼んできたわけです。従来は、その共通項を企業がコントロールしようとしてきましたが、認知の構造そのものが多様化して、次々と新しい共通項が作られているというのが、ここで議論されているブランドアイデンティティの問題だと思います。
これは、人間のアイデンティティの議論に近いですね。かつては、一人ひとりの内面にある「自分はこうありたい」という考えがアイデンティティだと捉えられていた。しかし実際は「私はこういう人間です」と言っても、周囲の人間から「いや、お前はそうじゃない」と言われたりして、さまざまな関係性の中で相対的にアイデンティティが作られていくわけです。じつはブランドもこれに近い。ブランド論で「らしさ」が今まで以上にクローズアップされているのも、そのためではないかと思います。

山野井 今はオーディエンス同士のコミュニケーションがしやすくなって、個々人が持っているブランド像もいろんな人同士でやりとりできます。ブランドの共通項の部分が、企業がタッチしていないところで次々と作り上げられているということですね。
ただ、そうなると、企業のブランドイメージが細分化してしまう気もしますが。

岩嵜 勝手に色々なイメージが作られるとブランドが弱くなるかというと、そうではなくて。オーディエンスがたくさん関与して、イメージや共通項が多様な方が、強いブランドになっているのではないかと思います。

水越 私も宮澤さんがおっしゃったように、人間のアイデンティティと、ブランドのアイデンティティはかなり近い気がしました。
あえて人間のアイデンティティに喩えるなら、ブランドというのは、ある人物が亡くなったあとのアイデンティティに近いかもしれないですね。本人はもういないけれど、遺族たちや知り合いがいて、「織田信長とはこんな人だった」とか語り継いでいくわけです。時間が経過すればいずれ忘れられて、アイデンティティも消えていくはずですが、人々の間で多様なイメージが広がってたくさん共有されていると、織田信長というアイデンティティがずっと生き続けていく。そういうことが今のブランドで起こっているのかなと思いました。

一同 面白い!(笑)

本條 なるほど。矛盾するようなエピソードを残した方が、みんなの想像を高めて多様なイメージが生まれそうですね。

宮澤 関与できる余地も増えますしね。アイデンティティが固定されすぎていると、誰もブランドに関与できなくなります。逆に、アイデンティティそのものも「変えられるもの」「動的なもの」と捉えることで、ブランドがオープンになります。私は「動的なブランディング」と呼んでいますが、それが改めて大事になってくるように思いました。

テーマ2:BXが生活や社会をどう変えるか?

ここではBXが生活や社会を変える契機として、「パーパス」や「共創」について意見が交わされました。また「共創」に重きが置かれる社会になる一方で、「競争」の考え方が希薄になっていくとすると、ブランドはどうなるのか?といった論点についても意見が交わされました。

本條 BXの概念を最初にお聞きしたとき、「パーパス」を取り入れているところがポイントだと思いました。今までブランドにとって、社会的目標ってあまり関係なかったですよね。でも社会的目標を取り入れた方が、新しいオーディエンスも呼び込みながら、経済的目標も達成できて、より良い社会につながっていく。楽観的かもしれませんが、BXという新しいブランド論がその呼び水になり得る気がしています。

山野井 大事なご指摘ですね。これまでの議論では、「共創」が重要なキーワードになっていました。これからの企業は、顧客をはじめとする多様なステークホルダーを巻き込む形で価値をつくっていかなければならない。そのためには、企業のパーパスやブランドに“乗ってもらう”ことが重要になってくる。
そのとき求められるのは、目先の利益みたいな小さな視点ではなくて、大きな社会全体視点。みんなが幸せになれるような目標設定の方が、参加してくれる人が増える。結果として、共創による価値創造につながっていくと思うのです。

宮澤 そして、“豊かな社会像合戦”みたいな潮流にできたらおそらく一番美しいのでしょうね。共創を競争するというか。どのブランドが社会をより良くできるかという意味での競争を生み出すことで、社会を豊かにできる可能性はあるのかなと思います。

水越 ただ、どんなに美しい目標でも、競争をやりすぎると戦争状態まで導いてしまう可能性があるというのは、ここ最近の社会情勢を見ても思うところですね。

本條 誰かの損が自分の利益という構造になると衝突します。言い換えるとゼロサムでの利益追求が衝突や紛争を招くということです。BXを通して、ゼロサムではなくプラスサムの経済活動を考えるってことができたら素晴らしいと思います。

杉谷 最近は世の中が穏やかになったというか、世間的にも教育現場でも競争があまりよしとされない風潮になっていますよね。
これまでのブランド論では、主張が強くて明確に差別化ができているブランドこそが、ユニークで良いブランドだとされていたと思います。今後、他者視点や社会視点を取り入れたパーパスを掲げる時代になるとすると、企業間競争という考えも薄まっていくかもしれません。でも本当に競争なしでいいかというと、それはそれでまずい気がするのです。競争があるから、良いものが生まれ、社会が良くなっていく面も否定はできません。

