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ヒット習慣予報 vol.148『テンプレライフ』

2020.12.01
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの永井です。

僕は、今年度からヒット習慣メーカーズに参画し、本稿がコラム初担当となります。個人的な話になりますが、今年度より北海道から東京に出向してきた入社3年目マーケターになるので、従来のメンバーにはいない異色経歴の新顔として、習慣予報もご紹介していければと思います。

さて、今回ご紹介するテーマは「テンプレライフ」です。
テンプレート(定型化)とライフを掛け合わせた造語でいわゆるライフハックの一種になりますが、時短や効率を追求して生活仕様をテンプレート化している人が、ここ最近増えてきているという話です。ライフハックという言葉も一般化し、書店やYouTubeなどでもよく見かけるようになってきましたが、実際、Twitterの投稿数の傾向を見ても、ここ最近で注目度が高まってきているテーマであることがわかります。

出典:Insight Intelligence

僕自身、いつも同じような衣服で過ごし、同じような食事をしているのですが、聞くところによると身の回りにも同様な暮らしぶりの人が多いことに気づき、今回どのようなテンプレライフを実践しているのか、ご紹介したいと思います。

まずは、衣服のテンプレート化です。
2018年掲載のコラム「ビジネスミニマリスト」でもご紹介した通り、スティーブ・ジョブズが実践していたことで有名ではありますが、この流れがビジネスの領域を超えて、プライベートまで波及しているということです。「ノームコア(究極の普通)」という言葉で代表されるように、以前から街に出かけると白Tシャツと黒パンツの格好をよく見かけましたが、その絶対数がここ最近多くなっている気がします。僕の周りにも、出社時は黒か紺のジャケットにパンツ、パンプスというかっちりスタイルに対して、プライベートではお洒落な格好をしていた友人が、突如として似たような服装しか着なくなったので、話を聞いたところ、「コロナ以降、対面で取引先と会う回数はほぼなくなったので、控えめ色なカーディガンで出勤し、プライベートで出かける格好と同じにした」とのこと。コロナ禍で公私の境界線が曖昧になり、リアルでの対面の機会が少なくなったことで、汎用性のある服が選ばれるようになり、テンプレート化の流れに拍車をかけているようです。

次にご紹介したいのは、食のテンプレート化です。
こちらも僕自身が実践しているのですが、朝食と昼食はほぼ毎日同じものを食しているということです。もちろん同じものを食べ続ける理由としては、衣服同様に選択する時間がなくなり楽であるからなのですが、同じく食においても実践している友人に話を伺うと、「なんとなく楽っていう入りから、自分の中の定番化=心地いいになった。ルーティン化することで、自分の中の調子をそれで整えている」とのこと。衣服だけでなく食に関してもテンプレート化し、自分なりの生活リズムを保つ、ひとつの基準になっているようです。

最後に、ご紹介したいのがコミュニケーションのテンプレート化です。
今回の執筆にあたり、他にも暮らしの中でテンプレート化している人をSNSで探してみたところ、自身のスマートフォンの予測変換にあらゆる定型文を設定している方を見つけました。使用シーンとして、フリマアプリで売買するときの質問対応の文言、例えば「近日中に発送いたしますので今しばらくお待ちください」「神経質な方はご遠慮ください」といった言葉を設定していました。SNSやフリマアプリなどが一般化し、個人が不特定多数の人とのやり取りをする機会が急激に増えた中で、コミュニケーションすらもテンプレート化しようとする傾向が強まってきているようです。たしかに金銭や商品の授受がある場合はトラブルになりやすいので、できるだけ当たり障りのない言葉でコミュニケーションを取りたいものです。

また似たような事例で興味深かったのは、マッチングアプリでのメッセージでのやり取りも、オリジナリティのあるキラーワードを用いながらテンプレート化している人が見受けられました。自身のパートナーを見つける上で、マッチングアプリは非常に効率のいいものだと僕自身も思いますが、まさかメッセージまで効率を求めてテンプレート化しているとは…。たしかに改めて考えてみると、今やレッドオーシャンの市場において、最初のメッセージの段階で他者と差別化しなければ、機会ロスしてバッターボックスにすら立てないよなと、妙に納得してしまいました。

さて、いくつかのテンプレライフの事例をご紹介してきましたが、なぜ今この傾向が強まってきているのでしょうか。

ひとつは、コロナ禍で生活者自身に必要なものがより明確化されたからではないでしょうか。勤務形態や活動時間が複雑化・曖昧化することで、家事や仕事、育児などのタスクが、同時多発的に発生し、あらゆることに優先順位をつけなければいけなくなってしまいました。
もうひとつは、自分と向き合う時間が増え、改めて自身の生活習慣を見つめ直す中で、いかに労力と時間を最小化し、居心地の良さを確立していくか、その対処法を生活者自ら模索しはじめているからではないでしょうか。そして、その領域はビジネスシーンからプライベート、衣食からコミュニケーションまで拡がり続けてきているのだと思います。

最後に、「テンプレライフ」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。

◎「テンプレライフ」のビジネスチャンスの例
■タスクを管理し、効率のよいライフハックをレコメンドしてくれるアプリの開発
■個人の嗜好やこだわりに合わせたテンプレート術を提案するライフスタイルコンサルティング
■個人のしゃべり方や口癖を反映し、オンライン上のコミュニケーションを代替してくれるbotの開発

僕自身、今現在テレワークが続き、日増しに活動時間や基準が曖昧化してきているので、さらなるテンプレート化を模索し続け、都度アップデートを繰り返しながら、日々の業務に邁進していきたいと思います。

永井大地(ながい・だいち)
統合プラニング局 / 北海道博報堂
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2018年北海道博報堂に入社し、2020年博報堂統合プラニング局に出向。
入社以来、マーケティング職に従事。アンダーグランドからメインストリームまで、新たな生活者インサイトを発掘すべく、日夜どこかの街を徘徊している。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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