株式会社博報堂(本社:東京都港区、代表取締役社長:水島正幸、以下博報堂)のシンクタンクである博報堂買物研究所は、「売るを買うから考える。」という言葉をスローガンに2003年より活動しています。
この度、設立20周年プロジェクトの第3弾として、独自の生活者調査をもとに定義した「令和の“買物欲を刺激する20のツボ”」を発表いたします。
博報堂買物研究所は、「いいモノを手に入れたい」という欲求、“物欲”に対して、「いい買物体験をしたい」という買物プロセスに対する欲求、“買物欲”の概念を2007年に発表いたしました。以降、モノの価値での差別化が難しくなる中、“買物体験での差別化”の重要性が高まっているという考えのもと、様々な研究活動を行っています。また近年、ECの普及やSNS利用の拡大、コロナ禍、物価高騰などの影響を受け生活者の買物環境は急激に変化しており、従来の枠組みでは生活者の買物欲を捉えきれなくなっています。
そのような背景を受け、独自の定量Web調査やソーシャルリスニング、有識者インタビューなどから考察した「令和の“買物欲を刺激する20のツボ”」を定義、生活者の新たな買物潮流やそれらに対するマーケティングヒントなどについて提言しました。
<サマリー>
令和の“買物欲を刺激する20のツボ”を独自に定義
生活者アンケート、SNS上の投稿分析、有識者インタビューなどを通じ収集した幅広い視点での“良い買物体験”の事例から“良い買物体験”の要素を抽出し、定量調査による生活者の各要素における重視度の検証や要素間の類似度によるグルーピングを行うことで20の要素に集約、それらを令和の“買物欲を刺激する20のツボ”として独自定義しました<参考①>。20のツボは、『フリクションレス』(精神的・物理的労力が少ない)、『損失回避』(失敗や損の回避)、『偏愛性』(“好き”の想いを表現)、『ストーリー性』(企業“らしさ”、コンセプトやストーリーへの共感)などから構成されます<参考②>。
今後ニーズが高まるのは「LOVE&BOOST」系のツボ―生活者の“買いたい”という主体的意志に復権の兆し
令和の“買物欲を刺激する20のツボ”は、買う時に感情『LOVE』と理性『REASON』どちらで商品を選ぶか、買う気持ちを増幅させる『BOOST』か維持させる『KEEP』か、という2つの軸で4つの象限に分類されます。
<“買物欲を刺激する20のツボ”一覧>
定量Web調査やソーシャルリスニングの結果をこの分類をベースに分析<参考②>したところ、現在生活者からのニーズが高いのは『KEEP』系のツボでした。一方で、今後伸びていく兆しを見せたのは『LOVE&BOOST』系のツボということがわかりました。「失敗したくない、なるべく省力化したい」「ネガティブな部分がないから“これでいいか”」という『KEEP』系の買物スタイルから、遠回りしながらも買物プロセス自体を楽しんだり、自分軸で買う、想いに魅かれるなど、“これを買いたい”という『LOVE&BOOST』系の買物スタイルへの変化、つまり生活者の“買いたい”という主体的意志が復権する兆しが見えてきました。
生活者の“買いたい”という主体的意志が復権した時代における3つのマーケティングヒント
このように、これからは『LOVE&BOOST』系の主体的な意志を伴う買物スタイルが復権していくとみられます。そうした生活者のニーズ変化を捉えた企業のマーケティング活動の実現に向け、博報堂買物研究所は以下3つのヒントを提言します。
博報堂買物研究所は今後、「令和の“買物欲を刺激する20のツボ”」を活用したマーケティングソリューションを企業の抱える課題に合わせて提供してまいります。
<参考①:“買物欲を刺激する20のツボ”の定義にいたるリサーチステップ>
仮説構築段階の調査で“良い買物体験”の要素を抽出した後、定量Web調査で “良い買物体験”の要素の重視度を、日用消費財/耐久消費財といったカテゴリー、スーパー/ドラッグストア/EC通販といったチャネルごとに聴取しました。
たとえば、(図1)はドラッグストア/ディスカウントストアで医薬品・サプリメントを買う時に生活者が重視する要素です。「透明性があり、商品に信頼がおける」「店舗や売場が信用できて間違いのなさを感じる」といった『信頼感』に繋がる要素や、「希望の支払い手段でスムーズに買物できる」「商品の説明がシンプルで分かりやすい」という手間のかからなさ=『フリクションレス』を重視することが分かります。
<参考②:生活者に支持されるツボの分析>
生活者に「現在」支持されているツボを定量Web調査から探りました(図2)。
買物における重要な要素/買いたくなる要素の上位20項目をみると、たとえば「食品・飲料」と「家電・電化製品」では、いずれも『KEEP』系のツボを構成する項目が多いことがわかります。この傾向は、「化粧品」「トイレタリー・日用品」など他の聴取対象カテゴリーやチャネルでも共通しており、生活者の「ネガティブを回避したい」気持ちがうかがえます。
また、ソーシャルリスニング上での言及量の成長率から、今後成長する兆しのあるツボを探りました。特に、『ストーリー性』『偏愛性』など、『BOOST』系のツボの中でも「買いたい≒LOVE」にかかわるツボが伸びていることがわかりました(図3)。
※2024年4月11日(木)実施のセミナーで「令和の“買物欲を刺激する20のツボ”」について解説しています。期間限定公開のアーカイブについては以下をご覧ください。
<セミナーアーカイブ概要>
【博報堂買物研究所 設立20周年記念セミナー】
買物欲で捉える今の潮流と未来の兆し
買物の“主導権”を再び取り戻し始めた生活者を紐解く
アーカイブ公開期間: 4月12日(金)12:00 ~ 5月13日(月)15:00
詳細:https://www.bizgarage.jp/webinar/20240411
【定量Web調査概要】
調査タイトル:「買物欲・ツボの調査」
調査対象:20~69 歳 男女 & 各カテゴリー年1回以上 & 各カテゴリー購入時意思決定者
調査地域:日本全国
調査手法:インターネットリサーチ
調査時期:2023年12月11日〜2023年12月12日
有効回答数:5,071ss
調査委託先: 株式会社 H.M.マーケティングリサーチ
集計方法:商品カテゴリーごとに、最購入チャネル×性年代のスクリーニング出現構成比にあわせてウエイトバック集計
【ソーシャルリスニング概要】
調査タイトル:「買物欲指標に関するソーシャルリスニング調査」
実施時期:2024年1月
調査実施対象期間 :2019年1月1日〜2023年12月31日
調査方法:ソーシャルリスニング(ツール名:Brand Watch)
買物欲の各指標に対しキーワードを設定し、そのキーワードを含む投稿数を抽出
調査対象:X(旧Twitter)
調査機関:65dB(デシベル)TOKYO
企業の「売る」を生活者の「買う」から考え、買物現場の真実に着目し、買物客の本音・買物のツボである「買物インサイト」を起点に、買物欲を満たす「買物シナリオ」を創造し、新しい買物行動を生み出すソリューションを提案・実行する実践的研究所です。「博報堂買物研究所」は、博報堂をはじめとするグループ12社が推進する、オンライン/オフライン領域で生活者に新しい買物体験を提供する戦略組織「ショッパーマーケティング・イニシアティブ®」の傘下で新しい体制を構築し、“開かれた”買物研究所を目指しています。