岩嵜 その競争の軸が、「社会に良い」という方向に向かっているのではないでしょうか。EV市場などがそうだと思うのですが、環境に良い、気候変動にインパクトが少ない産業を作ろうという競争をみんなでしていて。そこで多少の優劣とかアイデンティティの違いはあるでしょうけど、カテゴリー全体として、社会を良くする方向に向かっている気がします。

杉谷 例えば「環境に良い自動車」というカテゴリーの中で、EVか水素か、といった技術的競争はあると思うんです。でも一方で、今までは同じカテゴリー内でもブランドコンセプトによるポジショニングが行われていたと思うのです。もし、どんなブランドも「社会を良くしよう」という一つのパーパスにまとまってしまうと……。

本條 なるほど。軸が1つだと、ポジショニングしようがないですね。
その話からふと思ったのですが、「ビジネスプロセス」の回でも触れたとおり、マイケル・ポーターは「差別化」ではなく「独自性、ユニークネス」という言葉を使うようになっているんですね。私の想像ですが「差別化による競争」と「独自性による競争」は、違う気がします。ゼロサムになる競争と、プラスサムとなる競争の違いというか。ポーターはプラスサムとなる競争を明確に奨励しているので、そのことと言葉の選び方が関連しているかも知れません。
さらに少々強引かも知れませんが、企業が学習を行わずにブランドアイデンティティが固定されていると「差別化による競争」になるけれど、エコシステムに埋め込まれた企業が学習を行いブランドアイデンティティが動的なものになると「独自性による競争」が可能になるのではないか。そこでは背景となるエコシステムが独自性の源泉になります。先ほどの宮澤さんの「動的なブランディング」の話にヒントをいただいて、そんなことを考えました。

テーマ3:BXが経営をどう変えるのか?

最後にBXと企業活動の関係について、BXの6要素を踏まえたディスカッションが行われました。特に、「企業はブランドをマネジメントすることは可能なのか」「可能だとして、どこまでマネジメントするべきなのか」という論点について、活発な意見交換がなされました。

岩嵜 これからのブランドがマネジメント可能かどうかは、ここまで何度か議論してきたと思います。企業がすべてコントロールするのではなく、ブランドアイデンティティを動的に動かしていくことも必要だというお話も出ました。結局、企業としてどう対応したらいいのか。

山野井 まず言えるのは、パーパスやミッションは企業が作るということですよね。ここがブレてしまうと、その先のタクティクスの部分もブレてしまう。企業は何を目指すのかというところは、企業自身がしっかりマネージする必要があります。

宮澤 そうですね。ブランドのマネジメントの仕方に関していえば、最初に設計するときのマネジメントと、その後に運用していく段階でのマネジメントの両方があります。少なくとも初期の設計に関しては、企業側に責任がありますし、パーパスはまず企業が決めなければならない。
ただ、運用段階になると少し話が変わってきます。生活者がある程度、ブランドに関与できる余地を残せるかが大事で、そこは従来のマネジメント方法とは変わってくると思います。

岩嵜 かっちり決めすぎると駄目ということですよね。

本條 お聞きしていて、責任感というか、企業の意志が重要だと思いました。顧客志向が行き過ぎると、「顧客がそう言ってるから、いいんだ」と責任を全部投げてしまうことになりかねない。企業側の意志が必然的に伴うということを明示しておけるといいのかなと思いました。

水越 ブランドの基本機能は識別であるという発言がありました。何かあったら当社が保証しますといった機能がブランドにはあると思うのですが、そこが改めて大事になってくるのかもしれません。あくまで最後の責任は企業側が担っているという。

杉谷 これまでの議論を踏まえると、企業はもちろんブランドをある程度マネジメントするのだけど、そのとき「どこまで踏み込むべきか」が重要なのではないかと思いました。企業は、最初にブランドアイデンティティなりパーパスなりを決めるわけですが、その後ブランドが自生的に動き始めて、さまざまな生活者が参加して、パーパスにそぐわないようなことが起きたとき、それにどう対応するのか。それを止めるのか、止めずに新しい変化の形として受け入れていくのか。そこが難しいなと思って。

宮澤 あくまでメタファーですが、ブランドを作るというのは、子育てに似ているところがあって。子どもの教育は親の責任ですが、ある年齢を過ぎると、親から離れようとしていく。その段階でも親がああしろこうしろと押し付けるか、それとも本人の自由にさせるか。このあたり、考え方によっていくつかのパターンがありますよね。
同じようにブランドの作り方にもパターンがあった方がいいのかなと。ハードコントロール型のブランドもあれば、市場に任せて自由にするというのも一つの考え方で。子育ての喩えでいうと、教育方針を打ち出して共感する仲間を集めていく、という感じのマネジメントが重要なのかなと思いました。

