こんにちは。ヒット習慣メーカーズの中川です。
真夏の寝苦しい夜。クーラーをつけっぱなしで眠りにつき、ものすごく寒くなって思わず布団をかぶってしまう。目覚めた後になんだかもったいないことしたなあと後悔しつつも、また同じことを繰り返す日々が続いています。室内をちょうどよい温度に保つのって、なかなか難しいものがありますよね。
今回のテーマは「季節の逆転購買」です。
本来夏に買うものが冬に売れていたり、その逆の現象がおこったりと、季節感が逆転した購買行動が、最近目立つようになってきました。
例えば、「冬にアイスが売れている」というのはご存知でしょうか?
日本アイスクリーム協会によると、アイスクリーム類の2017年度の市場規模が、史上最高の5114億円に達して、5年連続で売上高を更新しています。その拡大の大きな要因のひとつは「冬アイス」なのだとか。冬アイスが活況になったことにより今やアイスは通年で売れるものになっています。先日、ヒット習慣メーカーズが行った「全国習慣実態調査」(http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/47532)の「1年以内にはじめた習慣ランキング」でも冬アイスは10位にランクインしていました。冬にアイスを食べるきっかけとして多くあがった回答は、「暖房が効きすぎて部屋の中が暑かったから」「こたつで冷たいものが合うから」「お風呂上がりに」など。外は寒い冬ではありますが、暖房やこたつなどによって逆に体が熱を帯びてしまったことがきっかけになっているようです。
また、逆に「夏におでんが売れている」ようです。
かつては、コンビニで秋から販売がはじまっていたおでんですが、ここ数年は各社8月から販売がはじまるのだとか。8月のおでんの売り上げも好調だという。理由としては、冬アイスの逆で、室内の冷房が寒くて体が冷えてしまったり、かき氷やアイスコーヒーなど冷たいものを飲み食いしすぎて飽きてしまったから、おでんを食べて体を温めたいとのこと。似たような現象として、冷え性に悩む女性が夏にカイロを買うケースも増えているのだとか。
ではなぜ、「季節の逆転購買」が、最近になって注目されてきているのでしょうか。そのヒントを得るべく、「冬アイス」についてもう少し分析を進めたいと思います。まず、「冬アイス」の検索数の推移を見てみました。すると、2015年12月に大きく伸ばしていることがわかります。「マツコの知らない世界」というテレビ番組で「冬アイスの世界」として特集されたことがきっかけとなったようです。それ以前も、冬になると「冬アイス」の検索のスパイクが見られることから、生活者の中にあった潜在的な欲求が、様々なテレビ番組がきっかけで一気に開放されたことが予想されます。
「冬アイス」検索推移
先ほどご紹介した「全国習慣実態調査」で「冬アイス」を食べることの良さ・メリットを自由回答で聞いているのですが、それをテキストマイニングしたものが以下の表となります。
左の列の「名詞」ランキングのトップに「ストレス発散」とあり、更に下を見ると「リラックス」「気分転換」「疲れ」「褒美」などが見られます。そこから推察するに、冬にアイスを食べるということ自体が、非日常的でギャップのある行為であり、それが仕事や家事などで溜まった疲れを癒してくれる役割になっているのでしょう。また、「家族」「部屋」「子供」「会話」なども見られることから、寒い冬なので自宅にいる時間も長い中で、家族と楽しい時間を過ごすためのアイテムになっていることも想像されます。
夏から冬、冬から夏の「季節の逆転」は、自宅における「気分の転換」としての新たな可能性を秘めているかもしれません。
このように「季節の逆転購買」は今後ますます拡がっていくことが考えられ、様々なビジネスチャンスがあるのではないでしょうか。
夏と言えば、そうめんが大好きな私ですが、今までほぼ夏しか食べていませんでした。これからは、冬に暖かい部屋の中で、少しだけ冬っぽいトッピングで、ひんやりそうめんを食べてみようと思います。みなさんも、季節の逆転を試してみてください。
メーカーの商品開発職を経て、2008年に博報堂中途入社。
マーケティング職として、日々お得意先や社会の課題に向き合っている。飲みながらいろんな業界の人と話をするのが好きだが、気づくとお酒に飲まれている。好きな落語家は五街道雲助師匠。