こんにちは。ヒット習慣メーカーズの山本です。
突然ですがみなさんは、コンビニをよく使いますか?個人的には忙しくなるとつい頼りがちなコンビニですが、日常的によく使う店舗を見ていると、ますます進化しているなと感じます。扱う商品の種類や品質が高まっていることももちろんなのですが、セルフレジが増え始め、店員との金銭のやり取り等のない、もはや無人形態に近い業態の店舗が増えているようです。
ところで、このような無人のサービスは増えているのでしょうか。Google トレンドで「無人販売」と検索してみると、ここ2年くらいの間で検索数が一気に伸びていることがわかります。
さらに詳しく調べてみると、これまでは無人の営業形態がなかった様々なサービスの領域で、セルフサービス化が進んでいることが見えてきました。
今回は、これまでセルフの業態が想像しにくかった様々な領域でセルフサービス化が進み、無人サービスを生活の中で活用する人が増えているという、「なんでもセルフ」についてご紹介したいと思います。
具体的にどのような領域でセルフサービス化が進んでいるのでしょうか。例をみていきましょう。
まずは、健康におけるセルフサービス化です。フィットネス業界では最近、コンビニジムとも呼ばれる無人のセルフサービス型のジムが話題になっています。無人であるために、人件費などのコストが抑えられることで、従来のトレーニング環境をより格安で手に入れたい人にウケているようです。またこの新形態のフィットネスジムには24時間営業の店が多いことも特徴で、セルフサービスならではの気軽さも人気の理由の一つになっているのだとか。
他にも、健康にかかわるところでは、医薬品を販売する自動販売機が新たに注目を集め、薬局のセルフサービス化の兆しともみられる動きも見られます。この自動販売機には、タッチパネルが併設されていて、画面に表示される質問に答える形で症状を入力していくと、症状に対応する医薬品が買えるという仕組みです。自分の健康は自分で守る「セルフメディケーション」の時代に、無人店舗でも医薬品を買えるこのような取り組みは今後増えてくるのかもしれません。
また、健康に近いところとして、美容もセルフサービス化してきているようです。ネットで「無人エステ」「セルフ脱毛サロン」などと検索すると、多くの店舗情報がヒットします。フェイシャルマッサージや脱毛など、イエナカでのセルフケアではなかなか手の届かない、高価な機材を使った店舗型の美容サービスでも無人化が進み、セルフサービスとして機材や場所だけを借りればあとは自分でやればいいと考える人が増えているようです。またSNSで体験談を見てみると、セルフであればエステや脱毛中の恥ずかしい自分の姿を誰にも見られる心配がないという声が多くみられ、無人ならではの気軽さが受け入れられていることが見て取れます
最後に、食のセルフサービス化です。これまでも、注文した料理の受け取りや食器の返却などを客自身が行う、いわゆる「スタッフ常駐型のセルフサービス」の飲食店はありましたが、飲食業界ではさらにセルフサービスが進化し、無人営業でサービスを提供する完全セルフサービス店も増えてきているようです。たとえば最近では、無人型のうどん店がオープンしたことが話題になっています。うどんを作るところから会計まで完全にセルフサービスのうどん店で、入店後、タッチパネルで注文を終えた後は、冷蔵庫から食材を自分で取り出して、湯切りも自分でやるという完全なセルフスタイルが注目を集めています。
また以前、僕が執筆したコラム「ソロ活の個室化(https://www.hakuhodo.co.jp/magazine/96861/)」の中で、カメラマンがおらずセルフで撮影する新業態の撮影スタジオ「セルフ写真館」の事例をご紹介したことがありますが、当時から半年以上たち、SNSのタイムラインでもセルフ写真館を使う人の投稿を日常的に見かけるようになってきました。そんなところからも、セルフサービスに対する人々の関心や評価が高まっているのではないかと感じます。
さて、これまでご紹介してきた「なんでもセルフ」ですが、なぜ今広がっているのでしょうか。
大きな背景としてまず、テクノロジーの進化があげられます。無人のオーダーシステムや決算システムが登場したことで、注文や金銭の支払いはオンラインで完結するようになりました。ロボット技術の進化も見逃せません。最近では、ロボットが料理の配膳をしてくれるレストランまで登場し始めています。技術が進化する中で、物理的に無人でサービスを提供できる環境が整いつつあることが一つの大きな要因といえそうです。
また、経済性を重視した消費意識の浸透も背景にあると思います。見通し不透明な経済で物価高も続くなか、商品やサービスはできれば安く買えることに越したことはありません。セカンドハンド市場が「中古でもいいからより安く」という消費意識によって盛り上がりを見せているのと同様に、無人のセルフサービス化についても、「自分でやってもいいからより安く」という考え方をする人に受け入れられているのではないでしょうか。
また、今回ご紹介した新しいセルフサービス形態の事例の多くが、コロナ禍の間に生まれ拡大していったことも踏まえると、人々の非接触ニーズに対する受け皿として「無人」という形態が受け入れられていることも理由として考えられそうです。
最後に、「なんでもセルフ」に関するビジネスチャンスを考えてみました。
今回は、セルフサービス化が進んでいる様々な業界の例を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。接触をなくし安さや気軽さが担保されるのは時代の流れだなと感じつつも、依然人と人のやり取りが重視されるサービス領域で、今後この流れがどう影響していくのかは気になるところです。これからますますセルフサービス化が加速するのはどんな業界なのか、引き続き、動向を注視していきたいと思います。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
2017年に博報堂入社以来、ストラテジーやブランドデザインを軸として、企業やブランドの戦略・企画立案に従事。ミレニアル世代/グローバル領域の業務経験多数。写真と音楽とすべてのユースカルチャーをこよなく愛する。