本條 ハードコントロール型か自由放任型か、という手前に、「マネジメントの可能性をどのぐらい信じているか?」があるのではないかと思いました。
マネジメント可能性をどのぐらい信じているかによって、介入、インターベンションの意思が決まって。介入の意思が決まった上で、放任型でいくか、ビシバシとハードコントロール型でいくかが分かれるのではないでしょうか。

岡田 今までの議論をまとめる意味で、BXで掲げている「6つの要素」と関連づけて議論すると、どんな感じになるのでしょうか。

宮澤 この図でいうと、まずどこにウェイトを置くか。この中でもどこが大事かは企業体によって違うと思います。それがブランドの作り方や、「らしさ」を作る1つの入り口なのかなと。
すべての企業が必ずパーパスを決めなければいけないわけでもないと思うんです。パーパス云々よりも、安くて良い商品を提供するビジネスプロセスに強い信念を持つ企業もあるでしょうし、組織・人材からブランドを設計していく企業もあるでしょう。そのようにこの図を解釈してもらえたらと考えていました。

杉谷 多様でいいという視点は、私も賛成です。でもせっかく活かすのであれば、この6要素のうち、ここはしっかりマネジメントするべき、ここは緩く寛容であるべき、といった色分けのようなものをしてあげられるとわかりやすいと思いました。おそらく「コミュニケーション」や「コミュニティ」などはマネジメントするのが難しいですよね。一方で組織・人材に対する教育はしっかりやっていくとか。そういう重み付けで整理できると良いのかなと思います。

水越 具体的には6つのうち、どこを出発点にするのか、どこを重視して企業側が関わっていくのかを考えていく感じですかね。

岡田 この要素はしっかりコントロールしたいけど、この要素はオープンにしておきたいとか、色々なパターンがあると思いますが、そういう組み合わせの相性みたいなものが見えるとよいかもしれませんね。きっと組み合わせは無限ではなく、いくつか類型があるような気がします。

山野井 BXのパターンが多様でいい、という考え方に少し疑問があります。例えば、これからは組織に所属し続ける必要はなくて、プロジェクト単位でスポットで働くといったスタイルが当たり前になってくるでしょう。そのとき、働く側にとって、その企業のパーパスに共感できるかが重要になってくる。そんな議論を以前しましたよね。そういう時代に、組織・人材をハードコントロールしようとする考え方は難しくなっていくと思うのです。
だから、6つの要素を企業ごとに自由に選べばいいというのは、企業にとってプラスになるのかというと、ちょっと別の問題のような気がしました。企業としては、あなたの会社に向いているのはこういうBXですよ。あなたがやりたいBXとは違うかもしれませんが、価値を生むのはこのやり方ですよ、という指針があるほうがいいのではないかと思ったのです。

宮澤 その通りですね。その部分は、我々もまだ十分な議論ができていないと感じています。
BXの図の中心に「生活者価値」を置いていますが、ここは常にゆるがない部分だと思うのです。企業はまず、生活者に何を提供するのか、ステークホルダーと何を共創するのかを決める。それを真ん中に置いた上で、「組織・人材」をきっちりマネジメントしましょうとか、組織は緩くてもいいから「商品・サービス」で管理していきましょうとか、6要素をそれぞれどう位置付けていくかの議論ができるのだと思います。指針という意味で言えば、生活者と共創する価値をまず決めてください、その上で各要素の色分けはある程度自由で構いません、という形になるのかもしれないですね。

第9回BXラウンドテーブルまとめ「BXとは何か?」

最後に、これまでのラウンドテーブル全体を振り返って、「BXとは何か?」をフリップに書いていただきました。

岡田 「BXとは、〇〇である」という形で表現していただけますでしょうか。じつは第1回のラウンドテーブルでも、同じお題でフリップを書いていただきました。その後の知見が盛り込まれて、どんな結論が導かれたか。お一人ずつうかがっていければと。では、山野井先生からお願いします。

山野井「BXとは、ステークホルダーを共創にまきこむための企業変革の要である
初回にも「BXは企業変革の要である」と書きましたが、これからは企業単体ではなく、顧客や従業員などステークホルダーを巻き込む形で価値を生み出していかなければならない、というのがラウンドテーブルでの大きな論点だったと思います。そのためにもパーパスであったり、組織・人材であったり、これらを変革しながら、ステークホルダーを巻き込んでいかないと、共創は実現しないと思いました。
共創のための企業変革を行うにあたって、このBXが重要なものになる、要となるということを結論とした次第であります。

