博報堂生活綜研(上海)は、中国伝媒大学広告学院と共同研究を行い、「生活者“動”察」の6回目となる研究成果を2018年 12 月 11 日、北京において発表しました。今年の研究テーマは、「中国のテクノロジー生活」です。
近年、中国では「“製造大国”から“製造強国”へ」という国家政策の下、ハイテク産業の育成が大々的に推進されてきました。その結果、生活のあらゆる領域においてデジタルテクノロジーの社会実装が遂行されることとなりました。国家戦略の後押しによってハイテク企業への投資が活発になり、結果としてテクノロジー関連の商品やサービスが、非常にお手頃な価格で生活者に届けられるようになりました。こうした社会的要因によって、中国では世界中を見渡しても類を見ないほどテクノロジーの浸透が急速に進み、生活者一人ひとりの生活に大きな影響をもたらすこととなっています。
博報堂生活綜研(上海)では、このたび、テクノロジー生活による生活者の影響を研究するために、「中日米3か国テクノロジー生活調査」を始め、生活者インタビュー調査、有識者ヒアリングなど各種の自主調査を実施しました。その結果、若年層から年配層まで、1級都市だけでなく2級都市まで、幅広い生活者の日常生活の中にテクノロジーが浸透していることが明らかになりました。そして、生活者が日常生活の中にテクノロジーを積極的に受容する一方で、生活者の意識や行動にも変化が表れ始めていることがわかりました。
それは、生活者が便利なテクノロジーの力に頼るだけでなく、テクノロジーに流されないように自分の力で生活課題に向き合おうとする新しい欲求が生まれてきていることです。わたしたちは、この生活者の変化のインサイトを、「数自力(すうじりょく)」と名付けました。
「数自力(すうじりょく)」とは、中国語でデジタルを意味する「数字」と自らの力を意味する「自力」を掛け合わせた言葉で、テクノロジー生活が生み出した、生活課題を解決するための新しい「生活の力」のことを意味しています。
生活者が「数自力(すうじりょく)」という新しい生活の力を身に付けていった結果、生活者の消費行動にも変化が見られることが分かりました。
・送り手視点の情報に頼る情報収集行動では満たされない、自分だけの“こだわり疑問”を解消しようとする「質問行動(Ask)」
・送り手視点の情報に頼る情報収集行動では分からない、自分だけの“こだわりニーズ”に合っているかを確認しようとする「お試し行動(Try)」
・提供側の都合に合わせるのではなく、テクノロジーと人間の力の融合したサービスで自分だけの“こだわり都合”に合わせようとする「わがまま行動(My way)」
これら3つの新しい消費行動を、私たちは、「ATM行動」と名付けました。そして、テクノロジー生活によって変化した生活者を捉える新しいマーケティング視点を「ATMマーケティング」としました。「ATMマーケティング」とは、「数自力(すうじりょく)」を持つ生活者の「標準化できない強いこだわり」に応えて、ATM行動を捉えながら、テクノロジーと「自分の力」の融合したサービス体系を構築することです。博報堂生活綜研(上海)では、テクノロジー生活者を捉える新たなマーケティングの視点として、これから重要になるものと考えています。
今回の「生活者“動”察」を通じて、中国のテクノロジー生活が進んでいる、ということだけでなく、中国の生活者が「数自力(すうじりょく)」という新たな生活の力を身に着けていて、もっと進んでいる、ということが分かりました。博報堂生活綜研(上海)は、これからも変化し続ける中国の生活者を洞察し、独自の視点でマーケティングの提言を行っていきます。
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