2014年12月4日
博報堂生活総合研究所は、“大きな変化の時代に、大きな知恵を”という視座から、生活者の未来について提言していく「BIG PRESENTATION」(※)を本年より開始いたします。2015年のタイトルは「デュアル・マス」です。
2015年の日本は戦後70年、戦後レジーム(55年体制)確立から60年という節目を迎えます。人口、経済、情報環境など21世紀の大きな構造変化を受け止め、生活者は自ら主体的に生活の基盤を選択し始めています。生活総研は、生活者が大きく2つの塊に収束していくこの動きを「デュアル・マス」と名付けました。高度経済成長期以降、細分化と拡散を繰り返し、常に分散に向かっていた生活者が、生き方や価値観、行動スタイルとして何を選択していくのか、人々が生み出す新しいパラダイム・シフトについて提言してまいります。
※「BIG PRESENTATION」は博報堂生活総合研究所が毎年発表してきた「生活動力」のコンセプトを踏襲し、より大きな視座で人々の動きを捉え、社会と生活の未来像を提言するプレゼンテーション・コンテンツです。
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■デュアル・マス誕生の時代背景 ― 戦後70年、生活者が生み出す“生活の新レジーム”
22世紀初頭に5千万人以下に減少すると予測される日本の人口。経済の定常化もあり、戦後確立した制度(年金、健康保険)や生活モデル(標準世帯)が根本的に見直されています。こうした社会の大転換を受け、生活者も生活基盤を主体的に選択し始めます。自らの生き方や考え方、行動の仕方がそれぞれ2つの大きな塊に収束。この2つの大衆が共存する時代を「デュアル・マス」と名付けました。
■デュアル・マス化が進む3つの生活領域
【生活単位】独衆と族衆
― ひとりで生きるか、誰かと生きるか。
単独世帯比率は年々増加し、今や3世帯に1世帯がひとり暮らし。2035年には4割(37.2%)に迫ります(グラフ 1)。生涯未婚率も男女ともに増加しており、今やひとりで生きる暮らし(=独衆)は家族と生きる暮らしと同等の存在感を持つマスの1つ。誰かと生きる暮らし(=族衆)でも、60歳以上の婚姻数が増加しているように、新しい生き方が現れています。
グラフ1出典:1995年は「国勢調査」、2015年、2035年は、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」より
【生活価値観】AB(アフターバブル)とBB(ビフォーバブル)
― 経済成長(バブル)を経験したか、否か。
本人の平均寿命は80歳を超え、2023年日本の人口は50歳以上が過半数へ(グラフ 2)。その時の50歳以上が1973年以前生まれの人々で、残りの半分が1974年以降生まれの人々。生活総研の生活定点調査でも、今の40代以上と30代以下の間に最大の価値観の溝(キャズム)が、存在していました。
グラフ2出典:2010年までは「国勢調査」、2010年以降は、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」より
【行動スタイル】ピン衆とロジ衆
― ピンで選ぶか、ロジックで選ぶか。
モノ・サービスの選択行動は「好き嫌いで選ぶ」人が減少かつ高齢化し、「ピンと来る来ないで選ぶ」人は倍近くに増加、全年代層に広がるという傾向にあります。また「良い悪いで選ぶ」人はほぼ横ばい(グラフ 3)。ピンで物事を決めるピン衆と、良いか悪いかロジカルに決めるロジ衆。この2つに生活者の行動スタイルは収束していくと考えます。
グラフ3出典:博報堂生活総研「生活定点」調査より