岩嵜 「BXとは、社会価値創造型の変革である」
DXではできないことをBXとして議論しようということが、このラウンドテーブルの狙いの一つだったと思います。BXがもたらす価値とは何だろうということを皆さんとずっと議論してきて、今日結論に近いお話ができたのかなと思いました。BXは、単に価値を作るというだけでなく、大きな社会的な価値を作り、それを変革のドライバーにしようという考え方ではないかと考えて、このように書きました。

本條 「BXとは、社会的目的(purpose)を実現することで豊かになるための目的論(teleology)的科学である」
私は、第1回に書いたフリップからガラっと変えてみました。第1回は「BXは事業変革の道標」と書いたのですが、あのときはBXを第三者的に見ていたのだと思いました。
今日の議論で、マネジメント可能性を信じるという方向に振り切ったほうがいいと思ったので、私もBXを「科学にするんだ」という意志を込めました。意志を込めることで初めてマネジメント可能性や科学化する可能性が生まれてくる気がします。ここで挙げたpurposeとteleologyという語は先ほど述べたサイバネティクスの用語でもあります。自分がブランドに対してやるべきことをBXに託してみようという想いも込めて、踏み込んだ表現をしてみました。

杉谷 「BXとは新しい時代を先読みし、新しい社会を創るブランド戦略」
BXが社会にどう還元されるのかという視点がとても大事だと思っています。BXには社会的価値を作り出す側面があり、それは企業活動、政治・経済、あるいは社会・文化など、さまざまなものに影響を与えるものだと思います。BXが世の中を良くしていくことに貢献し、新しい社会を創っていく。そういう大きな視点を込めたいと考えて、このような表現にしました。

水越 「BXとは、ブランドを軸にした事業とブランドの変革である」
私は第1回のフリップには「ブランドらしさを軸にした事業変革」と書いていました。「ブランドで」と「ブランドを」の整理でいうと、あの時点では「ブランドで」何かを変えるというスタンスで考えていたのだと思います。
しかし、今日もお話ししたように、BXにはブランド自身を変えていくという側面もありますし、まさに今の時代に求められていることだと思いました。ブランドそのものの変革も含まれるのがBXであると捉え直し、このようにまとめてみました。

岡田 ありがとうございました。最後のフリップもまとめていただき、これにて「BXラウンドテーブル」終了です。たいへんお疲れ様でした。
最後に宮澤さんから一言お願いします。

宮澤 ありがとうございました。私自身、非常に楽しく議論させていただきました。
みなさんと議論を重ねる中で思ったのは、BXの概念そのものを議論しながらどんどんアップデートできるといいんだなということでした。BXは決まった概念ではないですし、できればゼロサムではなくプラスサム、BXが成功することによって、さまざまな人たちのプラスとなるモデルになってくれればいいなと今は思っています。その意味で、BXを共創型で進めていくことは必須要件ですね。そうしてBX自体をBXしていく。ブランド概念をリブランディングしていく。そういうことが今求められているのだろうと改めて思いました。
これで終わりではなく、BXを常にアップデートしていく活動に、引き続きぜひご協力いただきたいと思っています。本当にありがとうございました。

次回からは、全9回の「BXラウンドテーブル」を終えて、5名の研究者の方々から寄稿していただいたレポートをご紹介していきます。
連載「BXラウンドテーブル」アーカイブ
【第9回 BXとは何か】
前編:ブランドで/をトランスフォーメーションする
■後編:改めて、ブランドとは何か。BXとは何か。研究者と実務家の最終ディスカッション ※本記事
【第8回 データ・テクノロジー】
前編:デジタルで進む「生活革新」と「バリューチェーン革新」
後編:全体ディスカッション「データ・テック×クリエイティビティ」がブランドを創る
【第7回 コミュニティ】
前編:コミュニティはマーケティングを変えるのか?
後編:全体ディスカッション「ブランドコミュニティの新たなる定義」
【第6回 商品・サービス】
前編:商品・サービスの鍵を握る“生活者体験”の未来
後編:全体ディスカッション「不満解消か、喜び提供か?これからの商品・サービスの役割」
【第5回 ビジネスプロセス】
前編:ビジネスプロセス(ビジネスモデル)の未来
後編:全体ディスカッション「共創の時代、ビジネスモデルをどう変えるか?」
【第4回 コミュニケーション】
前編:コミュニケーションとブランドの未来
後編:全体ディスカッション「“エコシステム化”するコミュニケーション」
【第3回 組織】
前編:BXで変わる、これからの組織と人材
後編:全体ディスカッション「動的でオープンな組織は本当に成立するのか?」
【第2回 パーパス】
前編:パーパスと生活者価値から考える「これからのよいブランド」
後編:全体ディスカッション「なぜ今、パーパスが重視されるのか?」
【第1回 経営とブランド】
前編:研究と実務の融合から生み出す「新しいブランド論」(巻頭言)
後編:全体ディスカッション「なぜ今、経営にブランドが必要なのか?」

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