株式会社博報堂DYホールディングス(東京都港区、代表取締役社長:水島正幸)、株式会社博報堂(東京都港区、代表取締役社長:水島正幸)と株式会社博報堂DYメディアパートナーズ(東京都港区、代表取締役社長:矢嶋弘毅)の共同研究プロジェクト「コンテンツビジネスラボ」は、毎年実施している全国調査「コンテンツファン消費行動調査」の2022年版を実施し、そのデータをもとに最新の全11カテゴリ・計1000以上のコンテンツに関する、「リーチ力・支出喚起力※ランキング」を算出しました。
また、カテゴリ別調査レポートの販売を開始いたしました。
<調査結果の概要>
●コロナ禍で一時好調だったゲームアプリやパッケージ等の市場が低下。リアルイベントやレジャー、ファンクラブ市場が増加し、屋外イベントやライブ関連のリベンジ消費が目立つ
2020年はコロナ禍で、エンタテインメント・イベントの中止が相次ぎましたが、2021年以降は一部のライブイベントの解禁や、レジャー施設の限定的なオープンといった緩和が進み、今回の調査では、リアルイベント市場、レジャー市場、ファンクラブ市場の推計規模が増加しました(図1)。
一方、コロナ禍で初の緊急事態宣言が発出された2020年には家の中で楽しめるエンタテインメントとして、ゲームやマンガなどをデジタルサービス上で購入する動きが増え、前回の調査ではゲームアプリ市場や雑誌・書籍市場が伸びましたが、外出やイベント開催の制限緩和により、同市場はコロナ禍以前並みとなりました。
図1:各カテゴリの推計市場規模(前年比較)
結果として、生活者のコンテンツへの年間平均支出金額は前年比-6,548円の60,653円となっています。リアルイベント市場、レジャー市場、ファンクラブ市場が伸びていますが、それ以外の市場の減少幅より伸びは小さく、全体としては減少となりました。
2021年1年間でのコンテンツへの平均支出金額
●「推し」への応援消費と、SNSとマスメディアを横断した露出が多いアーティスト・コンテンツがランクイン
図2:2022年リーチ力・支出喚起力ランキングTOP20
2022年の「支出喚起力ランキング」では、男性アイドルの新規ランクインが目立ちました(図2)。
これらのアーティストのランクインの背景には、先述のファンクラブ市場の伸びにも代表されるような、「推し」への消費の増加がみられます。生活者が自分の「推し」に出会い、「推し」の成長・成功を目指す姿を見るために応援マインドをもって様々な消費を行う「応援消費」の拡大が、今回のランクインにつながったようです。このような応援消費においては、「推し」をリアルに感じることができ、感情移入しやすいリアルイベントの場は非常に重要視されており、上述のリアルイベント市場やファンクラブ市場の増加は、今後さらに応援消費が伸長する兆しと言えるかもしれません。
また、今年「リーチ力・支出喚起力ランキング」に新規にランクインしたアーティストやコンテンツには共通して、映画化や利用者拡大のニュースが報じられたり、出演者としてテレビ番組などで多く取り上げられたりしたという特徴がみられます。加えてSNSやYouTubeなどでも楽曲が使用されたり、ニュースが拡散されたりしたことで、より多くの人の目に触れ、ランクインにつながったと考えられます。
このようなSNS・YouTubeとマスメディアを横断した情報発信は、今後のコンテンツ市場を担う10代にも効果的です。10代(15~19歳)の平均支出金額は、全体平均よりも約3万円多い89,774円で、今後の重要なターゲットと言えます。10代のテレビ接触時間は昨年よりも低下していますが、ほとんどのコンテンツジャンルで「テレビCM」「テレビ番組」が情報源となっている割合が増加しており、10代にとってもテレビは重要なメディアであることがわかりました(参考データ①~④)。
上記の傾向から、コンテンツのヒットには、SNS・YouTubeとマスメディアを横断した露出が今後も重要になると考えられます。生活者がSNSやYouTubeをどのように使い分け、そこでどのようなコンテンツを楽しんでいるかといった特性を考慮してメディアプラニングを行うことに加え、幅広い生活者にリーチするテレビ番組で取り上げられるようなPR戦略を設計することが、アーティストやコンテンツの成長の鍵になっていくでしょう。
<参考データ>
①各年代の年間平均支出金額
コンテンツへの2021年の年間平均支出金額を年代ごとに比較すると、10代(15~19歳)が89,774円と最も多く、コンテンツ市場の重要なターゲットであることがわかります。
各年代のコンテンツへの年間平均支出金額
②1日あたりのメディア平均接触時間(10代)
コンテンツの消費が比較的多い10代の1日あたりのメディア平均接触時間を見ると、テレビのメディア接触は昨年から減少しています。また、自宅/自分のPCとスマートフォンの平均接触時間は、コロナ禍の影響で2021年は大きく伸長し、相対的に2022年は減少していますが、コロナ禍前の2020年と比較すると上昇しています。
1日あたりのメディア平均接触時間(10代)
③週1回以上利用しているインターネットサービス
スマートフォンやタブレットを含むデバイスを用いて利用しているインターネットサービスを見ると、10代は全体より特にSNSやYouTubeの利用率が高いことがわかります。
週1回以上利用しているインターネットサービス
(全体と10代の差分が大きい上位10位を掲載)
④各コンテンツジャンルのテレビCM/テレビ番組を情報源とする割合(10代)
10代のテレビの接触時間は減少していますが、一方でテレビCMやテレビ番組を各コンテンツの情報源としている割合は、昨年と比較してほとんどのジャンルで増加していることがわかりました。
このような傾向から、SNSやYouTube、マスメディアそれぞれの特性を活かしたPR戦略が、今後のコンテンツのヒットにおいてさらに重要になっていくとみられます。
各コンテンツジャンルのテレビCM/テレビ番組を情報源とする割合(10代:前年比較)
※リーチ力・支出喚起力
企業のコンテンツ活用を促進するために、コンテンツビジネスラボが開発した独自指標のこと。
・リーチ力:そのコンテンツが一年間に到達できる人数を表す指標。コンテンツの力を活かして幅広い生活者に自社商品やサービスを知らせる際に参照。この指標が高いと、キャラクタータイアップ・CM への起用・PR などの活用に向いている。
・支出喚起力:コアファンによる、年間の関連市場規模の指標。自社の商品やサービスそのものにコンテンツを組み込んだオリジナルの企画を開発し、コンテンツファンの実際の購買を目的とする際に、どのくらいの売上規模が見込めるかを推計することができる。